PluralityとPolis勉強会
いきなりPluralityの話をしても抽象度が高いのでまずはもっと身近なテーマから話を始める
Pluralityの具体的な技術的コンポーネントであるPolisに関しては最後に掘り下げる(ここから始めると時間がなくなるかも知れないので)
階層組織の発生と技術による変化
何度か書いてきたものを改めてまとめる
https://gyazo.com/8ee1bf4b0b2ea910dfee7e89aa333290
人がコミュニケーションを取れる人数には限界がある
100人のグループでコミュニケーションを取ろうとすると、自分が1つ話したら他の人の話を99聞かなければならない
組織の規模が大きくなるにつれて、素朴な1対1の会話のようなコミュニケーションでは辛くなってくる
https://gyazo.com/c809ecc731b9a7b5441b363bbdd4e755
そこで組織の階層化が行われた
ある領域を担当するグループを作る
グループの中の一人をそのグループの代表者とする
その人とだけコミュニケーションする
これによって「組織の全員とコミュニケーションするのは辛い」という問題が解決された
しかし別の問題が発生した
伝言ゲームのチェーンが長くなったことによって:
情報伝達の途中で情報を隠されたり歪められたりする頻度が上昇する
必要な情報が集まるまでの時間が伸びる
これらが大きな組織の問題点として認識されるようになった
https://gyazo.com/9cfcddde776b9bf6a6b7e4798eaff276
情報の複製と伝達の技術の発展によって、片方向だけ先に解決した
社長の思考を社員に伝える方向
グループウェアに社長が考えを書く
2023年現在ではZoom+録画の形で行われることが多い
しかしこれは複製と伝達の技術であるので、逆方向の情報伝達の問題は解決していない
1000人の社員が社長に10分ずつビデオメッセージを送ったら社長はそれを視聴するのに7日×24時間掛かる
まったく現実的ではない
この問題は一社員についても起こる
https://gyazo.com/bce5b25b3d888673b421ade41f9c5716
階層組織ならば自分の所属している小さい組織の中だけに意識を向けることで処理すべき情報の量を抑えることができていた
全社的情報共有システムがあると、すべての部署からの情報共有の合計が膨大な量になり全部見ることはできなくなる
個々人が適当にフィルターしている
メンションが来たら見ないといけないかな
同じ場所内のは見ないといけないかな
遠い場所のことは見なくてもいいかな
それでは全社的な状況が理解されにくくなる
ほとんどの人が「自分に近い部署の情報」だけ見ようとするため
一旦社長周辺に情報を集めて、相応のコストをかけてダイジェストし、それを全社員に発信することが行われるようになる
https://gyazo.com/01f286ba41e02b8bda44af91ea938882
ここまでの問題は情報の伝達・複製が「情報の量を増やす」から起きた
「情報の量を減らす」技術が生まれれば解決される
何百万人もの人々が仲間の意見の分布から抽出されたエッセンスを聞くことができる「ブロードリスニング」
多くの人の意見を、機械によってダイジェストして、量を減らした上で取得することができる
逆に言えば、同じ認知的コストで、より多くの人の意見を聞くことができるようになる
「自分以外の大勢の人が何をやっているのかを理解する力」をデジタル技術によって高めている
この技術は「社長が組織をより良く理解できる」だけではなく、社員一人一人「誰もが組織をより良く理解できる」ことにつながる
https://gyazo.com/01f286ba41e02b8bda44af91ea938882 再掲
社長業のうちの情報を伝えるための階層的ネットワークを維持するための役割が不要になる
「組織内情報ネットワークにおけるハブ」の役割
階層的役割ではなく、個々人が持つ知識や経験などの属性の差、つまり「多様性」が重要になっていく
本当に社長が判断しなければいけないこと以外は分散して自律的に判断した方が迅速に行動できるようになる
この技術は階層組織が必要とされた理由の大部分を解消する
なので組織構造が変化する
もちろん変わろうとしない組織はある
変わろうとする組織にとって制約が減るということ
ここまでは身近な話題として民間企業のイメージで解説してきた
Audrey Tangはこれが統治構造に同様の変化をもたらすと考えている。 帯域狭すぎる
それはかつてダイジェスト技術がなかったから集めても処理できなかった歴史的経緯による
デジタル技術の進歩によってもっと効率的に人々の考えを集めることができるはずだ
今後数年で融合してより良いものが生まれるだろう
「メンバーがどういうことを考えているのかをよりよく理解することのソフトウェアによる支援」
サイボウズの顧客の中にもこの技術を欲している組織がたくさんあるはずだ
今はニーズが言語化されておらず、形にして見せられて初めて「そうそう、こういうものが欲しかったんだ」となるだろう
vTaiwanは台湾政府の意思決定に用いられているが、これはAudrey Tangがトップダウンの強いリーダーシップを発揮したから
日本においては政府の意思決定にすぐに使われるようにはならないと思う
先取的な社長のいる民間企業や、先取的な首長のいる地方自治体が先に動くだろう
いくつかのパイロットケースが生まれて徐々に広がると思う
草の根で「こういうものを使う経験」を広げていくことが有益
質疑
human.iconチームを作る必要性は残ってるんですよね?
nishio.icon複数人が協力して実行するタスクがあるなら広い意味でチームは作られる
そのチームが固定的である必要性は減る
特に「固定のメンバーによるチームがあり、そのチームの中の一人が他のチームとのコミュニケーションの窓口になる」という構造の必要性が減る
human.icon組織の構造を決める制約のうち、コミュニケーションの制約が減るので、組織の構造の自由度が上がるということ?
nishio.iconそういうこと
human.icon組織の中で異なる部署が行った意思決定が矛盾しないためのコミュニケーション構造の設計が必要
nishio.icon重要なポイント、まだそこの解決ははっきりとは見えてない
Plurality
ブロードリスニングの「大勢の人が何をやっているのかを理解する力」を権力者が独占したらどうなるか?
中国語圏ではこれに対する危機感が強い
デジタル技術による「大勢の人が何をやっているのかを理解する力」を、政府が監視に使うことが懸念されている 「社会信用システム」は中国国務院が2014年6月、社会規範の向上を旗印に打ち出したプロジェクトだ。目標年次は2020年。14億人の国民を対象に「社会信用」のスコアを整備する...
スコアのポイントは、交通安全や納税から、ネット上での振る舞いまで幅広い。ネットでフェイクニュースを流布させたことが認定されれば、「社会信用」は下がる。
政府が「ない」と言ってる出来事を「ある」と言うのはフェイクニュース?
社会信用が下がると不利益が生じる→政府の意向に反する発言はできない
中国メディアによると、2018年に...人気歌手...全国ツアーの各地の会場で、様々な事件で指名手配されるなどして当局が行方を追っていた容疑者たちが次々と拘束された。会場内に設置された監視カメラで映し出された容疑者の顔と、警察が持つ顔写真データをAIが照合して見つけ出したもので、全国で計約60人が拘束された。
デジタル技術によって政府が「誰がどこにいるのか」を知ることができるようになるとこういうことが起こる
human.icon「監視カメラで犯人を捕まえる」というのは、日本だと歓迎する人が多いかも
nishio.icon日本人は「犯人」に自分が含まれないと思ってるからね
「犯人」は「自分とは違う悪い人」だと暗黙に仮定している
政府による「犯人」の定義に「自分の信条」が影響しないと信頼している
中国語圏での民主主義が失われることに対する恐れを日本人があんまり身近に感じてないのは、言語障壁の影響が大きい
中国、香港、台湾はお互いの話す言葉をかなり理解できる
日本人は中国語を理解できない人がほとんど
台湾は地理的にも中国や香港に近いので身近に感じやすい
https://gyazo.com/07762a676e4e4a24a4ca1024545d1ccd
台湾と中国は福岡と韓国よりも近い
台湾から見て香港は、地理的な距離で言えば東京から見て九州くらいの距離
長崎の出島でデモが起きているようなもの
言語も共通するからとても身近に感じている
human.iconそもそも中国は台湾を独立国と認めてないことも大きい
懸念と対策
AIと政府が結びつくことにより、政府の力が強くなる懸念がある
AIを使って民衆の力を強くすることを考えなければバランスがとれない
この方向性のことを、AIによってもたらされるとされている「シンギュラリティ」の「Singular(単数)」の対義語「Plural(複数)」を使って「Plurality」と呼ぶ 実現手段
要素技術
たとえばUberが入ってきた時に「規制すべきか、そうでないか」などの議論に使い政策を決定することに使われた実績がある
これはもうすでにavailableな技術であるので、これをもっとよく知って、自分たちの使いたい目的に応用できるようになるのが有益
簡単に言えば非集権的に個人識別をする方法
非集権的: つまり政府に依存することなしに
ガラパゴスな規格を作ると国内のリソースでしか改善が進まなくなるので、標準化することによって世界中のリソースをあてにしている
簡単にいえば所得の再分配のメカニズム
「何にどれくらいリソースを割り振るか」という意思決定
これを実現するために人を一意に識別する手法が必要
たとえば素朴な多数決は、一人で複数アカウントを持つことができてはいけない
現状のPolisだと匿名で投票できたりSNSアカウントで個人識別したりしてるから複数アカウントで投票できてしまう
それをやるインセンティブがさほど高くないからされてないだけ
お金が動くようになると複数アカウントを作ることのインセンティブが高まるので、対処が必要
それを実現する方法として政府によって検証されたIDを使う方法とDIDを使う方法とがあり、台湾は後者を推し進めようとしている
所得の再分配まではしないケース
DIDの話は日本人にはあまり身近に感じなさそう
政府を信用してる度合いが高いんだと思う
政府が自分に対して「パスポートを発行しないぞ」とか言わないと思ってる
「政権に対して批判的なTweetをする人の健康保険証と一体化したマイナンバーを停止しよう」とならないと思ってる
もしこの懸念が発生したら、萎縮して自由な発言できなくなってしまう
銀行口座を作るのに免許証を使って、
携帯代金の引き落としにその銀行口座を使って、
その携帯の番号をSNSのアカウントを作るときの二要素認証に使ったら、
当然政府はSNSアカウントが誰に紐づくのか把握できるよね!
…と恐れてる人は日本では少ない
余談: Weiboのアカウントを作ろうと思ったら中国本土の電話番号を要求されて大変だった
香港の状況に比べるととても平和
電車で移動する際にオクトパス(香港のICカード。日本でのSuicaやPASMOのように交通系ICカードや電子マネーとして使用できる)を利用せず、現金で切符を買って移動することで後に利用履歴を追跡されるのを回避している。実際に警察が大手バス会社からデモ当日の利用者のICカード情報を裁判所を通じて押収したと報道されている
human.icon政府が信用できないとそういう不便が発生するのか
どうして台湾がこの技術に注力しようとしているのか、明らかだと思う
human.icon統治機構なしに人と ID を一対一対応できる気がしない
human.iconDIDだけでは一人に唯一のIDを持たせることはできない
nishio.icon
この段階ではベリファイヤを切り離すことができるようになるという話
「できる気がしない」ってのは多分一つのベリファイヤで0%か100%かで「人間らしさ」を識別するイメージなのだと思う
が、そうではなく複数のベリファイヤをつなぎ合わせて個人識別の信頼度を高めていくアプローチも考えられている
今回のユースケースでは100%の人間保証は必要ない、人間らしさに応じて票数が決まればいいだけ
botアカウントが人間らしさを獲得するコストが十分高くなれば実用的に問題ない
他にもOpenAIのSam AltmanがやってるWorldcoinのような、人間保証を提供する非政府組織が立ち上がっているので、近い将来政府に頼らなくても実用上十分な人間保証ができるようになる human.icon日本でもデジタル庁や金融庁でDIDの議論が行われている
nishio.iconそうそう。政府はきちんとWeb3の地味な側面をトラックしている。
SNS上ではWeb3はオワコンみたいなことを言うエンジニアがいるが、バズったNFTのことだけを見てそう感じているのだと思う。 human.icon複数アカウントを持つことより一つのアカウントにした方がメリットがあればいい?
nishio.iconそう。逆の表現をすると、人間であることを証明するクレデンシャルを複数のアカウントに分散させると損をする構図を作れば良い。
共感
多くの人を巻き込んで物事を動かしていくには「共感」を得ることが必要 人々が問題だと思っていないことを問題だと主張して解決しようとしても共感が得られにくい
現状の日本では、多くの人はDIDには共感しないのではと思う
「信用できない政府」という問題を自分ごととして感じていないから
日本ではトップダウンの意思決定よりみんなの合意を重視する文化的傾向がある
一方で対立を回避したがる、自分の意見を言おうとしない人が多い
https://gyazo.com/16e6ee4613d836798ba1ae35f78ea58b
大勢で意思決定をすることが大変だ、という点は自分ごとの問題として認識しやすい
だからPluralityのブロードリスニングの側面は、よりより意思決定や合意形成のツールとして需要が高い 追記: この勉強会の後、ここの部分をもっと詳細に書いた
結局のところ、僕の関心のコアは「人間の能力を強化すること」なので、DIDの話は他の人に任せておいて、ブロードリスニングの方に注力していきたい
human.iconPluralityとPolisの関係を確認したい、Pluralityが性質でPolisがソフトウェアサービス?
「シンギュラリティが来る、ではなく、今ここにあるプルーラリティが大事だ」というビジョン
Polisはソフトウェアの名前
例えて言うなら「ソースコードはバージョン管理すべきだよね」がビジョンで、Gitがソフトウェアの名前
Polisの話とDIDの話は「どちらもビジョンを実現するために有益なコンポーネントだ」という形でつながる
で、僕はPolisの側に興味がある
Polisの仕組み
オープンソース、ライセンスはAGPL
デプロイ済みのサーバpol.isがあるのでちょっと試してみるだけなら誰でもすぐできる
これを見てPolisを使う日本人が増えると日本にとって有益だと思う
企業が社内ユースで使うなら自前でインスタンスを立ち上げたくなるよね
Githubからcloneしでコマンド2行くらいでDockerでサービスが立ち上がる
投稿の機械翻訳をONにできるので言語の異なる人たちのコミュニティで使うこともできる
カスタマイズするのはどれくらい大変か?
ソースコードを読んでUIを書き換えるところまではできた
クライアントサイドはReact
だけど結構jQueryベースのコードがある
投票とかはjQueryでapi/v3/votesを叩いてる
これがserver/app.tsのhandle_POST_votesとかにくる
大学の研究室で作った感がある
human.icon簡易的な作りという意味?
nishio.iconつぎはぎされてる感じ。CTOが技術選定してみんなで作ったのではなく、研究室に来た個々の「できる人」がメンテナビリティとか考えずに自分が一番使いたいものを使って作ったものが組み合わされている感じ
サーバで次に表示する投票対象を決める処理はランダムではなかった
以前「ランダムに選ばれる」と答えたが間違いだった
human.icon質問がたくさんありすぎて全部答えるのが大変だという文脈で「ランダムだから全部答えなくても大丈夫」という話だった
そう、で実際の実装はもっと先をいってて、回答を途中でやめても、そこまでの間になるべく多くの情報が得られるような順番で聞くような設計になってた
getNextPrioritizedComment
ざっくりいうとPCAを掛けて、それを元に確率的に優先度を決めてるっぽい
GPT-4.icon
この getNextPrioritizedComment 関数は、優先順位が高い次のコメントを取得するための関数です。
getComments, getPca, getNumberOfCommentsRemaining という3つの関数を非同期で呼び出します。それぞれの関数は、コメントの取得、主成分分析結果の取得、残りのコメント数の取得を行います。
selectProbabilistically 関数を使って、コメントを確率的に選択します。この関数にはコメントのリスト、コメントの優先度、全体のコメント数、残りのコメント数をパラメータとして渡します。
selectProbabilisticallyはgetPcaからきた値に比例する確率で選択するだけ
なのでgetPcaって名前だけど「PCA結果を使って計算した優先度」を返してるのだろう
この実装はDBから取ってるだけ
可視化の部分はPolisMathサーバというClojureで書かれたものがポーリングしてる
上記のgetPcaもこれが作った値を読むのだろう
要するに「可視化サーバ」的なものが居て、それが「手が空き次第読みに行って統計情報をアップデートする」という実装
混んでたら更新間隔が伸びていく
次元削減はUMAP
非線形な写像によって高次元ベクトルを低次元空間に写像する
意見グループはクラスタリングしてたから
クラスタリングはLeiden graph based community detectionを使ってると書いている
これはグラフベースの手法
なので距離をグラフの接続関係に変換する必要がある
どうやってるのかな
上記の手法を使っていると書いているが、Pythonライブラリとして使ってなさげ??もしかしてClojureで全部実装してる???
質疑
human.iconPolisの由来は?
ポリスは、都市、都市国家、市民権または市民による政体を指すギリシア語である。古代アテナイなど古代ギリシアに関して使用される場合は、通常都市国家と訳される。 police(警察)・policy(政策)・politics(政治)などの語源でもある。
gpt-4.icon民主主義は、紀元前5世紀頃、アテネのポリスで初めて包括的な形で実施されました。
ポリスは民主主義が発展するための文脈を提供し、ポリスの制度は民主主義システムの機能を促進させた。
例えば、ポリスの中心的な公共空間であるアゴラは、市民が集まり、公的な問題を議論する場として利用された。
これは、開かれた議論と公的な意思決定という民主主義の理想を実践的に表現したものであった。
アテネの民主主義では、ポリスの各市民はエクレシア(集会)に参加する権利を持ち、そこで公的な事柄について発言したり投票したりすることができた。
また、抽選で選ばれた500人の市民からなるブーレは、エクレシアの議題を設定することで、民主主義のプロセスにおいて重要な役割を果たす、ポリスに不可欠な機関であった。
human.icon直接民主主義だったし、ポリスによって政治体制は違った
nishio.icon大事なポイント
現代の日本の民主主義は「まず代表者を選んで、その代表者が意思決定をする」という間接的な民主主義になっている
オードリータンは「それは帯域幅が狭すぎるよね、デジタル技術がない時代に民主主義を実現するためにそうなっただけで、デジタルネイティブはその遅いアップロード速度には満足しないよね」とつっこんでいる
人々がもっと多くの情報をアップロードできるようにすべきだよね
Polisで30の質問に答えると30bit、選挙よりも情報が多い
個別の議題に対して直接的に賛否を表明できる
デジタル技術によってコストが下がった
選ばれた代表者が人々の意見をよりよく集めて理解することを支援するツールとして有用
human.icon世論調査の代わりになるってこと?
nishio.iconそう。でもそこにもさらに進歩がある
アジェンダ設定の権限を人々に開放すれば、各アジェンダに対しての人々の賛成反対を人々に返すことできる。公務員はもはやアジェンダを独占的に所有することはできない。--- Audrey Tang
何が質問されるべきか、を決めることを民衆に解放することが大事
官僚やマスコミが質問内容を決めてから質問するのではなく、人々が「この点について議論すべきだ」と思うことを投稿して、他の人がそれに対して賛成反対して、それが可視化されて、それを繰り返していく
そこが今のいわゆる「世論調査」との違い
human.icon世論調査、新聞社によって聞き方が違って異なった結果が出てくることがある、どの質問の仕方でやるべきかという議論になるのでは
nishio.iconそれに関していうとPolisでやったとしても質問や母集団が偏っていれば偏った結果が出てくる
新聞社とかが「偏らないようにランダムサンプリングしてます」と主張して電話をかけて世論調査して、そんな電話を受けるかどうかの時点で既にバイアス掛かってるだろという議論があるわけです
インターネット上で誰でも参加できるようにするのがベターなんじゃないかな
もちろんその形でやったとしても別のバイアスがあって、具体的にはインターネットしない高齢者の意見がサプレスされるわけなんだけど、僕はそれは好ましいと思ってる
なぜならシルバー民主主義の問題で高齢者に発言力が偏っている状態にあって、もっと若い人が気軽に意見表明できる構造に寄せていった方が社会全体として良くなっていく、これは僕の個人的な意見ですが。 human.icon正しく質問に答えるにもコンテキストの勉強が必要で大変
議題を書いてもその意図が理解されないと良い回答が得られない。間接民主主義の良いところは、議員が勉強に時間を使えるようになるところ。直接民主制にすると人々が勉強しないといけない。
nishio.iconしないといけないってことはなくて、したくない人はデリゲーション(権限委譲)するだけ
今の間接民主主義において我々は議員に「あなたが代わりに勉強してね」とすべての議題について100%のデリゲーションをしてる
自分が意見を言いたい議題に関して意見を言い、そうでないものは従来通りデリゲーションする形にすればいい。
human.icon自分が信用している人を表明できる仕組みにすればいいのかな
nishio.iconそういうことを考えてる人もいて、今のところPolisには実装されてないけど、実装するのもアリだと思う。
今の間接民主主義ではテーマによらず全部を一人の人にデリゲーションするわけだけど、テーマごとに任せる人を決めたい。たとえば僕の場合、デジタル技術が関わる政策には自分が口を突っ込みたいけど、夫婦別姓に関しては当事者ではないので実際に不利益を被ってる人にデリゲーションしたい。議題ごとに誰に任せるか決められるといい。まあ選ぶのが面倒な人は、丸ごと一人の人に丸投げするわけだが、それで今の間接民主主義のベースラインになるわけなので、それよりはベターになるんじゃないかな。
human.icon興味と知識がある人が参加するイメージ
nishio.icon正しい。全員がすべての議題に同じように興味関心があるわけではないし、同じように時間を割きたいと思ってるわけでもない。
だから多くの熱意関心を持ってる人がより多くの情報を発信できることが好ましい。これは何と比較してるかっていうと、紙と箱の投票で、このシステムだと一人一票なわけ。興味がなくて適当に投票する人も、すごく熱意がある人も、全部同じ量の情報しか発信できないわけ。でも熱意によってウェイトが大きくなった方が、正しい統計になるのでは? human.iconPolisは投票の結果浮かび上がってきたものを「解釈」するしかない?
nishio.iconPolis単体で意思決定が行われるとは思わない。意思決定をする人が別に居た上で、その人が「他の人がどのように感じているか」を効率よく収集するためのツールという認識。
台湾の事例も「台湾政府が、みんなの意見を集めて、どういう法律にするか決める」という形
human.icon論点を網羅的に得るために、たくさんの人がPolisをやってくれたら「あっ、こういう視点もあるのか」となって整理に役立つってことですかね?
nishio.iconそうです、「論点のブレインストーミング」とでも言うといいかな?政府が「これが論点です」と決めてしまってから投票にすると「その軸じゃないんだよー」という意見は出す方法が失われる。そうではなく、論点自体を人々が提出できるようにし、それぞれの論点についての互いの投票によって、どれはみんな賛成してるんだ、どれの意見が分かれてるんだな、ということが可視化される。で、それを踏まえることで意思決定者がより良い意思決定をしやすくなる。 human.iconPolisの可視化と議論が往復できるとよかったりするのかも
nishio.iconvTaiwanのUberの事例では可視化と議論を4回やってたはず なので、言い換えると、Polisはこれ単体で意思決定を行うツールではなく、よりよい意思決定を導くために大勢の人々から意見を集めるツール
賛否の分かれるテーマについて安全にブレインストーミングができるツールとも言えるかも
「意見の異なるAさんとBさんの論争」が引き起こされにくい仕組み
抽象化された、大勢で構成された「意見グループ」という見え方をするので、人対人の対立になりにくい