フルレンジ・スピーカー
フルレンジ・スピーカーに、2-wayにはない性能・コスト面での魅力があるのか?と問われたら、よく分からない。
2-wayと比べると、フルレンジスピーカーの音は、低音または高音(というか、両方とも)が足りず、「あっさりとした音」になることが多いが、それは魅力とは言えない。
ユニットを高価なものにして箱を自作すれば、もしかすると、同価格帯の2-wayに近いワイドレンジで高解像度のスピーカーを手に入れることも可能かも知れないが、手間ひまかかる上に、製品情報もバリエーションも2-wayにはかなわないので、総合的な導入・運用コストで劣る。
フルレンジスピーカーは、性能的に不足する点を理解した上で、たとえば、低音を持ち上げるための様々なスピーカー設計技術を学んだり、自分の好みとなるツィーターや、ウーファー、ミッドパスの音色・音質を探したり、クラフト(DIY)・スピーカーを楽しむのに向く。あれこれ試行錯誤しながらDIYを楽しんだり、いろんなユニットを入手して音色を楽しむのが、フルレンジ・スピーカーの魅力であるため、かなりの散財を覚悟した方が良い。
なのだが、敢えて、最初のフルレンジ・スピーカーを選ぶとしたら、箱のサイズと設置スペースを勘案して、以下のユニットから1つを選んで、スピーカーを作ると良いと思う。スピーカーの作り方を自分で調べる余裕のない人には、ONTOMO MOOK stereo編で練習する(私もそのレベル)か、ヤフオクで1〜2万円台で注目スピーカーを落札するまで気長に待つのがお勧め。 気に入っているユニット
5〜6cm: 1〜2L程度の小さな箱で楽しみたい人向け。箱が小さく物理的な制約を受けやすいので、設計や工作に工夫が必要になるかも
T01の方がワイドレンジで高性能なのは確かだが、T03も侮れない。
T03は、10年以上前の限定品だが、今でも時々、Ontomo Shopで売れ残り在庫を入手可能なのと、中古をヤフオク等で入手可。1Lくらいの箱が適合するが、Stereo誌付録のダブルバスレフはあまり良い音しない。iDice miniという今は販売されていないアルミダイキャスト製のバッフルの箱(0.8Lくらい)でT03から良い音していたので、5cmと小さなユニットでも頑丈なバッフルが良さげ。
8〜9cm: 3〜5L程度の箱までは設置できる、という人向け。
机の上に設置して聴くサイズのものはこのあたりのサイズが上限。
ユニットのバリエーションが豊富。
比較的安価なもの: 私は安物ばかり聴いていたからかいまいちなものが多かったのだが、ある日、箱の問題と分かった。
SPK Audio FR03EやMarkaudio CHN519などペアで7〜8千円程度のもの 安くも高くもなく、音質はそれなりだが、良い箱を作ることができれば、常用可。
2〜3ペア購入して箱を試作評価して、DIYの腕をみがくのに向く。
少し値の張るユニット
Markaudio Alpair5 v3: とても良い。大音量は出せないと言われているが、私はそこまで大音量で鳴らす必要性を感じたことがない。低音が出ないと言われているが、手元の5L箱では十分な低音 Tang Band W3-2141: 美音である。それで、WinISDで適合するであろうバスレフ箱に入れたつもりであったが、低音がちょっと出過ぎるので、自分で作り直す予定である その他、いろいろ出されている。
高額ユニット
Tang Band W3-1878: ペアで4万円超え、私は持ってないが評判が良い。私もいつか買いたいと思っている。
10cm: 6〜15L程度の大きな箱を設置できる人向け。スピーカーに15万円くらいかけても良い人向け。サブウーファーもツィーターも不要なので、結局安上がり。DIYでなく、完成品のフルレンジスピーカーをはじめて購入される方には10cmがオススメ。
ワイドレンジである。高音がざらつく感じもするが、ボーカルがくっきりとする。弦楽器なども自然な音で良い。低音の量感もあるし、また、応答が速くて良い。
ペアで5万円と高額だが、15万円くらいの2-wayブックシェルフと同等の音が出るので、箱を自作しない人は、15万円くらいの予算を組んで、箱に10万円ほどかけても損しない。
7〜10L程度の容積のバスレフ箱が適す。
Markaudio Pluvia 7HD: 悪くない。MAOP7に比べると安価だが、必要容積は大きめ(9〜15Lくらい)。
それ以上の大きさ: ユニットも箱も大きくなる代わりに、ユニットの選択肢が減り、高額になるので、私は遠慮している。低音が格段によくなるのは理解できるが、10cmを超えたら、2-wayか3-wayの方が無理がなくて良いと思っている。
まとめ
フルレンジのスピーカーに手を出すなら、設置スペースを勘案して、ユニットのサイズを決めると良い
机の上に置きたい人や、たくさんいろんな箱を作ってみたい方には、5〜8cm程度。
音質にこだわる人や完成品の購入を予定する方には、10cmがお勧め。
10cmを超えるユニットは、最初の1台としてはお勧めしない。
フルレンジ・スピーカーは、スピーカーを自作(DIY)することや、音響工学に関心のある人に向く