ヒューリスティック
頭を悩ませず、楽に結論を導ける認知経済的な思考。
大抵のことに十分優れた回答をだせる。
ところが特定の場合、再現性高く間違うケースがあり、注意が必要。
感情ヒューリスティック
難しい質問をされたら、実は好き嫌いで反応する
例:
私は史上最強のチェス・プレーヤーと言われたガルリ・カスパロフに、次の一手をどう決めるのか説明してほしいと質問したことがある。するとカスパロフは、これまで見てきたパターンをベースに「一瞬のうちに、打ち手やコンビネーション(一連の駒の動き)が見える」と言った。カスパロフによると、グランドマスターは、思考の最初の数秒で心に浮かんできた手を打っているはずだという。
クラインは消防隊の指揮官の意思決定について研究し、数秒のうちに直感的に決定する場合が、全体の80パーセントだと推測している。何年も消防活動をしてきた経験から、指揮官は繰り返し起こる炎の動きのパターンや、建物が崩壊間際にある時の状況に気づく。クラインは非戦時下の海軍の指揮官も観察した。彼らが大惨事を回避しようとする時、たとえば民間機を敵機と間違えて撃ち落としそうになった場合などに、指揮官は非常に早く危険の可能性に気づくという。95パーセントの確率で、指揮官はよく見られるパターンを認識し、心に最初に浮かんだ対応策をとる。
一方、クラインの同僚の心理学者、ダニエル・カーネマンは、人間の意思決定を「ヒューリスティックス[経験や勘による判断]とバイアス」の観点から研究した。すると、カーネマンは、クラインとは全く異なる発見をした。カーネマンが訓練を積んだエキスパートを詳しく調べると、経験は全く助けになっていなかった。それどころか、経験は自信を高めはするものの、スキルを高めることはなかった。