オモイカネ勉強会
オリジナルはここにアーカイブしてあるのでこちらは書き換えてもOK
Omoikane Embedのデータになって欲しいのでここに置いた
リンクは後で直す
今までの話
その前に時事の話題:
Worldcoin
「網膜をスキャンすると仮想通貨がもらえる?どういうこと?」となってる人を見かける
World ID, a privacy-preserving digital identity designed to help solve important, identity-based challenges, including proving an individual’s unique personhood (DeepL) ワールドIDは、個人のユニークな人間性の証明など、IDに基づく重要な課題の解決を支援するために設計された、プライバシーを保護するデジタルIDです。 (プロトコルは読んでない、でかいIdentity Providerになるのかなnishio.icon)
Worldcoin token (WLD), where laws allow, the first digital currency to be freely distributed to people for just being a unique human* (DeepL) ワールドコイントークン(WLD):法律が許す限り、ただユニークな人間であるだけで人々に自由に配布される初のデジタル通貨*。
成人したアメリカ国民全員が、アメリカのGDPの分配を受けるべきだ World IDによって人間だと証明された人に対するベーシックインカム
ネットワーク効果
「IDに基づく重要な課題」として「個人のユニークな人間性の証明」を挙げている ソーシャルグラフの特性を利用して、ユーザーを偽者(Sybils)である可能性の高さに応じてランク付けするものである。SybilRankは計算効率が高く...数億のノードを持つグラフに拡張可能
https://gyazo.com/cdc9b35a99ccc5919bdb81c4ffd7dd33
"Trust Seeds"と呼ばれる信頼度の高いアカウントから信頼が伝搬するアルゴリズム
「網膜スキャンと対応づいたアカウント」は信頼度高い"Trust Seeds"になりうるわけ
個々人にとって大きなネットワークに参加する方が有益
大きなネットワークを構築した事業者はプラットフォーマーとして有利に戦える
Elon Muskは巨大SNS Twitterを買ってXに変えようとした
Sam Altmanはばら撒きでプラットフォームを取る戦略
自社発行の仮想通貨払いでばら撒きをする
「将来その仮想通貨が価値を生む」という期待によって費用負担なしでばら撒きができている
賢い…
オモイカネプロジェクト
一言で言うなら「SFプロトタイピングとAI技術を組み合わせて、より良い議論の仕組みを作るプロジェクト」
AIは経済的社会的に広範囲な影響をもたらす
「AIがどうあるべきか」の意思決定が(営利企業の経営陣のような)「少数の人間」によって行われるのは正しくない 5月のこの発言を踏まえて冒頭のWorldcoinのニュースを見ると面白い
すごく面白いストーリーができたので採択を待たずに活動開始した
結果は残念ながら不採択だったが、その頃までにオンラインコミュニティで面白いことが起きていたので、プランを微調整しつつ継続的にやっていくことにした
Polisは有益なコンポーネント
しかし単体では熟議支援システムとして成立しない
前段階と後段階の設計が必要
前段階としてSFプロトタイピングでの世界観共有をする https://gyazo.com/def130484660e621bd11bf759c7c88c0
プロトタイピングとは
ありあわせの素材で概念を表現するおおまかなモデルをつくることだ。 ブロック、フォームコア、管状材料、強力粘着テープ、とにかく役に立ちそうなものなら何を使ってもいい。
発想する会社! - 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法 トム・ケリー p.74 最終的な製品の「近似」を低コストに作ることで、製品を手にした時の「体験」を早く入手しようということ
では物理的な製品ではなく、未来像や今後進むべき方針についてはどのようにすればプロトタイピングできるか?
その方法がSFプロトタイピング
ざっくり言えば「近未来SFショートショートによって未来の近似をする」
主人公の体験に共感したり反発したりする
しかもこのプロセスがAIによって支援できる
https://gyazo.com/a9cbed512af0304482aea9a095782782
実際にオモイカネプロジェクトの中では、何人もが自分のAI生成SF小説を発表している
意外と簡単、具体例を見てみよう
プロンプト: あなたはSF作家です。近未来SFを書け。制約: 主人公は「チームワークあふれる社会を作る」をモットーとするソフトウェア企業で働いている。ある研究者が「AIにSFを書かせることで未来をプロトタイピングすることが有益だ」と主張しているのを聞いたところからストーリーが始まる。
タイトル: 「未来のプロトタイプ」
第一章:「AIとの出会い」
主人公、樹(いつき)は、ソフトウェア企業「TeamWork Tech」のエンジニア。彼の信条は、チームワークあふれる社会を作ること。ある日、AIがSFを書くことで未来をプロトタイピングするという研究者の主張に興味を抱く。彼の心は、これが新たなビジョンを形成する鍵かもしれないと躍る。
第二章:「チームワークと未来予測」
樹は、AIの能力を活用して、社会にチームワークを浸透させるためのアイデアを探すためのプロジェクトを立ち上げる。そのAI、名前は「Asimov」。Asimovのタスクは、樹と彼のチームが提供するデータと目標に基づいて未来のプロトタイプを書くことだ。
第三章:「描かれた未来」
Asimovの描いた未来は、コラボレーションが社会を形成するもの。個々のアイデアが交差し、新たな発想を生む。しかし、Asimovの物語には警告も含まれていた。AIが支配する未来に、人間の役割が縮小することへの警告だ。
第四章:「調整の必要性」
樹は、AIが描いたこの未来に対して挑戦する。チームワークはAIだけではなく、人間間のつながりにも由来することを強調し、AIの能力を使いながらも人間性を失わない未来を模索する。
エピローグ:「チームワークの未来」
最終的に、樹とチームは、人間の創造性とAIの予測能力を組み合わせた未来を描く。それは、チームワークが中心となり、AIがサポートを提供する未来。そしてそれは、未来のプロトタイプとなる新たなSFの始まりでもあった。
この物語は、AIと人間が共に未来を形成する可能性を描き出し、読者に未来への新たなビジョンを提供する。
感想
"AIと人間が共に未来を形成する"
いいフレーズだね!
コラボレーション as "個々のアイデアが交差し、新たな発想を生む"
"チームワークの未来" / "チームワークが中心となり、AIがサポートを提供する未来"
「before GPT」のチームワークとは異なるものになるのかもしれない
チームワークは...人間間のつながりにも由来する
これは大事な視点な気がする
「チームワーク」の定義が不明瞭である問題、チームワークの未来についてSFプロトタイプを作っていくと面白いかも? "データと目標に基づいて未来のプロトタイプを書く"
今回のプロトタイプ作成プロセスではデータや目標を与えていない
確かに、データと目標を与えることでよりよいプロトタイプができる可能性はあるな…
プロトタイプは思考を活性化する
一人で使ってもChatGPTが予期しないストーリーを作ってくるので活性化する
ありあわせの素材で概念を表現するおおまかなモデルをつくることだ。 ブロック、フォームコア、管状材料、強力粘着テープ、とにかく役に立ちそうなものなら何を使ってもいい。
発想する会社! - 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法 トム・ケリー p.74 あいまいに「思考」「アイデア出し」「議論」するのではなく、見えるもの、触れるものを作ることで、より具体的な思考ができ、より具体的なアイデアが出て、より良い議論になる
なのでより良い議論の仕組み(熟議支援システム)を作る上では「議論の前にまずSFプロトタイピングをやるといい」のでは これが提案段階ではアイデアだけだったが、実際に試していく上で確信に変わっていった
上記の例のようなプロトタイプが本当にサクッと出てくるので、コストが予想以上に低い
これを掘り下げていくサププロジェクトが2つある
SFプロトタイプを元に検索キーワードを作り、そのキーワードで検索してヒットした論文のアブストラクトをプロンプトに積んでリファインさせる
これはさっきのSFプロトタイプの中で示唆されていた"データと目標に基づいて未来のプロトタイプを書く"の方向性
9月末に教員向けワークショップの予定
nishio.iconさんのプロジェクトで見て存在は知っていたもののハードルを感じて投票できていなかった
創作物を読んだ感想だとハードルが下がる?
考察1: 政治的なテーマだと「自分は投票するために十分な前提知識がない」と思ってためらうケースがある。
「小説を読んで感想を投票してください」だと、小説を読んだ時点で「十分な前提知識がある」と思うことができる
考察2: 「正しい意見を書かなければならない」という雰囲気を感じてハードルが高かった
今回は「感想」と言われていることによって「正しさ」ではなく「自分がどう感じたか」を表明できるようになった
Q&A
AIが支援する具体的な方法は何でしょうか?例えば、AIはプロットの生成、キャラクターの開発、ダイアログの作成など、どのような部分で支援を行うのでしょうか?gpt.icon
個人的には近未来SFのプロットを作らせる使い方が気に入っている、費用対効果が高い
これは僕が「効果」を「プロトタイピング」においているから
色々なキーワードに対して「日本文化に詳しくない人向けに英語で説明して」とプロンプト
「納得」は日本語のニュアンス豊かな表現で、英語には直訳することができない言葉です。
日本語の「迷惑」(めいわく)は、英語では直訳すると「nuisance」や「trouble」となります。しかし、この言葉の文化的意味は日本社会の文脈でこれらの翻訳を超えています。日本では、社会的な調和と集団主義が大いに重視されます... 書かれたSFストーリーから得られた具体的な洞察や教訓は何でしょうか?gpt.icon
地方行政が人手不足によりデジタル化された設定で、デジタル化に賛成の人と反対の人のストーリーを作った
当初僕は無意識に「変化に抗う高齢者が、その選択によって不幸になる」と思っていた
ChatGPTがその制約でのハッピーエンドを生成したのを見て、自分に無意識のバイアスがあったことに気づいた AIを使用して物語を作成することで得られる主な利点とは何でしょうか?gpt.icon
近未来SFの物語を作るということは、現在の状況からスタートして「そういうことは起こりそうだね」という小さいステップをつなげて未来予想を作ることnishio.icon
この未来予測は、作ることがそもそも苦手な人がいたり、無意識の思い込みで狭い予想をしてしまう
ここを機械的に支援することによってコストを下げ、かつ視野を広げる効果がある
ここまでが話の前半なので質疑する
Polisの後段階
https://gyazo.com/c24a617eaefe6f4124accce7f2cb7d18
他人に対してリリースして反応を観察することで学ぶことができる「最小限の製品」
小説を読んでPolisをやることによって「同じものを読んだのに人によって感じ方が違う」ということを実感することができる
https://scrapbox.io/files/64cba5450400ec001cd713bd.png
投票したら少数派だったので意見を書きたくなったnishio.icon
その後、その意見を元にSFを作りたくなった、これがnishio.iconの初のSFプロトタイプになった
この「小説からPolis」の流れをより良くしたくなった
Polisは7人投票するまで可視化が表示されない、投票行動を行った人に対するフィードバックがないので、中々投票を増やしにくい
例えばクラスタに分かれた理由の意見が可視化の画面には出ているが、これをAPIで取得したりできない
意見クラスタを仮想のペルソナとしてAIにロールプレイさせたりしたら面白いのにちまちまコピーペーストするしかない
この辺りのニーズから、前回のPolis勉強会での「改善したい点」のリストができた この「改善版のPolis的システム」はその後「コモレビカガミ」という名前がついた
人々から木漏れ日のように漏れてくる「感情データ」を、集めてreflect(反射/熟考)する鏡ということ
コモレビカガミ
✅投票に対して即時にフィードバックを返す
✅自分の過去の投票内容を確認することができる
✅投票内容をアップデートできる
これを「人々の考えがアップデートされていくことを支援するシステム」と考えている、考えがアップデートされた人が投票を更新したくなるのは当然のことなのでそれをサポートした
https://gyazo.com/3598f4f5c65e11b910a734ff7400eb2c
(予定)Twitterでシェアして直接投票できるように…
と思ってるうちにTwitterがXになったりきな臭くて様子見中(苦笑)
Blueskyに対してスクリプトで投票はできるが…
結局どのSNSがどうというより、人が集まってる各プラットフォームに気軽にシェアできることが大事
Polisの場合は「可視化されたものを人間が読んで、考えがトリガーされて、書き込みをする(人もいる)」だった
Polisのクラスタは仮想のペルソナなので、それをGPTが直接読んでロールプレイしたらいい
AIの演じる仮想人格同士が議論をしたらいい
コミュニティ中心AI
「コミュニティ中心のAI構築」プロジェクトは、「コミュニティAI」(Community-Centered AI)を作成する試みです。これは、特定のコミュニティの歴史、文化、課題、そして人々の意見を学習し、それらを理解し表現するAIのことを指します。具体的には、コミュニティが直面する課題に関わる人々と対話し、知識を提供するだけでなく、議論の場を作り出し、解決策の創出につながる環境を提供します。最初の目標は、オモイカネコミュニティのAIを作ることです。 比喩的表現をすれば「AIがコミュニティ内での会話を全部見ている」
話しかけられた時に「似たものを思い出して」それを参考にして返事をする
当時は手動でベクトルインデックスを更新していた
個人のScrapboxを対象とした実験しかしていなかった
これを「複数人が更新するコミュニティのグループウェア」に対して「1日1回自動更新」する
6月に1日1回オモイカネプロジェクトのScrapboxから自動更新するようになった
✅ベクトル検索機能はサービスリリース済み、チャット機能はまだつけてない
本質的にはScrapboxである必要性はない
コミュニティが主に使うコミュニケーションプラットフォーム(=グループウェア)から自動的にやりとりのテキストデータを抽出できれば良い
今Scrapboxでやっているのは、JSON形式でのエクスポートが自動化可能で都合が良いから
Scrapboxは公開でいくつものコミュニティが存在しているのも良いところ
企業ユースのグループウェアは大体中身を公開できない
公開コミュニティを実験台にすれば「こういうコミュニティに導入してこういう出来事が起こった」という事例紹介がやりやすい
スタートとしてはテキストデータがあれば何でも良い
例えば台湾のシビックテックコミュニティg0vは議事録をHackMDで公開されている、これをクロールしても良い サイボウズ式の記事をクロールしたら、サイボウズ文化を語るチャットボットになる ただ、スタートとしてこれらを学習したチャットボットを作ったとしても、それに対するフィードバックループが構築できないとイマイチ面白くない
フィードバックループの構築が重要
https://gyazo.com/e2ef115531a07b58e362c723f59f3e16
1: AIがグループウェアを読む
2: 誰かに話しかけられたときに、1の記憶を元に答える
3: このやり取りがグループウェアに自動で書き込まれる
4: それに対してコモレビカガミでの投票や、追加の議論が行われる
✅今の実装ではベクトルインデックスを更新(1)したあと、過去1日の更新を見た感想をAIがScrapboxに投稿する実装(3')になってる、それを見て感想を書くこと(4')ができる
AIの出力に対する匿名のコモレビカガミは3つの点で優れている
「人間の発言に対する場合」と比べて
相手が人間ではなくAIなので反論することに気兼ねがない
口頭での反論や顕名での投稿と比べて
匿名なので自分の意見を出すことに気兼ねがない
「はい/いいえ」の投票なので
言葉にまとめられない「もやっと」「違和感」が素直に表明できる 「コミュニティの空気」が「あいまいでなんとなくしかわからないもの」から、明示的に質問できるものに変わる
社会的リスクを負うことなく疑問を呈することができて、それに対してまずはAIが回答する
その回答が良かったかどうか、どう改善されるべきか、がコミュニティでの議論の対象になる
このプロセスで人間は誰も攻撃されず、AIという「仮想のキャラクター」を「みんなで改善」する協調ゲームになる トップダウンの指示ではなくコンセンサスを重視するのに、他人と対立することは恐れる日本文化において「より良い議論の仕組み」をもたらす
またGPT部分が言語の違いを吸収することで、異なる言語圏にまたがったチームの文化的な統合が支援されるはず
これがオモイカネプロジェクトで西尾が作りたいもの
ただしオモイカネプロジェクトは企業とは違ってボランティアの集まりなので企業の場合より難しいかもしれない
参加方法は自由で、参加者が自身の興味に基づいて自由に活動できる
それが多様性や創造性を高めて新しい発見や成果につながる
時間が経ってから過去を振り返ったときに「何が生み出されていたか」が明らかになる
何が生まれるかは事前に予測できず、生まれやすい環境を作ることしかできない
「未来を読み書きしながら考え、作る」プロジェクト
オモイカネプロジェクトのサププロジェクトの中で最もメタなプロジェクト(by /omoikane/niryuu.iconさん)
SFプロトタイピングは未来を小説の形で具体化することで、未来についてより具体的に深く考えることができるようにする道具
しかしこの「SFプロトタイピング」の「SFを読み書きする行為」自体がこのオモイカネプロジェクトの中ですでに新しい形へと進化しつつある
SFを書く行為
AIの支援によってハードルが下がった
今まではSF作家の頭の中でブラックボックス的に処理されていた執筆のプロセスが、GPTとのチャットログとして情報共有されるようになった
それを見て、今まで自分が小説を書く時が来るとは思っていなった人たちがSFを書くことに参加した
SFを読む行為
書籍でSFを読んだ場合、その感想は書籍とは異なるメディアで行われる
しかし共同編集可能なScrapbox上で読むことで、感想もそのSFと同じページのコンテンツとなり、他の読者との会話や他のSFとのリンクなどが発生する
Polisやコモレビカガミで読んだ感想について投票し、集計されクラスタリングされることは既存の小説にないエクスペリエンス
その他、分類しきれない色々なことが起きている
他人の作ったものにアンサーソング的な形で発展を付け加える、挿絵を画像生成AIで作る
インタラクティブな小説、小説を抽象化して変換する
この場で明らかに独特な社会的インタラクションが発生している
これは新たな文化の発生であり、つまりはこの場で新しい未来が生まれつつある
この現象自体を社会科学的に観察と理解をしよう、というプロジェクト
意識した以上に正統的周辺参加になっている
まず「読むこと」「読んで感想を書くこと」という周辺参加から始まり、徐々に「書くこと」に進む この「書く方法」の習得は抽象的な知識伝達だけではなく、特定の文脈や状況の中での参加や体験によって行われる「状況に埋め込まれた学習」 結果として共通の興味を持つ人による「実践共同体」になっている 誰でも参加できます
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