チャンバー型トランスミッションライン
ヤフオクで入手したチャンバー型トランスミッションラインを聴いたところ、同一のユニットを納めたバスレフとは異なる音が出る印象を持った。比較用にバスレフを設計して聴き比べたわけではないし、達者な耳を持っているわけでもないので、何が違うのかは理解していないのだが、試聴したスピーカー(小型ユニット搭載)について、後述するようにHornrespを用いたシミュレーションを行ったところ、チャンバー型トランスミッションラインやMLTLは、低音をバスレフに対して大きく伸ばせるわけではないようだ。その一方で、設計の自由度がバスレフより高いため、自分好みの音をひき出せる可能性があると分かったので、あとは、実際にいろいろ作って、試聴してみたいと思っている。
TDLのReflex Transmission Line (RTL)というスピーカーの低域制御に使われていたバスレフとトランスミッションラインを組み合わせたデザイン。マルチウェイスピーカーに適用可。
Dr. Scottによる作例と解説(下記リンク)によれば、彼は、λ/4共振管として機能することを強調した上で、その低音を出口のラインおよび吸音材で制御可能にした点がこのエンクロージャの特徴であるとしている。また、小型ユニットに適している点も述べられている。
OM-MF4-Micaの作例
Dr. ScottによるOM-MF4-Mica用のチャンバー型トランスミッションラインの設計図と、フィディリティムサウンド社の菅野氏によるDr. Scottへの技術インタビュー
構造
気室:
サイズ(W, H, D) (mm): 104, 230, 117
断面積: 121.7 (cm^2) (OM-OF4-Micaの有効面積(23 cm^2)の 5.3倍。共鳴管としては大きめで、箱による共鳴が鋭く強くなる。)
ダクト
サイズ(W, H, D) (mm): 104, 402, 27 (H 402 = 4 x {板厚=18} + 3 x {ダクトの折り返し1個分の高さ=110}: ダクト中心を直線で引いて求めた長さ。 )
断面積: 28.1 (cm^2) (共鳴管としては細く、バスレフのダクトとしては大き目か。)
疑問点: 低音はどこまで伸びるのか? 後述のHornrespを用いたシミュレーションによれば 70Hzまで伸びる感じ
空気室+ダクトやダクト、空気室を共鳴管として見立てた場合の共鳴周波数(音速を340m/sとした場合)
63cm(空気室+ダクト)→135 Hz
40cm(ダクト)→213 Hz
23cm(空気室)→370Hz
Hornrespのシミュレーション結果
入力値を間違えているかも知れないので、パラメータごと載せておきます。
以下は、直管の開口端にポートを加えたモデルの場合(便宜上、終端ポートモデルと呼ぶことにする)。Hornrespでは、他に、密閉箱にポートを付加するモデルを作成することもでき、こちらはポート位置を移動できるので便利そうに思うが、終端ポートモデルとは異なるシミュレーション結果を返すようなので、後日、両モデルと実測値とを比較検討する予定。
https://gyazo.com/437298a69fb0d1caa40bb4091f46dd71
https://gyazo.com/87f99193294cf71afa27b73d0595ce89
吸音材
https://gyazo.com/feb73e6cf60325a82472b74ae85fa8d2
https://gyazo.com/cb3a894f9f503e3ed7f17f8710ca4f38
吸音材を空気室にしっかり詰め込まないと中音(400~600Hz付近)がバタつく。
上の周波数特性のままだと段差が大きい。もっと良い条件を見つけられるハズだが、結構難しい。ただ、聴感上、このあたりのこの程度のばらつきは気にならない可能性もある。
空気室に詰めすぎると、ダクトの出口で制御できる事は少ない印象。ただ、これはあくまでHornrespのシミュレーションの話。
あと、吸音材を詰めないままであれ不要とも思えたバッフルステップ補償も必要。このあたり’シミュレーションでいじってみたいが、なかなか良い値が見つからなかった。 Fb=70Hz
後述のMLTLと比べるとすっきりとした低音となっている模様
バスレフとの違いは、中高音の漏れが少ない、であろう点。低音の伸びは、このユニットだと多少伸びる程度で大差ない。
もう一点違うのは、ダクトの堅牢性。
自分でバスレフとMLTL, Chamberred TLを同じような材質で作って聞き比べたいところ。
上述したように中高音とかに違い出ると思う
OM-MF4-Micaの場合は、バスレフでも、低音を伸ばす方針であれば、3.6Lで75Hzくらいまで割とフラットに伸ばせて、群遅延もそれほど変わらないので、作りやすさを考えたらバスレフが良い。
しかし、フロントバスレフで中高音の漏れを抑えるのは困難(抑え切れば良いというわけではないようなので、制御することが重要)。そこでトランスミッションラインの検討。
Hornrespで設計しなおす予定
Markaudio.comに掲載のキャビネット作例( "markaudio cabinet RTL" or "Markaudio Chamber TL" でググってすべての候補を表示すると見つかる。)
アレンジして、他の小型ユニットを載せたい。作例が多くあるので、見比べながら、デザイン方法を調べたい。
その他の作例
Scan-Speakの5cmドライバ(5F/8422T-03)にも、OM-MF4-Mica4用のデザインがフィットする。5F/8422T-03を楽しく鳴らすにはバッフルに無垢板のものを使うと良いようだ。私は、ヤフオクで譲っていただいた方の作例から学ばせていただいた。 5F/8422T-01もそのまま載せられる。実際に聴いて、不満はないものの、Hornrespで、再設計する予定(予備検討ではML-TLよりかなりいい感じ)。 以下は、すみません、チャンバー型ではなく、普通のMLTLの場合の調査に移ってます。紛らわしいので、以下の内容は、いずれMLTLのページに移す予定ですが、もう少し関連情報がまとまってからにします。
ちなみに、以下の類似作例のλ/4共鳴管(MLTL)を見ると、Fb=70Hzとの記載があった。
Fb=70Hz
容積5.6L
ダクト面積 12.5cm^2, ダクト長 5.6cm
バスレフと見立てた場合共鳴周波数 91Hz
高さ 61cm
共鳴管としてみた場合の周波数 139Hz
共鳴管断面積は91.5cm^2 でMicaの有効振動面積のちょうど4倍と目いっぱい低音伸ばす設定にしている
Hornrespによるシミュレーション結果 間違ってるかもしれないので、パラメータごと載せておきます
https://gyazo.com/196e50b218cf1ba329a3d994da16ae6e
https://gyazo.com/549df067332e6a6432e8b5f81ab5e7fe
Fb=80Hzくらい?
ユニットとダクト間を約50cm離す
ドライバのオフセット位置を変えて、300Hz付近の共鳴を減らせないか検討した方が良いかも(私は未検討)
管を折り返すと、400Hz付近に段差ができるかも。高さ60cmの箱が嫌で管を折り返したいという人は事前のシミュレーション必須。
吸音材
https://gyazo.com/a6875a1505f4f1d0e295c8918f20aadc
Fb=77Hz? 中音域のレベルにあわせると70Hzくらいまで伸びていると言ってよさそう。
WinISDで予想したバスレフの共鳴周波数に比べて5Hzほど低音側に伸びる印象
吸音材少な目で良い感じ
低音が伸びる理由を調べてみると、以下のAccidental ML-TLの記事で、共鳴管に対してダクト内の気流の変動で生じる負荷が、まるで、原子間力顕微鏡のプローブなどに使われるカンチレバーに重りを載せて周波数を下げるかのように作用して、共鳴管長が実際の長さに比べて伸びたようになり、バスレフの気柱共鳴周波数よりも10〜20Hz程度低い低音が出るのだと説明されていていた。カンチレバーを知らない人は、ダクトによる負荷が、バネで単振動する錘に質量を追加することに相当しており、質量を加えると総質量の平方根に比例して振動周期が遅くなることに類似する現象が起きている可能性があると捉えて欲しい。この仮説が合っていれば、MLTLが、バスレフの亜種ではなく共鳴管の一種として扱われるのも適切に思える。共鳴周波数がどの程度下がるかはHornrespなどのシミュレータで計算しないと分からないが、下げ幅はQtsが高いほど大きくなるようだ。その点も、ダクト内で生じる気流の負荷の大きさがドライバのエネルギー効率に依存すると考えれば、矛盾なく説明できそう。AMLTL設計で、共鳴管の周波数をドライバのFsより高くする理由など、まだ理解できてない点も多々あるが、ML-TLの基本コンセプトは受け入れやすい。
シミュレーション用のソフトとして、以下の2つを試す予定だが、敷居が高くて、まだ試せていない。(Windowsが嫌いなので、仕事でない限りWindowsマシンに触りたくなくて、なかなk、シミュレータを触ることが出来てない)どちらのソフトもほぼ同じ結果を返すらしいので、どちらか使いやすい方を使う予定なのだが、自分で試してみないことには。
SpicyTL
私はこちらを使っている。AMLTLのページに、シミュレーション例を載せた。 吸音材の詰め方についても、エンクロージャによりいろいろ試す必要があるようだ。なので、蓋を開閉できるよう設計することが推奨され、おそらく、音道を折り畳む場合には、エンクロージャの頑丈さと吸音材の調整のしやすさを考慮した設計が必要となる。吸音材についてもAMLTLのページに記載。 必要な情報はある程度得られたので、まずは、小さなユニットで、ポートを下部ではなく奥に設置して(高さを)コンパクトにしたものなどを作って、比較してみようかと思う。
ユニットは、リファレンス機のあるScan-Speak 5F/8422T-03か、Markaudio OM-MF4-Mica/CHN40PMicaで、たぶん、Scan-Speakにすると思う。