逢ひみての後の心にくらぶれば昔はものを思わざりけり
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右近の元カレ。「ぼくらずっと一緒だよね❤️」と神に誓ったくせに、その後、右近のことはすっかり忘れたプレイボーイである。右近の告発のおかげで読む前から、こいつはクソオスだという偏見の目で見ているのだが、では、その歌はどういったものかというと、これがまた、360度まごうことなきプレイボーイっぷりである。 「逢ひみての後の心」とあるが「逢う」とは要するに「一夜を共にする」だから、つまり「ヤった後の心は」って話である。毎回毎回新鮮に感動するのだが、百人一首。ハイブロウな和歌の世界のはずなのに、一発目から「セックスの」「セックスして」と来るのだよな。31文字しかないから最初から言いたいことズバッ!と言うのだけれど、それと多様な解釈を許す意味の拡散がエグい。
要するに「エッチしてからますます好きになっちゃったよ」。これはいわゆる「後朝の歌」(きぬぎぬのうた)だろうから、エッチしてホテル出た後にそういうLINEを相手に送っている感じだろう。よく「男はヤった後で態度が変わる」なんてことを言うが、それで行くと事後のケアでますます恋愛を盛り上げるのが敦忠だ。 ただ「エッチしたらますます好きになっちゃった」までならまあ普通だが、敦忠は「昔はものを思はざりけり」(比べちゃったら昔のはあんなのは物思いでもなんでもなかったな)とまで言い切ってしまう。そのすがすがしい全否定がクールで、いかにもモテていたのだという感じ。逢ったあとにこんな歌を送られたら送られたほうも嬉しいのかもしれない。
とまあ、歌の「意味」としてはそんなところなのだが、問題はこの歌がどう機能するかである。名うてのプレイボーイが言うわけだ。「寝てみた後と比べたら、寝る前なんてあんなの物思いでもなんでもないよ!」。相手のいる「プレイ後の個人的なLINEメッセージ」としてなら「ふふふ」と相手が喜んでそれで終いだけど、こんな歌を詠んだ人だと漏れ伝わったら。あなたが敦忠のことが好きだったら......。早く夜を共にしたい。そう思わせる歌として機能してしまうのではないか。