言語による制約
言語が情報を書き換える
p125.1
いちいち自分の行動を説明しなくても動けるということが、即興芝居の合意のルールと同じように働いた。瞬間的な認知が可能になったのである。
人の顔については誰もが直感的な記憶に頼る。しかしその記憶を言葉で説明するよう求めたとたんに、記憶は直感から切り離されてしまう。
顔を見分けるという行為は特殊な作業かもしれない。だが言語による情報の書き換えは、もっと広範な問題解決のプロセスにも影響を及ぼす。
逆さにした巨大な鉄のピラミッドが頂点で見事にバランスを保っている。少しでも動かせば倒れてしまう。その下には一〇〇ドル札がある。ピラミッドを倒さずに紙幣を取り去る方法は?
すこし考えてみよう。そして一分ほど考えたら、自分がどう考えたか、思い出せる限りできるだけ詳しく書き出してほしい。戦略、アプローチ、思いつきなど、なんでもいい。スクーラーが洞察系のなぞなぞばかり集めて実験したところ、言葉で説明させたグループは、説明を求めなったグループより、正解率が三〇%も低かった。
出典