『第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』
『blink』 The Power of Thinking Without Thinking
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい
沢田 博・阿部 尚美 訳
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第1章 「輪切り」の力
p26@9
人間関係のシグナル
結婚とモールス信号
すべての夫婦には特徴的なパターン、すなわち夫婦のDNAのようなものがある
あまりに多い会話の中のサインと、集中 防衛、はぐらかし、批判、軽蔑
拡大 軽蔑、嫌悪について
厚い輪切り
感情の物差しに注目する
訴えられない医者、訴えられる医者
これ以上にない薄い輪切り
ひと目で見抜く力
p48.4
たとえば、一瞬の断面を鋭く読み取る才能を現す言葉はいろんな分野に見られる。バスケットボールでは周りの動きをすべて把握できる選手のことを「コートセンス」があると言う。軍隊では優秀な司令官のことを「眼力」があると言う。すなわち戦場をひと目みただけで戦況を理解する能力のことだ。ナポレオンやパットン将軍には眼力があった。
「鳥の識別は主観的な印象に頼ることが多い。鳥の動き、違う角度から見た一瞬一瞬の姿、異なる姿勢の連続。頭を動かしたり、飛んだり、旋回したりするときに、さまざまな形やアングルが連続して見えるのだ」とジブリーは言う。「それらをすべて総合すると、その鳥だけの印象が浮かび上がる。それをばらばらにすることはできないし、言葉で説明することもできない。野外で鳥を観察するときは、時間をかけて分析して、これこれこういう特徴があるからこの種類だというように判断するわけではないんだ。もっと自然に直感的に判断する。練習を繰り返せば、鳥を見ただけで脳のスイッチが入るようになる。ひと目見ただけで、どの鳥かわかるようになる」
第2章 無意識の扉の奥 理由はわからない、でも「感じる」
ダブルフォールトを見抜くテニスコーチ
p54.1
「どんなふうに」感じるかを語るときは、「なぜ」そう感じるかも詳しく説明しなければならない。
p57.3
行動を促すプライミング実験
未来のパートナーを「輪切り」にするスピードデート
p66.5
p68.3
スピードデートはここ数年、世界中で爆発的に人気が高まっている。人気の理由は簡単だ。この催しはデートをシンプルにして、瞬時の判断の部分だけを取り出しているのだ。席に着いた男女はみな簡単な質問に答えようとしていた。すなわち「この人ともう一度会いたいか?」だ。この質問に答えるのに夜遅くまで話す必要はない。数分で分かるのだ。
ややこしい問題
p71.2
ジョンがメアリーの前に座ったとたんに二人の目が合った。メアリーは恥ずかしそうに下を向き、少し緊張して見えた。そのあと彼女は椅子に座ったまま前に身を乗り出した。はた目には典型的な一目惚れのケースに見えた。だが、ここで少し深く探って、簡単な質問をする。
まず、ジョンの性格についてのメアリーの評価は、彼女が男性に求める要素として事前に答えた内容と一致するだろうか。すなわち、男性のどこに引かれるかについてメアリーは正しく予測していただろうか。答えは簡単に出た。理想とする性格と、男性に会った瞬間に引かれる性格は一致しなかった。たとえば、メアリーは、知的で誠実な人がいいと事前に答えている。でもそれは、彼女がそういう人にしか引かれないということではない。ジョンがまさにそうで、彼女が最も引かれた相手は魅力的で面白いが、特に誠実でも頭がいいわけでもない。二番目に、メアリーが気に入った男性が全員、どちらかというと魅力的で面白い男性だとしたら、翌日理想の男性の性格を聞かれたときに魅力的で面白い人と答えるだろう。だがそれは翌日だけだ。一ヶ月後に同じ質問をしたら、最初のように知的で誠実な人がいいと答えるだろう。
メアリーには理想の男性像がある。それは間違いない。ただ不完全なだけだ。最初に答えたのは意識している理想だ。落ち着いて考えたときはそういう男性を望んでいると思う。だが、相手が目の前に現れた瞬間にどういう基準で好き嫌いを決めるかは本人にもよく分かっていない。決めては閉じた扉の向こう側にあるからだ。
説明できないと話をでっちあげる
p72.4
第3章 見た目の罠 第一印象は経験と環境から生まれる
p83.2 「輪切り」の暗い側面(瞬間的な認知の暗い側面)
p91.3 無意識な態度が意識的な価値観を裏切る
トップセールスマン成功の秘訣
p98.1
ゴロムが言おうとしているのは、ほとんどの販売員は典型的な「ウォーレン・ハーディング大統領をめぐる思い違い」をしやすいということだ。人に会ったときの見た目の第一印象のせいで、事前に集めたほかり情報の印象が薄れてしまうのだ。一方ゴロムはもっと客を見ようとする。アンテナを伸ばして、自信家かそうでないか、車に詳しいか何も知らないか、人を信用しやすいか疑い深いかを見きわめようとする。ただし、そうした瞬時の判断から外見のみに基づく印象は消しておく。ウォーレン・ハーディングをめぐる思い違いと戦おうとしたところに、彼の成功の秘密があるのだ。
第一印象を操作する
p102.4
実を言えば、第一印象の前で私たちはまったく無力なわけではない。第一印象は無意識、すなわち脳の閉じた扉の奥から生じるものかもしれないが、意識の外にあるからといって操作できなくはない。
たとえば人種のIATを何度も受けて、瞬時に答えられない項目にもっと速く反応しようと努力しても、結果が変わらないのは事実だ。だがテストの前にマーティン・ルーサー・キングやネルソン・マンデラ、コリン・パウエルといった立派な黒人の写真を見せたり、記事を読ませると、不思議なことに反応に要する時間は変わる。黒人と肯定的な事柄をすんなり結びつけられるのだ。IATの考案者バナジが言う。「毎日IATを受ける学生がいた。大学に来るなりテストを受けて、帰るときにデータを持ち帰っていた。ある日彼の中で黒人と肯定的な事柄が結びついた。その学生は『おかしいですね。今までまったく変わらなかったのに』と言っていた。私たちはIATの得点をなんとか操作しようとしたが、できなかった。しかし、その学生は陸上競技の選手で、その日の朝、オリンピックのレースを見てきたと言っていた」
第一印象は経験と環境から生まれる。つまり第一印象を構成する経験を変えれば、第一印象を生む輪切りの方法を変えられるのだ。
第4章 瞬時の判断力 論理的思考が洞察力を損なう
p106.1 史上最大規模、最もお金のかかった軍事演習
p112.4
バージニア州の自宅にある彼の書斎には計算理論と軍事戦略に関する本が何冊も並んでいる。ベトナムでの体験やドイツの軍事理論家カール・フォン・クラウゼヴィッツの著書を読んで、戦争は本質的に先が見えず、めちゃくちゃで、連続性のないものだと確信するようになった。
即興芝居にみる高度な判断
p117.2
正しい自発的行動がとれる集中すべき条件
言語が情報を書き換える
ERの危機——心臓発作を見分ける確率
p131.2
情報過多が判断の邪魔をする
p141.1
クック・カウンティ病院の実験はなぜ重要なのだろうか?それは、何かを判断する際、情報は多いほど適切な判断を下せると、みんな当たり前のように思い込んでいるからだ。
判断リソースを必要なところに集中させるために
p144.1
オスカンプはこう結論づけた。「情報が増えるほど、判断の正確さに対する自信は実際と比べて不釣り合いなほど高くなっていた」救急室の医者と同じだ。彼らが必要以上に情報を集めて検討したのは自信を持つためだった。
クック・カウンティ病院でライリーらが目指していたのは、簡単に言えば、救急室の自発的な行動に枠組みを与えることだった。診断チャートは過剰な情報に圧倒されないように医者を守るためのルールだ。即興芝居で同意のルールが舞台の役者を守るのと同じだ。チャートのおかげで医者は解放され、次々と下していかなければならないほかの判断に注意を向けることができる。たとえば、患者が心臓発作を起こしていないとしたらどこが悪いのか。この患者にもう少し時間をかけるべきか、もっと病状が悪そうなほかの患者を診るべきか。どのように話しかけて患者を理解すればよいのか。この患者のために私には何ができるか、とったことだ。
正しく判断する二つの要素
p145.2
正しく判断するには熟考と直感的な思考のバランスが必要だ。ボブ・ゴラムが車の販売で成功したのは、客のニーズや感情を一瞬で直感的に理解するのがうまかったからだ。だが彼が優秀だったのは、そのプロセスを止めるべきとき、すなわち、ある種の瞬間的な判断に意識的に抵抗するべきときがわかっていたからでもある。クック・カウンティ病院の医師も同じで、救急室で超多忙な日々を過ごしながらも機能しているのは、リー・ゴールドマンがパソコンの前に何ヶ月も座り続け、できるだけ多くの情報を苦労して評価してくれたからだ。時間があり、パソコンの助けを借りることができ、やるべきことがはっきりしているときは、熟考は素晴らしい手段であり、こうして分析した結果は瞬間的な認知が活躍できる場を用意してくれる。
二つ目は、優れた判断には情報の節約が欠かせないということだ。時四・ゴットマンは複雑な問題をごく簡単な要素に切り詰めて、ひどく複雑な夫婦間の問題にも明確で基本的なパターンがあることを示してみせた。リー・ゴールドマンの研究を見ると、このようなパターンを拾う際、情報は少ないほうがうまくいくことがわかる。判断する人に情報を与えすぎるとサインを拾えにくくなることは彼を証明してみせた。正しい判断を下すには情報の編集が必要なのだ。
『チェス盤を見てみろ。敵の動きはすべてわかる。でも勝てる保証はあるか? そんなものはない。敵の考えまではわからんのだ』
第5章 プロの勘と大衆の反応 無意識の選択は説明できない
プロが認めたのに成功しないミュージシャン
p152.1
コカ・コーラへのペプシの挑戦
p160.1
「感情転移」と市場調査の罠
p162.5
p164.4 白いマーガリン、黄色くなったマーガリン
★p165.4 アルミ箔で包まれたインペリアル。マーガリン
p168.3 おばあちゃんが作ってたのとそっくりな、ガラス瓶入りの桃
なじみのないものは説明できない(ハーマンミラー製アーロンチェア)
革新的製品は市場調査になじまない
味覚のプロの特殊技能
p180.1
★p183.3
自分の考えを知る能力の喪失
p183.4
★p184.4
第一印象を再現できるプロ
トライアングルテスト 感覚を何か恒久的なものに置き換えない難しさ
p189.2
第6章 心を読む力 無意識を訓練する
p194.1 ニューヨーク、ホイーラー通りの悲劇
p199.2 致命的な三つの間違い
顔の表情を解読する
p202.4
この本はあまりに難解で、読者の評価は二つに分かれ、内容を理解した上で素晴らしいと言う人と、内容を理解できないままにやはり素晴らしいと言う人がいた。
p207.2 表情のアクションユニット
p209.2 表情記述法 Facial Action Coding system
感情は顔の表情から始まる
p210.5
顔に現れる情報は心の中で起きていることを示すただの合図ではなく、ある意味で、心の中で起きていることそのものでもある。
エクマンがそう考えるようになったのは、フリーセンと向かい合い、怒りや苦悩の表情を作り始めた頃のことだ。「何週間もたった頃、一日中いろんな表情を作っているとあとで嫌な気分になることを、どちらかがやっと認めたんだ」とフリーセンは言う。「するともう一人も、やはり気分が優れないことに気づいた。
感情を切り離して表情を作ることはできないんだ。
p217.3 鳥かごの中のカナリアを食べた猫みたいだ
自閉症
ストレスによる適切な行動は心拍数115~145/分の間
興奮すると相手の心が読めなくなる
レーガン暗殺未遂事件の教訓
p234.3
p235.3
ロサンゼルスで警備会社を経営し、『不安という贈り物』(未邦訳)という本を執筆したギャビン・ド・ベッカーは、人を護衛するときに大事なのは「ホワイトスペース」、すなわち護衛する相手と襲撃者の間の距離だと言う。ホワイトスペースが多ければ多いほど、反応する時間は増える。時間が増えれば、襲撃者の心を読む能力も高まる。
p235.4 襲撃者に最初に気づく(警備業界では「認識の瞬間」と言う)
七四年に起きた韓国の大統領暗殺未遂事件
p236.4
「犯人は立ち上がり、自分の脚を撃った。それが始まりだった。彼は興奮して正気を失っていた。次に彼は大統領を狙ったが、弾はそれて大統領夫人の頭に当たり、夫人はなくなった。ボディガードが撃ち返した。彼の弾もそれて八歳の少年に当たった。両方がしくじったのだ。」
この出来事にどれだけかかったと思う? 15秒? 20秒? いや、たったの3.5秒だ。
人は時間がないと先入観に引きずられる。
p241 瞬間の判断力を高める訓練
p246 数秒の中にある一生分の判断
仕切り越しのオーディション
目で聴いていたわ
★p255.2
最初の2秒が奇跡を生む