百人一首
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百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり
人もをし人もうらめしあぢきなく世を思う故にもの思う身は
来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ
花の色は移りにけりな徒に我が身世にふるながめせしまに
大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天の橋立
朝ぼらけ宇治の川霧絶えだえにあらはれ渡る瀬々の網代木
瀧の音はたえて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞えけれ
あらざらむ此の世のほかの思い出に今一たびの逢うこともがな
足引きの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ
嘆きつつ獨りぬる夜の明くるまはいかに久しきものとかは知る
ながらへばまた此の頃やしのばれむ憂しと見し世ぞ今は戀しき
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし
忘らるる身をば思わず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな
逢ひみての後の心にくらぶれば昔はものを思わざりけり
わが庵は都のたつみしかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり
これや此の行くも帰るも別かれては知るも知らぬも逢坂の関
古への奈良の都の八重ざくら今日九重に匂ひぬるかな
君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ
心にもあらで憂世にながらへば戀しかるべき夜半の月かな
嘆けとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな
忍ぶれど色に出にけり我が戀はものや思ふと人の問うまで
戀すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか
玉の緒よたえなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
廻り逢ひて見しやそれともわかぬまに雲がくれにし夜半の月かな
夜をこめて鳥のそら音ははかるとも世に逢坂の関はゆるさじ
今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな
世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞなくなる