『脳からみた学習−新しい学習科学の誕生』
Understanding the Brain: THE BIRTH OF A LEARNING SCIENCE
https://gyazo.com/2f4f2674172829e811d92f31fbe4d8e8
前書き
本書は認知科学と脳科学における既存の知識と新発見をまとめており、学習について新たな洞察をもたらすものである。最新の脳画像技術と神経科学における進歩により、脳が人間の誕生から老年期までのあらゆる人生の段階でどのように発達し機能するか、そして読み書きや算数などの技能の習得にどのように関わっているのか、といった点について解明が進んでいる。こうした解明はまた、ディスレクシアやアルツハイマー病のような脳機能不全の場合に脳内で起きていることについて、科学的な見解をもたらすものでもある。
本書は親、教師、学習者、政策当局など教育に関わるあらゆる人々にとって必読書となる画期的な報告書である。脳と学習の関係について経験的に知っていることを再度確認できると同時に、驚くような新しい発見もあるだろう。本書の目的のひとつは、我々はいつ、どのように学習するかということについて、教育者と神経科学者それぞれがその究明に貢献できるよう、双方の対話を促すことにある。国境も学術分野も越えた取り組みは、教育において繰り返し起こる問題の解決に決定的な役割を果たすことになるだろう。
目次
日本語版序文(小泉英明)
序文(バーバラ・イッシンガーOECD教育局長)
謝辞
要旨
生涯を通じて脳はどのように学習するのか
環境の重要性
言語、読み書き能力と脳
数的能力と脳
「神経神話」の払拭
教育神経科学の倫理と組織
将来のための重要なメッセージとテーマ
第1部 学習する脳
序章
第1章 脳についての「ABC」
A 知識の獲得
B 脳
C 認知機能
D 脳の発達
E 情動
F 脳機能と学習の神経基盤
G 遺伝的特徴
H 行動による「実践的」で全体論的な学習
I 知能
J 学習の喜び
K カフカの『城』
L 言語
M 記憶
N ニューロン
O 学習の好機
P 可塑性
Q 質が高く健康的な生活
R 表象体系
S スキル
T 集団と社会的相互作用
U 学習と教育の普遍性
V 学習カリキュラムの多様性
W 教育神経科学の研究
XYZ 今後
第2章 生涯を通じて脳はどのように学習するか
第1節 はじめに
第2節 脳構造の基本原理
図2.1 二つのニューロン間のシナプス結合
2.1 機能を担う組織
2.2 脳の構造
図2.2 大脳皮質の主要な下位区分
図2.3 前頭葉
第3節 生涯を通じて脳はどのように学習するか
3.1 可塑性と感受期
3.2 幼年期(およそ3~10歳)
3.3 青年期(およそ10~20歳).
図2.4 青年期の脳
表2.1 各時期の脳と学習
3.4 成人期と老年期
第4節 加齢による認知能力の低下を遅らせる学習
4.1 認知機能の低下と闘う
4.2 損傷した脳機能の再生
コラム2.1 学習療法(日本)
表2.2 脳機能の低下または障害とそれに対する対応
第5節 結論
第3章 学習する脳への環境の影響
第1節 はじめに
コラム3.1 栄養
第2節 社会的相互作用
第3節 情動のコントロール
図3.1 大脳辺縁系を含むヒトの脳内構造
コラム3.2 器官システムとしての「注意」:神経科学からの考察
コラム3.3 身体運動
コラム3.4 音楽と脳
第4節 動機
コラム3.5 遊びと学習
コラム3.6 コンピュータゲームの影響
第5節 睡眠と学習
コラム3.7 音圧(騒音)レベル
第6節 結論
第4章 読み書き能力と脳
第1節 はじめに
第2節 言語と発達性感受期
第3節 脳における読み書き
第4節 言語による読み書きの発達
第5節 発達性ディスレクシア
第6節 結論
第5章 数的能力と脳
第1節 はじめに
第2節 数的能力の形成
第3節 赤ちゃんと数
第4節 脳における数的能力
図5.1 大脳皮質領域
第5節 数と空間
第6節 教育指導の役割
第7節 性別と数的能力
第8節 算数学習の障害
第9節 結論
第6章 「神経神話」の払拭
「神経神話」とは何か?
神話1 「脳に関して重要なことすべては3歳までに決まってしまうので、ぐずぐずしている時間はない」
神話2 「特定の事柄には、そのときに教えたり、学んだりしなければならない臨界期という時期がある」
神話3 「私たちはたった10パーセントしか脳を使っていない」
神話4 「私は左脳人間で、彼女は右脳人間だ」
神話5 「認めよう! 男の脳と女の脳はやっぱり違うんだ」
神話6 「子どもの脳は一度にひとつの言語しか学ぶことができない」
神話7 「記憶力を向上させよう!」
神話8 「眠っている間に学習しよう!」
「神経神話」を払拭するために――結論
第7章 教育神経科学の倫理と組織
第1節 はじめに
第2節 教育神経科学の倫理的課題
2.1 何のために、誰のために?
2.2 脳に作用する薬物の使用に関する倫理的課題
2.3 脳と機械の結合――人間であることの意味とは?
2.4 過度に科学的な教育方法の危険性
第3節 学習研究のための環学的アプローチの創出
3.1 環学的な研究
図7.1 環学的研究の発展
コラム7.1 心・脳・教育(MBE)の研究
コラム7.2 ケンブリッジ大学教育神経科学センター(イギリス)
コラム7.3 デンマーク学習研究所
コラム7.4 ハーバード大学教育学大学院
3.2 相互の情報交換――双方向的な進歩
図7.2 研究と実践の間の双方向的な情報交換
コラム7.5 教育における神経科学の役割を教育者はどう見るか
コラム7.6 科学技術と世界的な教育の展望
コラム7.7 神経科学と学習のトランスファーセンター(ウルム市、ドイツ)
3.3 国際的な活動によって国境を越える
コラム7.8 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(日本)
コラム7.9 オランダにおける教育神経科学の取り組み
第4節 神経科学の限界と注意点
第8章 結びと今後の展望
第1節 はじめに
第2節 主なメッセージと結論
第3節 教育神経科学の研究をさらに進めるべき主要分野
第4節 新しい学習科学の誕生
第2部 共同論文
論文A 幼年期の脳、発達、学習
第1節 序論
第2節 新生児と乳幼児の脳の発達についてわかっていること
2.1 脳の発達の始まりとその後
コラムA.1 情動と記憶(学習)
2.2 経験の役割
2.3 脳の発達における重要な要素――タイミングと順序
2.4 可塑性――幼児の脳の大きな特徴
2.5 ニューロン発達における臨界期と感受期
コラムA.2 初期の言語発達
2.6 脳の可塑性と感受期
2.7 幼年期とその後の学習
第3節 幼年期の発達と学習の重要性
コラムA.3 ミラーニューロン
3.1 幼年期の教育・介入プログラム
3.2 幼年期は学習がすべてである
3.3 学習の弊害となる環境
3.4 早期の幼児教育・保育――重要だが「特効薬」ではない
第4節 幼年期の発達を促す学習環境とは
4.1 幼年期の遊びと学習の機微
4.2 カリキュラムおよび教育の目的と幼児の発達
4.3 言語発達を支える学習環境
4.4 幼児の学習を支援する教育者の方策
第5節 神経科学と幼児教育の統合的研究の課題
第6節 教育現場の声
論文B 青年期の脳と学習
第1節 序論
第2節 脳の発達について知る――脳とは何か
2.1 ミクロレベルでの脳の発達
2.2 マクロレベルでの脳の発達
2.3 脳の発達に関するさまざまなレベルでの研究
2.4 画像法
2.5 脳の発達の原因――生物学的成熟(自然)と経験(環境)
コラムB.1 MRIの原理
コラムB.2 PETとfMRIの原理
第3節 脳は経験が彫り込む彫刻である
3.1 年齢とともに変わる脳の活動
3.2 年齢とともに変わる脳の構造
3.3 脳と行動の関係
3.4 年齢による脳の使い方の違い
3.5 青年の脳と青年期における行動の変化
3.6 脳科学による成果とそれが示唆するもの
第4節 青年期の学習理論とライフコース
4.1 青年期の教育と学習への示唆
第5節 課題と将来の方向――新たな統合
第6節 論文を読んで――教育現場からの声
6.1 教えるということを再考する
6.2 学校教育の新たな目標と教員の新たな使命
論文C 成人期の脳、認知、学習
第1節 序論
1.1 学習とは何か
1.2 成人期の脳
1.3 本稿の要旨
第2節 成人期における認知と学習の年齢変化
2.1 認知機能の年齢変化
2.2 生涯学習――成人教育の観点から
第3節 老化と脳の機能――構造的脳画像技術
第4節 老化と脳の機能――機能的脳画像技術
第5節 加齢に伴う脳と認知機能の変化における個人差
第6節 認知の個人差と遺伝
第7節 高齢者と認知訓練
7.1 認知訓練
7.2 教育・訓練――発達の観点から
第8節 成人のための良好な学習環境の創出
8.1 コンピテンスに基づく学習論――問題解決に備える
8.2 構成主義学習論――個人的経験の活用
8.3 状況学習論――学習環境の組織化
第9節 今後の課題
第10節 教育現場からの声
付録A オンライン・フォーラム
付録B 脳画像技術
コラムA fMRIとは何か
図A 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)
コラムB 学習の科学や脳研究のための近赤外光トポグラフィ(NIR-OT)
用語集
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日本語版序文(小泉英明)
序文(バーバラ・イッシンガーOECD教育局長)
要旨
生涯を通じて脳はどのように学習するのか
環境の重要性
言語、読み書き能力と脳
数的能力と脳
「神経神話」の払拭
教育神経科学の倫理と組織
将来のための重要なメッセージとテーマ
第1部 学習する脳
序章
第1章 脳についての「ABC」
A 知識の獲得
B 脳
C 認知機能
D 脳の発達
E 情動
F 脳機能と学習の神経基盤
G 遺伝的特徴
H 行動による「実践的」で全体論的な学習
I 知能
J 学習の喜び
K カフカの『城』
L 言語
M 記憶
N ニューロン
O 学習の好機
P 可塑性
Q 質が高く健康的な生活
R 表象体系
S スキル
T 集団と社会的相互作用
U 学習と教育の普遍性
V 学習カリキュラムの多様性
W 教育神経科学の研究
XYZ 今後
第2章 生涯を通じて脳はどのように学習するか
第1節 はじめに
第2節 脳構造の基本原理
図2.1 二つのニューロン間のシナプス結合
2.1 機能を担う組織
2.2 脳の構造
図2.2 大脳皮質の主要な下位区分
図2.3 前頭葉
第3節 生涯を通じて脳はどのように学習するか
3.1 可塑性と感受期
3.2 幼年期(およそ3~10歳)
3.3 青年期(およそ10~20歳).
図2.4 青年期の脳
表2.1 各時期の脳と学習
3.4 成人期と老年期
第4節 加齢による認知能力の低下を遅らせる学習
4.1 認知機能の低下と闘う
4.2 損傷した脳機能の再生
コラム2.1 学習療法(日本)
表2.2 脳機能の低下または障害とそれに対する対応
第5節 結論
第3章 学習する脳への環境の影響
第1節 はじめに
コラム3.1 栄養
第2節 社会的相互作用
第3節 情動のコントロール
図3.1 大脳辺縁系を含むヒトの脳内構造
コラム3.2 器官システムとしての「注意」:神経科学からの考察
コラム3.3 身体運動
コラム3.4 音楽と脳
第4節 動機
コラム3.5 遊びと学習
コラム3.6 コンピュータゲームの影響
第5節 睡眠と学習
コラム3.7 音圧(騒音)レベル
第6節 結論
第4章 読み書き能力と脳
第1節 はじめに
第2節 言語と発達性感受期
第3節 脳における読み書き
第4節 言語による読み書きの発達
第5節 発達性ディスレクシア
第6節 結論
第5章 数的能力と脳
第1節 はじめに
第2節 数的能力の形成
第3節 赤ちゃんと数
第4節 脳における数的能力
図5.1 大脳皮質領域
第5節 数と空間
第6節 教育指導の役割
第7節 性別と数的能力
第8節 算数学習の障害
第9節 結論
第6章 「神経神話」の払拭
「神経神話」とは何か?
神話1 「脳に関して重要なことすべては3歳までに決まってしまうので、ぐずぐずしている時間はない」
神話2 「特定の事柄には、そのときに教えたり、学んだりしなければならない臨界期という時期がある」
神話3 「私たちはたった10パーセントしか脳を使っていない」
神話4 「私は左脳人間で、彼女は右脳人間だ」
神話5 「認めよう! 男の脳と女の脳はやっぱり違うんだ」
神話6 「子どもの脳は一度にひとつの言語しか学ぶことができない」
神話7 「記憶力を向上させよう!」
神話8 「眠っている間に学習しよう!」
「神経神話」を払拭するために――結論
第7章 教育神経科学の倫理と組織
第1節 はじめに
第2節 教育神経科学の倫理的課題
2.1 何のために、誰のために?
2.2 脳に作用する薬物の使用に関する倫理的課題
2.3 脳と機械の結合――人間であることの意味とは?
2.4 過度に科学的な教育方法の危険性
第3節 学習研究のための環学的アプローチの創出
3.1 環学的な研究
図7.1 環学的研究の発展
コラム7.1 心・脳・教育(MBE)の研究
コラム7.2 ケンブリッジ大学教育神経科学センター(イギリス)
コラム7.3 デンマーク学習研究所
コラム7.4 ハーバード大学教育学大学院
3.2 相互の情報交換――双方向的な進歩
図7.2 研究と実践の間の双方向的な情報交換
コラム7.5 教育における神経科学の役割を教育者はどう見るか
コラム7.6 科学技術と世界的な教育の展望
コラム7.7 神経科学と学習のトランスファーセンター(ウルム市、ドイツ)
3.3 国際的な活動によって国境を越える
コラム7.8 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(日本)
コラム7.9 オランダにおける教育神経科学の取り組み
第4節 神経科学の限界と注意点
第8章 結びと今後の展望
第1節 はじめに
第2節 主なメッセージと結論
第3節 教育神経科学の研究をさらに進めるべき主要分野
第4節 新しい学習科学の誕生
第2部 共同論文
論文A 幼年期の脳、発達、学習
第1節 序論
第2節 新生児と乳幼児の脳の発達についてわかっていること
2.1 脳の発達の始まりとその後
コラムA.1 情動と記憶(学習)
2.2 経験の役割
2.3 脳の発達における重要な要素――タイミングと順序
2.4 可塑性――幼児の脳の大きな特徴
2.5 ニューロン発達における臨界期と感受期
コラムA.2 初期の言語発達
2.6 脳の可塑性と感受期
2.7 幼年期とその後の学習
第3節 幼年期の発達と学習の重要性
コラムA.3 ミラーニューロン
3.1 幼年期の教育・介入プログラム
3.2 幼年期は学習がすべてである
3.4 早期の幼児教育・保育――重要だが「特効薬」ではない
第4節 幼年期の発達を促す学習環境とは
4.1 幼年期の遊びと学習の機微
4.2 カリキュラムおよび教育の目的と幼児の発達
4.3 言語発達を支える学習環境
4.4 幼児の学習を支援する教育者の方策
第5節 神経科学と幼児教育の統合的研究の課題
第6節 教育現場の声
論文B 青年期の脳と学習
第1節 序論
第2節 脳の発達について知る――脳とは何か
2.1 ミクロレベルでの脳の発達
2.2 マクロレベルでの脳の発達
2.3 脳の発達に関するさまざまなレベルでの研究
2.4 画像法
2.5 脳の発達の原因――生物学的成熟(自然)と経験(環境)
コラムB.1 MRIの原理
コラムB.2 PETとfMRIの原理
第3節 脳は経験が彫り込む彫刻である
3.1 年齢とともに変わる脳の活動
3.2 年齢とともに変わる脳の構造
3.3 脳と行動の関係
3.4 年齢による脳の使い方の違い
3.5 青年の脳と青年期における行動の変化
3.6 脳科学による成果とそれが示唆するもの
第4節 青年期の学習理論とライフコース
4.1 青年期の教育と学習への示唆
第5節 課題と将来の方向――新たな統合
第6節 論文を読んで――教育現場からの声
6.1 教えるということを再考する
6.2 学校教育の新たな目標と教員の新たな使命
論文C 成人期の脳、認知、学習
第1節 序論
1.1 学習とは何か
1.2 成人期の脳
1.3 本稿の要旨
第2節 成人期における認知と学習の年齢変化
2.1 認知機能の年齢変化
2.2 生涯学習――成人教育の観点から
第3節 老化と脳の機能――構造的脳画像技術
第4節 老化と脳の機能――機能的脳画像技術
第5節 加齢に伴う脳と認知機能の変化における個人差
第6節 認知の個人差と遺伝
第7節 高齢者と認知訓練
7.1 認知訓練
7.2 教育・訓練――発達の観点から
第8節 成人のための良好な学習環境の創出
8.1 コンピテンスに基づく学習論――問題解決に備える
8.2 構成主義学習論――個人的経験の活用
構成主義
8.3 状況学習論――学習環境の組織化
第9節 今後の課題
第10節 教育現場からの声
付録A オンライン・フォーラム
付録B 脳画像技術
コラムA fMRIとは何か
図A 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)
コラムB 学習の科学や脳研究のための近赤外光トポグラフィ(NIR-OT)
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