意思決定
選択肢から一つを選択するプロセス
意思決定の目的は、多くの場合、選択、すなわち、与えられた選択肢の集合から最も「望ましい」選択肢を1つないし複数選び出すことである
様々な意思決定
意思決定モデル
パターナリスティックモデル
患者に治療法を選択する機会はなく、医療者が意思決定を行うもの。情報は医療者による意思決定の結果など限られたものしか提供されず、患者はそれを承認する形でのみ意思決定に参加する。
シェアードディシジョンメイキング(SDM)
医療者と患者が協働して意思決定を行うもの。医療者は患者の意思決定に必要な情報を可能な限り提供する。また、お互いの希望する選択肢について共有し2者間で意見の一致を目指す。
インフォームドチョイス
患者が自律的に意思決定を行うものであり、患者は医療者以外からも積極的に情報収集を行う。患者への情報は医療者からすべて提供されるが、推奨のような医療者の見解は含めず、医療者は決定も行わない。
table:意思決定状況に応じた合意形成方法
医療行為の不確実性が低い 高い
選択肢が少ない 選択肢が多い
リスクが高い インフォームドチョイス 複合(インフォームド/シェアード)
リスクが少ない パターナリスティックモデル シェアードディシジョンメイキング
リスクが高く、選択肢が少ない
インフォームドチョイス
同意 インフォームドコンセント
SDM なし
相互作用 中間
リスクが高く、選択肢が多い
複合(インフォームド/シェアード)
同意 インフォームドコンセント
SDM あり
相互作用 最大
例 住宅改修や装具作成
リスクが低く、選択肢が少ない
パターナリスティックモデル
同意 シンプルコンセント
SDM なし
相互作用 最小、なし
リスクが低く、選択肢が多い
シェアードディシジョンメイキング
同意 シンプルコンセント
SDM あり
相互作用 中間
例 腰痛患者への生活指導
インフォームドコンセント
医療者から提案された治療の性質、目的、リスクと効果、代替案、および治療を行わないことに関する議論の後、患者の明示的な同意または教非を確認する、リスクの高い状況で適応となる。
シンプルコンセント
医療者は散りよう方法の説明後、患者の同意または拒否を確認する(明示的または黙示的)。リスクの低い状況での適応になる。
SDM実践プロセス
1.意思決定に係わる必要性を共有する
2.意思決定において対等であることを認識する
3.可能なすべての選択肢を同等のものとして伝える
4.選択肢のメリットとデメリットを伝える
5.相手の理解と期待を理解する
6.相手の好みを特定する
7.選択肢の合意に向けて話す
8.決定事項を共有する
9.アウトカムを評価する時期を調整する
『臨床に活かすエビデンスと意思決定の考え』に詳しくある
誤謬
選択肢の生産
意思決定で重要なのは、選ぶことではなく、選択肢を出すこと。選択肢を出したら、それを決めることができる人たちの前に壇上に出して、オードオフ関係のある人が話をして、結論を出す。しかし選択肢に挙げられなかったものは、認知の範囲外にされてしまう。
しかし選択肢の探索はどれだけ労力を使っても洗い出しきることはない。探索の性質を持っているため。そのため選択肢を洗い出すリソースと、どこまでで打ち切るかを判断する必要がある。
意思決定した結果を伝える方法
単純
シンプル 短い
ストーリー
具体性
信頼
新規の情報
意外性
感情に訴える
意思決定の考え
過去のパターンに依存すると考える人
意思決定を不確実な将来に関するより主観的な信念の程度に基づいて行う人
リスク管理の意思決定
ある程度結果を制御できる領域を最大化する一方で、結果に対してまったく制御が及ばず、結果と原因の関係が定かでない離れょういきを最小化することにある
意思決定のプロセス
探索、設計、選択
事実前提
選択肢の集合
環境の状態
価値前提
選択結果の集合
結果の評価空間
関連
意思決定におけるヒューリスティック
ギーゲレンツァーらのグループは、次のような問題を用いて、意思決定で用いられるヒューリスティクスの研究を行った。
費用対効果の高いヒューリスティック
こんなもの当てになるはずがないと思う人もいるだろう。きちんと属性ごとの値を調べ、その重要度を込みにして足し算をするとか、統計に詳しい人ならば重回帰分析を行って属性ごとの重要度を決めてからやるべきだと考えるかもしれない。そこで、ギーゲレンツァーたちは、先ほどのドイツの都市を題材として、前述の三つのヒューリスティクスと、ふつうの人が思いつく一〇個の属性(州都であるか、展覧会場になるか、サッカーチームがあるかなど)をすべて考慮した上で決める複雑な方法とを、コンピュータシミュレーションによって比較してみた。その結果、単一理由意思決定を行うとだいたい三分の二程度が正解となった。ほら見たことか、やっぱり当てにならないだろうと考える人が多いと思う。しかし驚くことに、すべての属性を考慮する、他のより高度な方法でも同じ程度なのである。
出典
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意思決定
組織など人間を含むシステムにおいて発生する諸問題を、発見し明確に定義し、もそのシステムの目的にとって合理的な問題解決を行うプロセス
探索
問題の詳細を発見して定義し、利用可能と思われる代替案を生成する
制約条件、問題の範囲、および問題の環境を明らかにする
設計
生成された複数の代替案について、それが生み出す可能性のある結果を予測する
予測された結果を評価する
評価
評価に基づいて、1つないし複数の代替案を選択する
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意思決定の源泉
信念、推論
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サイモンは、企業における経営行動の核心が、どのような行動をとるべきか行動すること、すなわち意思決定であると指摘した。意思決定は情報処理プロセスとして理解される。
サイモンは意思決定を、意思決定のための問題状況を見出し、問題解決のための可能な代替案を作成し、代替案の実行結果を予測し、それらをある選択基準に基づいて評価し、代替案の中から特定のものを選択する一連のプロセスとしてとらえた。もし人間が全知全能であれば、最適基準に基づいて完全に合理的な意思決定を行うことができる。しかし、実際には人間の認知能力や情報処理能力には限界があるので、「制約された合理性(bounded rationality)」のもとで意思決定を行うことになる。制約された合理性とは、代替案の作成能力、代替案の結果に関する予想能力、代替案の選択基準の設定能力において人間に限界があることを意味している。つまり、現実の意思決定は、選択の結果について一定の受容可能な希求水準を満たす満足基準に従って行わざるをえない。
制約された合理性しかもちえない人間は、直面する問題状況を一定の範囲に限定することで、できるだけ合理性を高めるための仕組みを必要とすることになる。組織における分業による専門家や階層化による活動範囲の限定は、こうした仕組みとして機能する
また、サイモンは、意思決定のタイプを、プログラム化できるものとできないものに分類した。プログラム化できる(構造的)意思決定は、その解決の手順が明確で(ルーティン化された)、反復的に発生する問題に対するものである。これには、コンピュータを利用した自動決定システム(ADS)やマシン決定システムの導入が可能であり、意思決定の迅速化や能率化が促される。一方、問題解決の手順が不明確な(ノン・ルーティンな)、はじめて遭遇するような問題に対しては、プログラム化できない(非構造的)意思決定が行われることになる。これに対応するには、人間の思考や判断がより重要となるため、半自動決定システムやマン・マシン決定システムによって、可能な限りの自動化が進められることになる
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プログラム化できる意思決定(programmed decision)とプログラム化できない意思決定(non-programmed decision)
一定の手続きやルールを予め明確にすることができるルーティンで反復的な意思決定
単発的でそのつど解決方法を考えなければならないため、人間の経験、勘、判断、思考を駆使することが求められる。一定の手続きやルールを予め明確にすることが不可能なので、プログラマ化して自動化することはできない。
意思決定の質を高めようとすればするほど、人間の経験や勘を駆使せざるをえなくなり、組織内の意思決定のほとんどがプログラム化できない意思決定の特性を持つことになってしまう。こうした現実の意思決定を反映して、プログラム化できる意思決定とできない意思決定の中間的な特性を持つ準構造的意思決定(semi-structured decision) という概念が提示された(Gorry and Scott Morton, 1971)。
table:経営情報論 意思決定のタイプ
意思決定の種類 伝統的意思決定テクニック 現代的意思決定テクニック
プログラム化できるもの 1.習慣 1.オペレーションズリサーチ:数学的分析、モデル、コンピュータ・シミュレーション
ルーティンで反復的な決定 2.事務手順:標準的な事務手続き 2.電子データ処理
組織はこうした特性を扱うための特定のプロセスを開発する 3.組織構造:共通の期待、下位目標の体系、明確な情報チャネル
プログラム化できないもの 1.判断、直感、創造力 ヒューリスティックな問題解決テクニックの適用
一回限りの、構造化しにくい、今までにない方針の決定 2.経験則 a.人間である意思決定者のトレーニング
一般的な問題解決プロセスによって扱われる 3.エグゼクティブの選択とトレーニング b.ヒューリスティックを組み込んだコンピュータ・プログラミングの構築
Gorry, G. A., & Scott Morton, M. S. (1971). A framework for management information systems.
意思決定の階層性
組織における意思決定は、伝統的な組織階層に基づいて、戦略的計画、マネジメント・コントロール、オペレーショナル・コントロールという3つの階層に分類することができる(Anthony, 1965)。
戦略的計画
トップ・マネジメントの意思決定であり、戦略目標の設定や目標達成のための経営資源政策の決定である。
マネジメント・コントロール
ミドル・マネジメントの意思決定であり、資源の獲得、配分やコントロールのための意思決定である。
オペレーショナル・コントロール
ロワー・マネジメントの意思決定であり、配分された資源を活用して業務を効率的に遂行するための意思決定である。
活用される情報源の違い
一般に高い組織階層での意思決定ほどプログラム化できない意思決定が増大し、逆に低い組織階層における意思決定ほどプログラム化できる意思決定が多くなる。また、高い組織階層での意思決定は外部の情報源を活用することが多く、情報の範囲が拡大するが、その正確性は低くなる。逆に組織階層が低くなるほど情報源は内部に求められるようになり、情報の範囲は狭くなるが、その正確性は高くなる。
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table:経営情報論 伝統的な経営情報システムの分析枠組み
オペレーショナル・コントロール マネジメント・コントロール 戦略的計画
構造的 売掛金処理 コスト管理 傭船ミックス
準構造的 在庫管理、生産スケジューリング 総合予算/予算編成 合併・買収
非構造的 PERTシステム 販売・生産 新製品計画・研究開発計画
Gorry, G. A., & Scott Morton, M. S. (1971). A framework for management information systems.
低い組織階層が直接外部環境に接続されてるようになった。
意思決定の失敗
遭難して半数以上生きて帰れなかった…そういう系のまとめ動画を観てるんだけど「仕事できないチームにそっくり」だった。