砂のコレクション
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書誌情報
原題 : Collezione di sabbia
発表年 : 1984年
目次
1、時の形 ――日本――
紫の着物の老婦人
栄華の裏に
木造の寺院
千の庭
月を追いかける月
刀と木の葉
孤独なパチンコ
エロスと不連続性
九九本目の木
2、展覧・探検
砂のコレクション
新世界はどんなふうに新しかったか
地図の旅人
蝋人形博物館
竜の遺産
アルファベット以前
三面記事の驚異
絵の中の物語
結び目は語る
絵を描く作家たち
3、視線の範囲
砦の中の蜻蛉
豚と考古学者
トライアヌス記念柱は語る
文字の都市 ――碑文と落書き――
計画された都市 ――空間の尺度――
物の救済
目の中の光
4、空想の決算報告
三人の時計師と三つのロボットの冒険
妖精の地誌
架空の島々
精神状態の切手
幻視者の百科全書
内容
「1、時の形 ――日本――」は日本滞在記。カルヴィーノの眼にこの国がどのように映ったのかを知るのには俗っぽい楽しみがある。
例えば「孤独なパチンコ」の中で彼は、どうも「かに道楽」であると思しき※店舗の外観をこんなふうに形容している。
蟹を食わせるレストランはまるでポップアートのとてつもない作品かと見紛うような看板を掲げている。建物の正面をいっぱいに占めたばかでかい蟹が脚や爪の関節をことごとくぎくしゃくと動かし、とび出た目玉をリズミカルにぎょろつかせている。
※開業年的には一致するけど確証はぜんぜんないです。あしからず……。
後にカルヴィーノの作品を訳すことになる和田忠彦がこのとき京都と奈良を案内しており、カルヴィーノは彼とのやりとりについても書き残している。和田忠彦によるエッセイ『ヴェネツィア 水の夢』所収の「十七音の沈黙」では、同じエピソードについて和田の視点からの回想がなされていて面白い。 「2、展覧・探検」「3、視線の範囲」「4、空想の決算報告」は展覧会や書籍からの随想をつづった文章。
そのまま『パロマー』に組み込めそうな切れ味のいい着想も含まれているものの、カルヴィーノのふらふらした連想を、小説化のフィルターを通さずにそのまま読むような体験なので、ついていくのがしんどいところも多かった。