黒い羊
https://gyazo.com/1b57b0afc18758954314187572a79fb9
書誌情報
柴田元幸訳、『MONKEY』Vol.9(スイッチパブリッシング、2016年)所収
内容
1944年(第二次世界大戦下、デビュー前)に書かれた掌編。
全員が盗人であり、互いに盗み合うことで平衡状態を保っていたユートピアが、ひとりの盗みを行わない正直者(黒い羊=少数の例外)の登場によって変質してゆくさまを描いた作品。
ごくシンプルな小説ではあるが、「全員が盗人」という設定のひねりに作家性の萌芽を感じる。
泥棒はデビュー後もカルヴィーノにとって重要なモチーフでありつづけたほか、『イタリア民話集』にも印象深い形で登場する。寓話的構造を備えた本作も、あるいは民話の影響下に書かれたものなのかもしれない。 科学者一家に育ちながら例外的に作家になった自身のことを、カルヴィーノは「黒い羊」と表現したそうだが、これは本作とはどうも関係がないような。まあ慣用表現らしいので。