氷河期
書誌情報
河島英昭訳、『書き下ろし 酒の本棚』(サントリー、1976年)所収 発表年 : 1975年
古本でのみ流通
内容
サントリー社のウイスキーづくり五〇周年を記念した企画である「書き下ろし 酒の本棚」という新聞広告シリーズの中の一作で、のちに同名の作品集として書籍化されている。その執筆陣たるや錚々たるもので、ロブ=グリエにアップダイク、国内では星新一や開高健などなど、有名作家のオンパレードといった趣がある。
妻エステルによるペンギン・ブックス版 Numbers in the Dark 前書きいわく、「氷河期」のこの日本語訳は、イタリア語での発表に先んじて公開されたということだ(邦訳の新聞掲載が1975年、オリジナルの発表が1976年)。 謎めいた女性のためにオン・ザ・ロックを作ろうとしてドタバタを演じる男の中で、来るべき/過ぎ去りし氷河期の幻影が交錯するという、アンナ・カヴァン『氷』を彷彿とさせる氷描写を含みながらも力の抜けた掌編。類似作品を強いて挙げるとすれば、『むずかしい愛』の系譜ということになるだろうか。