知恵
人間の発達における理想のゴールとされる「知恵」という考え方がある。ただし、知恵に関連する知識で水準の高いものはめったに見られない。青年期後期から成人期前期にかけては、知恵に関連する知識が現れる最適期である。知恵の基盤は、個人と公共の利益に資する知性と徳の調和的統合にある。知恵に関する知識の評価指標として協力なのは、知能などの認知要素ではない(Stermberg, 1990参照)。評価指標として優れているのは、特定の生活体験(たとえば、生活上の複合的な問題に関わる分野で実践するなど)や、個人の関わる要素(たとえば、経験に対する開放性、創造性、情報の比較・評価・判断を好む傾向など)である(Baltes, Gluck and Kunzmann, 2002; Baltes and Staudinger, 2000参照)。
発達を重視する観点から見ると、高齢者のコンピテンスには様々な能力やスキル、興味・関心が含まれ、そこには自立の維持という目標を可能にする以上のものがある。コンピテンスという概念によって、積極的かつ意識的に課題や試練に向き合うことを促すような、励ましと支援のある環境で、周囲と関わり課題を持った有意義な生活を維持、あるいは回復できる人間の能力が理解される(Kruse, 1999.p584参照)。そのため、コンピテンスの発揮には、常に社会的・制度的環境の建設的な側面が関わってくる。つまり、起こりうる障害に対しては、技術的な支援が無制限に得られる環境や、他の人びとおよび組織による支援が求められるのである。 また、コンピテンスは経済における他の資源と同様、「人的資源」に結びつけることもできる。
出典