神経神話「私たちはたった10パーセントしか脳を使っていない」
人間はたった10パーセント(ときには20パーセント)しか脳を使っていないとよくいわれる。この神経神話はいったいどこからきたのだろう? アインシュタインが、「自分は10パーセントしか脳を使っていない」とインタビューに一度だけ答えたことからきているともいわれる。初期の脳研究はこの神経神話を支持したかもしれない。1930年代、カール・ラシュレー(Karl Lashley)は電気ショックを用いて離農を解明しようとした。そして電気ショックに反応しなかった多くの脳部位は機能を持たないと結論づけた。こうして、「沈黙の大脳皮質」という言葉が広まった。この理論は、現在は間違っていたと判断されているが、脳機能に関するこの疑わしい解釈が神経神話を煽ってきたといえる。 「10パーセントの神経神話」は、ニューロン(神経細胞)とともに脳を構成しているグリア細胞の数がニューロンの10倍もあるという事実から生まれたともいえる。グリア細胞はニューロンへの栄養の供給など、ニューロンの円滑な働きを保持するための環境を整えているが、情報の伝達機能の主役はニューロンであり、これは脳を構成する細胞の10パーセントを占める。このことがさらなる「10パーセントの神経神話」という間違った考えの土壌になっているようである。しかし、細胞機能に関する見解はあまりにも単純である。なぜなら、グリア細胞は、ニューロンとは異なる役割を担う一方、脳機能全体にとって重要な細胞だからである。 反証
電気刺激が動作、感覚、感情に何の変化を起こさなくても、脳が活動していないということにはならない。かつ禅に活動していない脳部位はなく、眠っているときでさえも脳は活動している。完全に活動していない脳部位があるとしたら、それは深刻な機能障害の可能性がある。また、脳機能を10パーセント以上失うと、身体的または精神的欠陥を伴う脳損傷という深刻な事態になることもある。
出典