映画でわかるアメリカ文化入門
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映画作品からアメリカ文化・社会のさまざまな側面や問題点について学べる一冊。階級、人種といった15の問題意識によって30の題材を選択。専門用語も避け、一般から専門の読者まで幅広く読める文化入門参考書。
【目次】
アメリカ文化を知るための15のトピック
階級/階層・健康・国民性・ジェンダー/セクシュアリティ・司法制度・銃社会・食文化・宗教・戦争・地域性・テレビ・犯罪・ヒーロー・ファッション・民族/人種
アメリカ文化を知るための30の映画
・『白雪姫』(1937)
・『オズの魔法使』(1939)
・『風と共に去りぬ』(1939)
・『麗しのサブリナ』(1953)
・『ゴッドファーザー』(1972, 1974, 1990)
・『スター・ウォーズ』(1977-1983, 1999-2005)
・『グッドモーニング・ベトナム』(1987)
・『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)
・『JFK』(1991)
・『マルコムX』(1992)
・『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(1993)
・『フィラデルフィア』(1993)
・『ER 緊急救命室』(1994-)
・『デッドマン・ウォーキング』(1995)
・『クルーシブル』(1996)
・『アメリカン・ヒストリーX』(1998)
・『セックス・アンド・ザ・シティ』(1998-2004)
・『マトリックス』(1999, 2003)
・『エリン・ブロコビッチ』(2000)
・『アイ・アム・サム』(2001)
・『キューティ・ブロンド』(2001, 2003)
・『チョコレート』(2001)
・『パール・ハーバー』(2001)
・『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)
・『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)
・『スパイダーマン』(2002, 2004)
・『モンスター』(2003)
・『アビエイター』(2004)
・『スーパーサイズ・ミー』(2004)
・『レイ』(2004)
アメリカ文化年表
あとがき
________________________
階級・階層
旧ヨーロッパ的な貴族制、いわゆる「階級」のないアメリカ
相対的には平等(ただし、絶対的には不平等も残っている)
「階層」のようなものの存在
移民社会であるアメリカにおいての「到着順」
white collar, blue collarといった「ワーキング・クラス」
classというよりは、stratumである
アメリカン・ドリーム
「階級」ではなく「階層」、その心は、個人次第ではその立ち位置が移動可能であるということ
セルフメイドマンの伝統
自分の努力を賛美する社会であるために、公助(福祉など)が十分でないという側面もある
アメリカにおける「上流階級」
WASP
プロテスタント系、初期の入植者
影響力はそれほど大きくないが、未だに影響力そのものは存在している
オールド・マネー
グレート・ギャツビーなどに出てくる時代を彷彿とさせる
黄金時代の遺産をついだ金持ち
ニュー・マネー
ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツなどの”成金”
民族の出自などが関係ない
健康
アメリカ人は健康にお金をかける傾向にある(収入に対する割合は13パーセント:当時)
ただし、世界一の肥満大国である
ダイエットにはお金をかけるが、60%以上のアメリカ人は全く運動をしない
国土の大きさのせいか、車を使う人が多いのも原因のひとつ
国民性
移民たちによってつくりあげられた「人工国家」である
国民をひとつにまとめあげるための装置としての星条旗
自由、民主主義、団結と独立心のシンボル
開拓者精神(フロンティア・スピリット)
助け合い
ボランティアの発展の理由の一つでもある
厳しい自然や、多民族社会を生き抜く知恵
自立
人生の困難に立ち向かう
公共のためにつくす「英雄的行為」への賞賛
危機的状況において自分のみを投げうっても人の命を救うことが高い評価
「消防士」などの職業はそういった意味でヒーローとして扱われている
ハリウッド映画におけるヒーロー
公共のために尽くす勇気ある一般人など
愛国主義、アメリカ第一主義?
9.11テロ等を経て、アメリカ人の意識に変化が出てきているのではないか(奥村みさによる)
ディズニーランドで星条旗グッズが売れていること
トリノ・オリンピックで団体戦参加を辞退した選手への「非愛国的行為だ」という批判
ジェンダー・セクシュアリティ
男らしい「ヒーロー」像の変遷
マッチョなヒーロー
カーチェイスや銃撃戦を売りにしたアクション映画に登場するスターたち
『ターミネーター』、『ランボー』など
クリーンなヒーロー
肉体労働の減少と知的労働の増加、女性の相対的な経済力の上昇
理想の男性像はクリーンで思いやりのあるタイプが増えてきた
トム・クルーズ、レオナルドディカプリオ、ブラッドピッドなど
metrosexual
異性愛者で都会的な男性だが、オシャレで身だしなみがよく、感情表現がゆたか。家庭生活にも積極的にコミットする
女性像の社会的地位の向上
1920年、女性が参政権を得る
大学卒業者数も女性が多い
社会生活における女性の力の向上
エリン・ブロコビッチやバフィーなどの、他人に頼らないヒロインの登場
「ヒロイン」像の変遷
メグ・ライアンやマリリン・モンローのようなスターから、冒険好きでスポーティなアンジェリーナ・ジョリー、ハル・ベリーなども人気を得るようになった
職場ではまだ平等でない
男性の5分の4程度の給与
結婚に対する伝統的価値観
キリスト教信仰の影響もあり
結婚への圧力は強く、結婚率が高い
多くの子供を持つ傾向
ただし主婦像の変遷もあり
『デスパレートな妻たち』など
同性愛
長らく犯罪とされてきた
聖書解釈や伝統による
最近ではオープンに受け入れられてきている
イリノイ州がはじめて同性愛を非犯罪化
マサチューセッツ州が同性結婚を合法化
司法制度
連邦政府と州
連邦政府
通貨発行権、外交権、交戦権、郵便制度などの州をまたぐ社会活動や外国とのやりとり
州
立法権・司法権・行政権をもち、州の憲法も存在
法律
州によって異なる場合がある
訴訟件数の多さ
多様な価値観や「常識」が存在するため、日本であれば些細な問題とされることでも正式な判断は法廷の場にゆだねるという傾向が強い
訴訟件数に比例して弁護士の数も多く、テレビドラマでもよく扱われている
陪審員制度
民主主義の考え方による
民族構成や政治・宗教的信条、価値観などが裁判の行方を大きく左右する場合も多い(ゴースト・オブ・ミシシッピーなど)
十二人の怒れる男などが陪審員制度に関する古典的映画である
『アラバマ物語』
アメリカでの超有名映画
法を遵守し、正義を貫こうとした態度が「アメリカン・ヒーロー」としてふさわしいのか、アメリカ映画のヒーローと悪役ベスト100の第1位に選ばれた
理想の弁護士の姿でもある
最近では、アンビュランス・チェイサーなどの悪徳弁護士がおおいため
銃社会
独立戦争時の民兵制度、合衆国設立時の政府や国家権力から不当な仕打ちを受けないための手段としての武装
正義の代名詞としての銃
『ダーティ・ハリー』など
もちろん反対派も多い
ただし、小型兵器の輸入出規制に先頭に立って猛反対したのはアメリカであるという事実があり、未だに銃規制反対派の人びとは多い
食文化
日本では「アメリカ料理」レストランがない?
アメリカ料理=ジャンクフードというイメージ
アメリカの伝統的食文化
テラピン
クレオール・トライブ
ミズーリ・ブーン・カウンティー・ハム など
感謝祭の食事(『ハンナとその姉妹』などで見ることができる)
宗教
キリスト教徒が人口の約8割
2001年のギャラップ世論調査によると、宗教が重要/非常に重要と回答した人は86%
硬貨・貨幣の”In God We Trust”、"God Bless America"という愛唱歌
「市民宗教」
ロバート・ベラーが提唱
キリスト教信仰を基盤とした共通の信仰
星条旗の重視など
アメリカでの「政教分離」
教会と国家の分離であって、政治と宗教の分離ではない
特定の教派の聖職者が大統領になることはNGだが、大統領が宗教的であることはむしろ歓迎されている
国の原点としての建国父祖
ピューリタンの人々
国の原点に、キリスト教が存在している
「バイブル・ベルト」
アメリカでも特にキリスト教原理主義の信仰に篤い地域(南部諸州)
宗教右派を自認する人は18%(2001年)
アメリカでなぜ、人工中絶問題がああも話題になるのか?
プロテスタントとカトリックの伝統的な思想に、生命を人間が操作することは神に対する冒涜だというものがある
バース・コントロール、安楽死、ES細胞研究推進法案(ブッシュが拒否権発動)などもこの流れで反対されている
戦争
アメリカ自体が、戦争から生まれた国(独立戦争)
元来孤立主義を保っていたアメリカだが、世界一の超大国となってからは朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東での対イラク戦などさまざまなところで軍事介入している
地域性
スヌーピーとウィンタースポーツ
ミネソタ州出身の作家、中西部人としてスケートをカリフォルニアでも続けていた
スポーツと地域
アメリカ南部ではアメフト、東海岸の都市部ではバスケットボール、カリフォルニアではビーチバレー、ヨガ、サーフィンなどが盛ん
東部のミドルクラス以上の子どもたちはサッカーを楽しむことが多い
大国アメリカと移民
開拓時、同じ出身地の人たちがかたまり共同体を形成
伝統文化をアメリカ各地に持ち込み、アメリカの風土と影響し合って独自の文化が育つ
気質と食べ物
ニューイングランド地方
保守的、食文化も質素
ロブスター、クラムチャウダーなど
ドイツ系移民によるホットドッグ、ハンバーガー、ドーナツ
アメリカ中西部
「アメリカの穀倉庫」とよばれる
おおらかで優しい
ミシシッピー川河口
クレオールと呼ばれる独自の文化
アメリカ南部
ジャズの発祥の地
ガンボ・スープ、ジャンバラヤなどスパイシーな料理
アメリカ西部
大平原、カウボーイ
tall taleと呼ばれる冒険話、ほら話
BBQなどのアウトドア料理が人気
テキサスではタコスや地理といったメキシコ料理の影響が強く、ヒスパニック人口もおおい
カリフォルニア
ゴールド・ラッシュから現在まで、様々な可能性を秘めた土地として憧れ
The Golden Stateと呼ばれる
『大いなる西部』などではカリカチュア化された西部人と東部人の違いがみられる
テレビ
第二次世界大戦後~テレビの普及
1954年には、アメリカの過半数の家庭にテレビがあった
1960年、ジョン・F・ケネディとニクソンがテレビ公開討論
候補者の見た目によっても票を投じるようになった
同年、ベトナム戦争は初めてテレビ中継された戦争
軍事介入への反対運動の原動力になった
1969年
ニール・アームストロングの月面着陸
2001年時点
99%の家庭にテレビがあり、平均的なアメリカの過程では毎日7時間40分テレビを見ている
1950年代には家族の団らんの場としての機能があったテレビだが、最近では自分の部屋でみる子どもたちが多いので、影響への懸念が高まってきている
学力低下や家庭学習の減少
スポーツの商業化にもつながり
リアリティ・ショーなどの新たなタイプの番組
『クィア・アイ』、『ジェリー・スプリンガー・ショー』など
「君も人生を変えることができる」(アメリカンドリーム)、テレビで有名人になれるというメッセージ
犯罪
1993年以来、凶悪犯罪、財産犯罪、銃犯罪は減少
麻薬犯罪は上昇傾向
ティーンエイジャー・ヤング・アダルトと犯罪
殺人事件の加害者にも被害者にもなりやすい
ギャング犯罪も、犠牲者の25%は18歳未満の少年(2001年当時)
憎悪犯罪
民族・人種・性的志向などの異なる人々に対する敵意から起こる犯罪
刑務所の収容人口増加
新たな犯罪としてのテロ
1995年4月19日、オクラホマ州ミューラー連邦ビルでの爆破事件
元民兵だった人がテロを起こした
2001年9月11日、世界貿易センタービルの破壊
イスラム教過激派が犯行声明
アメリカ人の法廷ドラマ好き
保守的でキリスト教的な国民感情
個人の自由を支援するが、また勧善懲悪を強く信じる
ヒーロー
アメリカは「ヒーロー」を崇める国
アクションスターやスポーツ選手が国民の象徴となりうる
ジョー・ディマジオ(野球選手)などは国民的英雄で、ヘミングウェイやサイモン&ガーファンクル、ビリー・ジョエルなどが題材に取った
ロナルド・レーガンも元映画俳優
亀井俊介(ディクソン・ウェクターを参考)によるアメリカ人のヒーロー崇拝への見解:『アメリカン・ヒーローの系譜』
(1)帰属意識を求める…ほとんどの国民が移民またはその出身であるため、帰属意識をあたえ、不安定感を払しょくしてくれるものを好む(ウェクター)。アメリカ人の国旗・国家崇拝と本質的に同じ
(2)神話を求める…先住民以外は近世以降の歴史しか持たないので、歴史を超克できるような神話的なヒーローの伝説を求める(亀井)
ロール・モデル性
アメリカンドリームの体現者
神話的な奥行きを見せる超人
アメリカンヒーローのタイプ
立身出世した人物
リンカン、ロックフェラー、カーネギー、マドンナなど
開拓者
デーヴィークロケットやダニエルブーン、エジソンなど
義賊
西部劇や刑事ドラマに出てくるような「タフ・ガイ」で正義の味方
ビリー・ザ・キッドなど
信念の人
キング牧師、ローザパークス、婦人参政権運動を推進したエリザベス・キャディ・スタントン、レイチェル・カーソンなど
超人
誇張やほら話を好む国民性
アメリカ俳優は巨漢でマッチョな人が人気
ジョン・ウェインやシュワルツェネッガーなど
ファッション
ライフスタイル。自己表現
階級、身分、職業、年齢、性的志向、文化や集団を表す、服
アメリカ人はカジュアルな服装を好む傾向
dress-down Friday
オフィスにカジュアルな服装で出勤
デニムジーンズを発明
リーバイスが最初にアメリカ式のジーンズを製造
1950年代にはスターたちが銀幕の中で着こなし、ティーンエイジャーがTシャツ、革ジャンとともに制服のように着るアイテムとなった
GAP、LLビーンなど
ファッションスタイル
preppy
ニューイングランドのprep schoolや、ハーバード、イェールなどでポピュラーになったスタイル
社会的なステータスの高さや、お金持ちであることを象徴
西海岸
ハリウッドのスタイル
ビーチライフの要素
ニューヨークのスタイル
スマート
power dressing
ラルフローレン、ダナキャランなど
グランジ
ニルヴァーナなど
ネルシャツに古着のジーンズといったジェネレーションXのファッション
ヒップホップ系のファッション
トミーヒルフィガー
ヒップホップのミュージシャンを起用
ミュージシャン自身が服装をデザイン
映画の影響
サブリナパンツ
SATCのマノロブラニク など
政治的なメッセージ
ブッシュ大統領
カウボーイハット
ビルゲイツ
野球帽、ジーンズ
彼らは、上下関係を表さず民主的に仕事をするという態度を服装で示している
民族・人種
1607年にジェームズタウン恒久的植民地を建設
1620年にメイフラワー号の移民(巡礼父祖)
子孫がアメリカの特権階級を形成
17世紀後半
スカンジナビアやドイツからの移民
アメリカ中西部で農業に十字
19世紀半ば
アイルランド人の移民
19世紀後半~20世紀初め
イタリア系の大移民団
20世紀
東欧系、アジア系
基本的に入植順に社会階層を形成
ユダヤ系、東アジア移民は例外的に上層部に食い込む
ユダヤ系の影響
政治・経済やハリウッド映画含むメディアの中枢にはユダヤ系が多い
ユダヤ民族の大移動
1880~1914年にロシア・東欧から迫害を逃れてきたユダヤ貧困層の移住
ナチスドイツから逃れての亡命
科学者・知識人
東部主要都市に集中
Jew York
日系人の移民たち
1869年にアメリカ本土への大量移住が始まる
1924年の新移民法
1942年には敵性外国人として強制収容所に送られた
3分の2はアメリカ生まれ
日系2世が従軍し、ヨーロッパの激戦地で最も多くの死者・負傷者を出した舞台となった
1988年、レーガン大統領は強制収容保障法に署名
現在の日系人たち
ハワイ、カリフォルニアに集中
上昇志向が強く、模範的マイノリティとされている
先住民、黒人
強制的に移住させられ、社会階層の底辺にとどめおかれた
先住民
居留地などに生活地域が限定されている
黒人
憎悪犯罪に巻き込まれるケースが多い
流動的な社会階層
個々人レベルでは階層移動や地域移動、民族枠からの移動が容易になってきた
黒人女性として初の国務長官であるコンドリーザ・ライス
民族集団全体として見ると、いまだ完全に平等ではない
マイノリティの運動
1960年代には公民権運動が高揚
メルティングポットかサラダボウルか?
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