SNSでのコミュニケーションを見直すための文献リスト
SNSで敵とバトルしまくるコミュニケーションを重ねても、相手の考えは変わらないし、むしろ仲間を集めてますます噴き上がったりするばかり。結構親しかった人とも、たった一点の違いで争いが起きブロックしあって......でもこんなこと続けててもぼくたちはバラバラになるだけで、世界なんてちっとも変わんなくない? じゃあ、どういうコミュニケーションをすべきなんだろう。参考になる本をリストアップしてみたので、ぜひ読んでください。どれもすごくおもしろいしためになります。 ※随時更新 https://m.media-amazon.com/images/I/715KHWBksyL._SL1500_.jpg
原題"How to Have Impossible Conversations"(不可能な会話をする方法)。哲学者の著者が対立する相手とどのように対話、会話をするか、基本編から超上級者編まで徹底的に教えてくれる一冊だ。紹介されてる「基本テクニック」は本来、対話をする、会話をするならあまりにも当たり前なものばかりだけれども、多くの場合になぜか忘れられてるものばかり。
相手に対して自分の言いたいことを言うのではなく、自分が話を聞き、同意できなくても相手を理解することの重要性がさまざまなテクニックを通じて語られる。また、会話をするべきではない場合の立ち去り方までレクチャーもしてくれる。 ロシア生まれのアメリカ人でゲーム理論の研究者であったアナトール・ラパポートは、 会話で反論や批判を伝えるときのためのルール一覧を作成した。 これらのルールは現在、 ラパポートのルールとして知られており、アメリカの哲学者ダニエル・C・デネットの言葉を借りれば 「相手を戯画化したくなってしまう傾向に対する最良の解毒剤」 である。 ラパポートのルールは、デネットの著書 『思考の技法 直観ポンプと77の思考術』で綺麗にまとめられている。 他人との関わりを成功させたいという目標を達成するためには、次のステップを順番に踏むことだ。 1 相手の立場を明確に、鮮やかに、そして公平に、表現し直すこと。 パートナーに「ありがとうございます、そういう言い方をしたほうがよかったですね」 と言わしめるほどに。2 同意している点をリスト化すること(特に、 その論点が一般的だったり広く共有されているようなものではない場合)。3 相手から学んだことがあればそれに言及すること。4 反論や批判の言葉を口にしてもよいのは、これらすべてのステップを済ませてから5。話が通じない相手と話をする方法 ピーター・ボゴシアン ジェームズ・リンゼイ・位置2589 理解。同意。相手の貢献への言及。反論や批判をするにしても、その前にできることがまずこれだけある。というか、本来、正確に相手の言っていることを理解もしていないのに反論したり批判すること自体がおかしかったりする(一体何に反対しているのかわかっていないのに反対をすることが可能だろうか)。
人はついつい自分の価値観を相手に受け入れることを強制してしまう。でも、もし相手の考えを変えたければ、相手の価値観に基づいて話をしなければならないし、そのためには相手の価値観、思考、正当化すると思っている事実について知り、理解しなければならない。そんな当たり前のことが大事だとあらためて思わせてくれる一冊。
ちなみに著者たちの考え方に基けば、SNSではどのようなコミュニケーションを取ればいいのか。
効果的な会話を多種多様なソーシャルメディアで行うにあたっては、確固たるエビデンスがない以上、次のことをまず強く勧めたい。 すなわち、オンラインで緊迫した問題について議論するのは、本当に必要な場合にだけにすること(そもそもが本当に必要になる場合とはどういう状況なのかは想像し難いが)、そして〔オンラインで〕生産的に議論する方法についての確固たるエビデンスが見つかってからにする、 ということだ。ソーシャルメディアでの会話から得られるものは、皆無ではない(ストレスを発散して気分がよくなったりはするだろう)し、確かにいくつかの利点はあるだろう (リアルタイムで相手に反応しなくてもよい等)。 ただ、 それらを除けば、ソーシャルメディアはもともとただでさえ難しい議論というものを、さらに「ハードモード」にしてしまうものだ。 分断を煽るような会話や挑発的な内容をソーシャルメディア上でシェアすることについて、一つだけはっきりしていることがある。 それは、 〔人間〕 関係を破壊し、 〔すでにひどい状態にある〕 ソーシャルメディアの害悪をさらに強めてしまうということにほかならない。話が通じない相手と話をする方法 ピーター・ボゴシアン ジェームズ・リンゼイ ・ 位置1336 https://m.media-amazon.com/images/I/31nDK9C7pdL.jpg
変わらない人たちを「変える」にはどうすればいいか。なぜ人は「変化を嫌う」のか。著者たちの答えは、変化する選択肢が魅力的でないからとか、魅力が伝わってないからではなく、そこに「抵抗」があるから、つまり「変わることを邪魔する要素」があるからだというもの。そこで、そうした抵抗を可能なかぎり取り除いてあげるべきだという。たとえばその抵抗のうちの一つが「惰性」である。
人は往々にして新しいアイデアや可能性を受け入れることを嫌がる。 メリットが明白で議論の余地がなかったとしても、この傾向は変わらない。というのも、人間の心は不確実なものや変化より、 馴染みのあるものや安定を好むからだ。この特性はさまざまな名前で呼ばれている。心理学者は 「現状維持バイアス」 と呼び、マーケティング学者は「親近効果」と呼ぶ。 私たちはウォルター・ホワイトと同じく、 「惰性」 と呼んでいる。「惰性」とは、「もともと人間の心は慣れ親しんだものを好むように作られている」という考え方を指す言葉だ。「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由 ロレン・ノードグレン,デイヴィッド・ションタル・62 ページ そもそも元からこちらの意見や考えに同意している人相手なら、コミュニケーションは難しくないが、世の中に変化を生むことは難しい。自分と意見が異なる人に働きかけてこそ「世界を変える」ことになる。でも、どうやって? 本書にはそのためのヒントがたくさん詰まってる。もちろん最終的に人は人を変えられないことは多い。ほとんどかもしれない。でも、その人ができるだけ「変わる」ように、変わりやすい状況をつくることまではこちらでコントロール可能なのだ。
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子どもが何か間違ったことをしたからといって叱るのはよくない。なぜなら叱ったところでできるようにはならないから。そう考えることができる人たちでも、相手が大人だと、途端に「間違ってる」「おかしい」「なぜできない?理解に苦しむ」と叱ってしまう。本書の著者は「叱っても相手にとって何にもならないどころかマイナスになる」、それだけでなく叱ることには依存性があり、叱る側にとっても害悪しかないことを淡々と説得していく。
現在のSNSではとにかく「叱る」が常態化してしまってる。叱ると叱る側は気分がいいというか、何かやった気になるけれど、叱られた側は行動や考えを変えるわけでもなく、むしろ多くの場合は大勢の人間からのオーバーキル、攻撃によって傷つけられた理不尽な体験から、むしろ元の考えに固執していってしまうことがほとんどだろう。叱ってる人たちは本人はいいことをしている気持ちになっているが、世の中を悪くしてばっかいるのかもしれない。
では、そんな「叱る」をやめさせるためにどうするか。叱ってる人たちを批判しても今度はそれ自体がまた別種の「叱る」になってしまう。
また、安易な「叱っちゃダメ」というメッセージは 「叱る人を叱る」 発想になりやすいという問題もはらんでいます。 「叱る=悪、だめなこと」 という気持ちが強くあればあるほど、「叱っている人」 を見るとそのことを許せない気持ちになります。 そして、 「叱っちゃだめでしょ! なぜそんなことをするの?」と叱る人を非難したくなるのです。 〈叱る依存〉がやめられない 村中直人21ページ ではどうするか。
「私は努力している。 悪いのはこの人だ」 叱ることがやめられなくなっている人は、無意識のうちにこのような発想になっていることが多いのです。 もちろん、いつまでたっても求める結果が得られない状況に、「自分が間違っているのだろうか?」 「こんなことを続けても、何も解決しないのではないか」と疑問に思ったり、強烈な罵倒や罰で相手が苦しんでいる姿を見て、 強い罪悪感を感じたりするかもしれません。 そんなとき、 たとえ「もう叱るのはやめよう」 「もう少し別のやり方はないのだろうか」などと考えたとしても、〈叱る依存〉 におちいっている人は、叱ることを簡単にはやめられません。 特に、自分が「叱ることをやめられなくなっている」 という認識がない中で行う、叱らないための努力は、 そもそも現状に対する認識が間違っているため、 ほとんどの場合で失敗します。 問題は解決しないし、 叱ることもやめられない。 行き詰まりの状況になってしまうのです。 〈叱る依存〉がやめられない 村中直人83ページ まずは自分が今、叱る依存に陥っていると認識すること。その上で「叱るのがやめられない」人に必要なのは、非難や批判ではなく、支援と教育だと著者は主張する。
倫理的に誤っていることは倫理的に誤っているし、だとすれば、誤っていることの否定は「正しい」ことではあるのだが、「正しい」ことを常に主張することが倫理的に正しいことか、また、実際にそれが倫理的な世の中を実現する効果があるかというと必ずしもそうとは限らない。むしろ人間をある特定の特徴を持った生物種として心理学的、脳神経科学的に分析し、その結果に基づいてアプローチするほうが良い世界になるのではないか。そんなことに気づかせてくれる一冊。
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あんまりにもバカバカしいタイトルで「どーせ売れ線のSDGsにかこつけた金儲け本だろ」と思ってしまうのだけれど、自分と異なる考えの人に思っていることを伝えるとはどういうことなのか、人を動かすとはどういうことなのか。シロクマの親子の思わず笑っちゃうかわいらしいプレゼンを見ながら具体的に学ぶことができるおすすめの一冊。
地球温暖化というと、その原因について説明したり、「小さな日々のがまん」を要求するいつものアレかと思うと、度肝抜かれます。シロクマの親子は言います。「お願いしたいことは一つだけです」。なんだと思います? その答えはなんと「国を動かす」。こんな体裁していながら実はめちゃくちゃ政治的な本なんです。 事実や真実を伝えるだけでいいならプレゼンなんか必要ないよね。だけど、人は事実を列挙、提示されても自分の考えを変えない生き物。ではそんな生き物にどうやって「伝える」のがいいのか。シロクマが教えてくれます。これは超おすすめの本です。
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ダンバー数で有名な著者が、人間の社交上のつきあいや友人関係、その特徴について様々な実験や観察の結果を元に考察していく一冊。長いがその分内容も大変充実しており、一通り人間の「友人関係」の特徴について学ぶことができる、この分野では必読の一冊だと思う。 SNS上でのコミュニケーションということで言えば、いわゆるサイバーカスケード、エコーチェンバーをどのように脱するか(とその前にどのように我々はグループを作っていくのか)という点が非常に気になる。 いったい、どういうことなのか。 私たちは自分の意志で友人を選ぶことさえできないのというのだろうか? いや、そうではない。 じつは私たちはちゃんと自分で友を選んでいるのだ。 ただ、 あなたが選ぶ友だちはつねに、そのときの状況下で最も自分と共通点の多い相手なのだ。 似た者同士が集まるこの傾向はホモフィリー(同類性)と呼ばれるもので、私たちの友人関係における大きな特徴だ。 この人と友だちになれるだろうか、と私たちはその都度判断するわけだが、 そのときの基準を私は〈友情の七本柱 ( Seven Pillars of Friendship)〉と呼んでいる。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 239ページ 著者によると人間は自分と共通点のある人間を友人にしやすい。そしてそこには「友情の七つの柱」と呼ばれる基準がある。その7つとは「言語」「同じ場所で育った」「同じ教育を受け同じ経験をした」「趣味や関心が同じ」「道徳、宗教、政治などの世界観が同じ」「ユーモアのセンスが同じ」「音楽の趣味が同じ」だ。
私たちが驚いたのは、このリストにユーモアのセンスが登場したことだった。 道徳観や政治的信条といった重ための柱と比べ、ユーモアは些細なことに思えたからだ。 そこでオリヴァー・カリーは、これについて詳しく調べることにした。 彼は 『史上最高のジョーク一〇〇選』 から人々の受け止め方が最も異なるジョークを一八選び、被験者それぞれに、その面白さを評価してもらった。 彼ら一人ひとりのユーモアセンスを示すこの評価表は、いわば被験者各人のユーモア・プロフィールだ。 カリーはこの調査の一週間後、 再び被験者一人ひとりに接触し、これはほかの被験者たちのユーモア・プロフィールだと言ってプロフィール集を見せ、この人たちとどの程度うまくつきあえそうか、もし会う機会があったら友だちとして好きになれそうかを尋ねた。 だがじつは、被験者たちが見せられたのは、彼ら自身のプロフィールを調整したもので、 それぞれ、 彼ら自身のプロフィールと一致する割合を一〇パーセント、三三パーセント、 六七パーセント、九○パーセントに調整してあった。 その結果、 被験者はユーモア・プロフィールが自分のプロフィールに近ければ近いほど、 その人物といい友だちになれそうだと回答した。そう、私たちは自分と同様のユーモアセンスがある人を好むのだ。 また自分とユーモア・プロフィールが似ている相手ほど、 助けたいと感じる傾向も強かった。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 243ページ 政治や道徳、宗教観だけからSNS上で友人関係を築いてしまうと、そこには元から同じ考えの人しかいないエコーチェンバーが発生する。でも、人間は他の点でもつながれる。音楽の趣味や笑いのセンス、趣味などのつながりを大事にしよう。友達がネトウヨだったら絶交するなんて言う人もいるが、異なる意見の人間と、政治以外の話でつながることで、私たちはエコーチェンバーから脱することができるかもしれない。