木のぼり男爵
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書誌情報
白水社、1990年
白水社〈世界の文学〉、1978年
白水社〈新しい世界の文学〉、1964年
原題 : Il Barone Rampante
発表年 : 1957年
内容
子供時代のある日家を飛び出して、一生を木の上ですごした男爵の物語。
木々を伝ってスペインにまで行ってしまう。地上とは別のレイヤーが男爵にはあるのだ。
一方で地上ではフランス革命が起こり、物語の終盤ではナポレオンが男爵を訪れる。政治と思想の大変革の時代にあって、あくまで樹上から全てを見届けようとする男爵の姿。
「木のぼり主義」なんていう思想はない。男爵もただいろいろな事情と経緯が重なりあって、木の上から降りないままでいるだけだ。けれど彼の元を訪れる人々は勝手に感心して帰ってゆく。その滑稽さ。
語り手は弟で、視点としての制約は薄い。
木の上で暮らすことの悲しさと正しさを描いた傑作。完成度だけならこれが一番だと思う。
個人的には悲愛のパートがエモすぎて泣いてしまう。