科学パラダイム
科学の目
フリンの言葉で言うと、私たちは「科学のメガネ」で世界を見ている。つまり、直接の経験に頼るのではなく、分類の仕組みを通じて現実を理解し、何層もの抽象的な概念を使って、情報同士の関係を理解する。私たちは分類の仕組みの世界で成長してきた。動物の一部を哺乳類に分類し、さらに、生理学やDNAでの類似点をもとに、もっと細かく分類する。それは辺境の村人には全く未知の世界だ。
概念を表す言葉は、かつては学者の領分だったが、数世代のうちに広く理解されるようになった。たとえば、「パーセント」という言葉は1900年の書籍にはほぼ見られなかったが、2000年には5000語に1語の割合で出てくるようになった(注15)(この章は約5500語だ)。コンピューターのプログラマーは、抽象化された層をいくつも積み重ねる(彼らのレーヴンのテストの成績は非常によい(注16))。コンピューターの画面上で、ダウンロードの進捗状況などを示すプログレスバーには、抽象概念がたくさん盛り込まれている。たとえば、そのプログレスバーをつくるためのプログラミング言語は、コンピューターが使う「1」と「0」で構成されたバイナリーコードに変換される。また、心理的な抽象概念もある。バーは時間を視覚的に示すもので、それによってイライラせずに済むが(注17)、それは水面下の莫大な作業の進捗状況を推計するものでもある。