カルヴィーノはどれから読めばいいのか
短い答え : どれでもいい。
でもそれではあんまりなので、少しは手引になりそうなことを書いておこう。
カルヴィーノ作品はざっくりと何グループかに分けられると思っている。
a. 現代(20世紀以降)を舞台にした、主にリアリズムの手法を用いた作品(主に活動の初期から中期)
パルチザン時代の影響も色濃い『くもの巣の小道』、『最後に鴉がやってくる』
自由な視点をもとめて、日常からのふとした逸脱を扱った『魔法の庭・空を見上げる部族』、『むずかしい愛』、『マルコヴァルドさんの四季』、『パロマー』、(「アルゼンチン蟻」、「氷河期」)
とりわけ現代社会の「重さ」を強調した、『遠ざかる家』、『ある投票立会人の一日』、『スモッグの雲』
b. 歴史を題材にとったファンタスティックな作品(中期)
〈われらの祖先〉三部作(=『まっぷたつの子爵』、『木のぼり男爵』、『不在の騎士』)
c. 実験的、非リアリズム的な手法を中心的に用いた作品(後期)
〈レ・コスミコミケ〉シリーズ(=『レ・コスミコミケ』、『柔かい月』、「磁気嵐」、「月の娘たち」)
『見えない都市』、『宿命の交わる城』、『冬の夜ひとりの旅人が』
d. その他の作品
エッセイ:『砂のコレクション』
評論:『水に流して カルヴィーノ文学・社会評論集』、『なぜ古典を読むのか』
自伝的作品集:『サン・ジョヴァンニの道 書かれなかった[自伝]』
講義の草稿:『アメリカ講義 新たな千年紀のための六つのメモ』
デビュー前の掌編 : 「黒い羊」
小説であれば、どれでもいいからまず気になった1冊を読んでみて、それが気に入れば同じカテゴリ(a~c)のものを、ピンとこなければ別のカテゴリのものを読む、というのがひとつの手だろう。
三部作とかシリーズという括りで紹介しているものもあるが、個々の作品どうしは展開の上でまったくつながっておらず、連続性を考慮に入れる必要はない。
電書派は #Kindleで読めるカルヴィーノ から選ぶのもいいかも。先に挙げたジャンルで言えば、cのものが多い。