第2章 ショウジョウバエのボディプランの発生
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ミバエであるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の初期発生は、同程度か、さらに複雑な形態をもつ他のどんな動物の初期発生よりもよく理解されている
発生の遺伝的な基盤はショウジョウバエにおいて特によく理解されており、他の生物、特に脊椎動物の発生に重要な遺伝子は、ショウジョウバエの遺伝子との相同性をもとにして同定されてきた
ヒトとショウジョウバエの発生は、我々が考えるよりはるかによく似ている
過去25年間の発生学における驚くべき発見は、ショウジョウバエの発生を制御する多くの遺伝子が、脊椎動物や、他の多くの動物の発生を制御する遺伝子と似ているということ
進化の過程では、動物のからだをパターン形成する満足のいく方法が一度獲得されると、場合によっては重要な改変があるとしても、同じ機構や分子が何度も繰り返し用いられる傾向がある
全ゲノムのDNA配列の解析結果から、ショウジョウバエにはタンパク質をコードしている遺伝子が14000存在すると予測されている
ショウジョウバエの遺伝子数は、単細胞生物である酵母のたった2倍であり、形態的により単純な線虫が持っている19000の遺伝子と比較しても少ない
しかし、発生過程や成虫のショウジョウバエで転写されているRNAの最近の大規模解析の結果は、選択的スプライシングが頻繁に起こっていることを示している
このため、合成され得るタンパク質の種類はもっと多いはず
さらにショウジョウバエのゲノムには、tRNAやmiRNAなどの機能性RNAをコードしている約1100の遺伝子が存在する
現代の発生学におけるショウジョウバエの卓越した重要性は、遺伝子がショウジョウバエ胚の発生をいかにして制御するかの根源的な理解をもたらした研究に対して、1995年にノーベル生理学・医学賞が授与されたことからもわかる
ノーベル賞が発生学の研究に対して贈られたのは、これを含めて2回だけ
昆虫と脊椎動物の発生が大きく異なるように見えるにもかかわらず、ショウジョウバエの研究から、脊椎動物の発生にも当てはまる多くのことが明らかにされてきた
例えば、多くの細胞間シグナルの伝達経路は非常によく保存されている
ショウジョウバエの生活環と発生の概観
体軸の形成
卵形成における母性決定因子の局在
初期胚のパターン形成
ペアルール遺伝子の活性化と擬体節の確立
分節遺伝子と区画
体節のアイデンティティの指定
第2章のまとめ
ショウジョウバエの発生の最も初期段階は、胚が多核性の合胞体であるときに行われる
卵形成期に母性遺伝子産物は、特定の空間パターンで卵に蓄積される
このパターンが主な体軸を決定し、位置情報の枠組みを与える
受精後、この位置情報は胚性遺伝子のカスケードを活性化し、さらなるからだのパターン形成を行う
前後軸に沿って活性化される最初の胚性遺伝子は、すべて転写調節因子をコードするギャップ遺伝子で、それらの発現様式は胚をいくつかの領域に分割する
次にペアルール遺伝子の活性化とともに体組織の体節化への移行が始まる
ペアルール遺伝子の発現部位は、ギャップ遺伝子タンパク質により指定され、体軸を14の擬体節に分割する
背腹軸に沿った胚性遺伝子発現は、予定中胚葉や予定神経組織を含むいくつかの領域を規定する
ペアルール遺伝子が発現される時期には胚は細胞化されており、もはや合胞体ではない
体節と区画境界をパターン形成する分節遺伝子は、体節のパターン形成と極性化に関与する
体節のアイデンティティは、一般的にHox遺伝子として知られるホメオティックセレクター遺伝子を含む2つの遺伝子複合体により決定される
これらの遺伝子の空間的発現パターンは、大部分がギャップ遺伝子の活性により決定される
→第3章 脊椎動物の発生I:生活環と実験発生学的解析