ソーシャルインパクトボンド
-地方公共団体の財源調達手段多様化の可能性-
野村資本市場研究所 江夏 あかね
要約
ソーシャルインパクトボンド(SIB)とは、従来行政が担ってきた公共性の高い事業の運営を民間組織に委ね、その運営資金を民間投資家から募る、社会的課題の解決のための仕組みである。 SIBは、21世紀の新たな財源調達手段として誕生し、日本でも2017年度から本格導入され、一部で成果が上がっている。地方財政の今後を見据えた場合、SIBが地方公共団体による社会保障関連事業の財源調達の一手段として、活用されることが増えていく可能性もある。
SIBが日本の地方公共団体にとって有効なツールであるためには、(1)個々が抱える社会的課題とSIBとの紐づけ、(2)評価指標の適切な選定及び標準化、(3)リスク管理、(4)地方財政措置の検討、(5)事業規模の確保、等の課題への対応を進めることが求められる。
日本においてSIBの歴史は幕開けして間もないが、地方公共団体が限られた財源の中で、質を維持・向上しながら適切に行政サービスを提供する手段の1つとしてのポテンシャルを秘めており、今後の動向が注目される。
SIBは、民間投資家からの資金をもとに、公共事業を実施し、予め合意した事業の成果に応じて、政府が投資家に元本と利子を償還する契約方式である。韓国は2016年ソウル市がアジア初のSIB事業を導入し、2017年は京畿道において2番目のSIB事業が開始した。
韓国のSIB事業は、自治体が主導し、民間セクターと協力的な連携体制を構築しながら進めている。事業推進上の試行錯誤もあったが、改善策を講じながら、次のSIB事業を準備するなど、韓国型SIBモデルを作りつつある。今後、中央政府による支援策や法的基盤の構築、SIBの広報を強化することで、韓国のSIB事業がさらに拡大するものと期待される。