ショウジョウバエの生活環と発生の概観
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成虫は全長3 mm
孵化後、さらに2つの幼虫のステージを経るごとに大きくなり、蛹になる 2.1 ショウジョウバエの初期胚は多核性胞胚葉である
ショウジョウバエの卵は長楕円形であり、その前端は、卵を覆う卵殻に存在する乳頭型の構造である卵門によって容易に識別できる 受精と、それに続く精子と卵の核の融合の後、接合体の核は9分ごとに迅速な分裂を繰り返す しかし、この分裂では、他の多くの種の胚の場合と異なり、細胞質の分裂や、核を分けるための細胞膜の形成は起こらない https://gyazo.com/3f92994b452298542dc53df0db51a442
したがって、胚は、初期発生を通じて単一の細胞のまま
これは表層の核と細胞質からなり、卵黄性の細胞質の中央部のかたまりを覆っている その後すぐに細胞膜が表面から内部に伸長し、核が囲まれることで細胞が形成される その結果、胞胚葉は14回目の核分裂の後で細胞性になる 合胞体が形成されるため、タンパク質のような高分子であっても、発生の最初の3時間は核の間を拡散することができる
このことはショウジョウバエの初期発生において重要な意味を持つ 極細胞は、胞胚葉の外側に存在するようになる
一方で胞胚葉は、胚の体細胞を形成することになる
発生の極めて初期に生殖細胞を胚の他の細胞と分けてしまうことは、動物の発生で一般的に見られる現象
胚発生は不透明な卵殻の中で進むため、これを調べるためには胚を漂白剤で処理して卵殻を取り除き、観察用の特別なオイルに浸す必要がある これは発生のどのステージでも可能であり、この処理を行っても胚は発生を続け、孵化する
胚は全長およそ0.5 mm
2.2 細胞膜形成に続いて原腸形成と分節化が起こる
生殖系列細胞を除くすべての組織は、細胞性胞胚葉の単一の表皮層に由来している
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原腸形成は受精の約3時間後に始まり、腹側にある将来の中胚葉が陥入して、腹側正中線に沿った腹部溝が形成される 中胚葉の細胞は初め、中胚葉の管を形成して陥入する
次に中胚葉細胞は、この管の表層から遊離し、筋肉や結合組織を形成することになる胚の内部の場所へと、外胚葉の内側を移動していく
これは、脊椎動物では神経索が背側にあることとは対照的 同時に2箇所での管状の陥入が、将来の中腸の前方と後方に相当する領域から起こる
これら2つの陥入は内側に伸長し、結果的に融合して内胚葉性の中腸を形成する
外胚葉は中腸に続いて内側に引き込まれ、前腸と後腸を形成する 原腸陥入の過程では細胞分裂は起こらないが、これが完了すると細胞分裂が再開する 表皮の細胞は、主にタンパク質と多糖であるキチンから成る薄いクチクラを分泌する前に、もう2回だけ分裂する これによって後方の胴体部分が、胚の後方を通って背側に移動する
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この後、胚発生が完了するに従い、胚帯は収縮する
擬体節と体節の位置関係はずれており、このため、各体節はある擬体節の後方部と、その次の擬体節の前方部が協調的に発生することによって形成される
胚は14の擬体節を持ち、そのうちの3つは口器、3つは胸部、8つは腹部を形成することになる
2.3 孵化したショウジョウバエの幼虫は、幼虫期、蛹期を経て変態し、成虫になる
幼虫は、受精後24時間で孵化する
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孵化の数時間前には、幼虫のからだの部分が明瞭にわかるようになる
頭部は複雑な構造であり、幼虫が孵化するまでよく観察できない
幼虫は摂食し、成長すると、クチクラを脱ぎ捨てて脱皮する ショウジョウバエの幼虫は、翅も脚も持たない
翅や脚、その他の器官は、蛹期にホルモンによって誘導される変態が起こる際に形成される https://gyazo.com/9e283304ca431078c37c1fd6e41504b5
成虫原基は、細胞性胞胚葉に由来する上皮細胞層で、それらが形成された時期には、約40個の細胞から成り立っている
成虫原基は幼虫の器官を通じて細胞分裂によって大きくなり、大きくなった分は折りたたまれて上皮の袋になる
6本の脚、2枚の翅、2つの平均棍の成虫原基が存在し、その他にも生殖器、眼、触覚、成虫頭部の他構造を形成することに成る成虫原基が存在する 変態の際にこれらは成虫の器官へと発達する
成虫原基によって、変態という過程をはさんだ幼虫と成虫のからだのパターンの連続性が担保される
2.4 発生で機能する多くの遺伝子は、ショウジョウバエを用いた大規模な遺伝的スクリーニングから同定された
発生で機能する多くの遺伝子は、多数の個体に対して化学物質による処理やX線照射をすることでランダムに突然変異を誘発し、関心のある発生過程に影響を与える突然変異をその中から選別する(スクリーニングする)ことによって同定されてきた 十分な数の手段を扱えば、ゲノムのすべての遺伝子に突然変異を誘発できることになる
このような研究手段は、素早く増殖し、多くの個体数が容易に得られ、それを取り扱うことができる生物を用いる場合に有用
発生に影響を与える多くの突然変異がショウジョウバエの初期発生に関する我々の理解を進展させることになったが、それらは華々しく成功した1つの突然変異スクリーニング計画によって得られた
このスクリーニングでは、ショウジョウバエ初期胚のパターン形成に影響を与える突然変異が、ゲノムからシステマティックに探索された このスクリーニング計画では、何千ものショウジョウバエ成虫が突然変異誘発物質で処理され、繁殖の後、スクリーニングされえたBOX 2Aで述べた手順によってスクリーニングされた
必要な子孫の総数を考えると、突然変異を同定するために調べなければならない数を減らすように計画を工夫することが大切
そこで1回のスクリーニングで探索される突然変異は、1つの染色体上の突然変異に限定される
スクリーニング計画には、突然変異が起こった雄由来の染色体のホモ接合体を同定する手段が含まれ、さらに重要なのは、突然変異が起こった染色体を持たない個体の集団を自動的に除いてしまう方法が含まれていなければならないこと ショウジョウバエのパターン形成に影響を与える突然変異のスクリーニングを行ううえで特に有用性の高い表現型の特徴は、幼虫の体節の突起物である小歯状突起の一定のパターン このパターンが不規則になることで、突然変異を素早く見つけることができる
この方法によって、ショウジョウバエ初期胚のパターン形成で働く主要な遺伝子が最初に同定された
ショウジョウバエの胚発生に影響を与える突然変異のうち、あるタイプに属するものを同定するには、少し異なるスクリーニングを行う必要がある
母性効果突然変異は、母親がホモ接合体であっても母親の見かけや生理状態には影響しないが、その子供の発生に影響を与えることで同定される
別の母性遺伝子は保育細胞や卵母細胞で発現し、卵母細胞の中に特定のパターンで蓄えられる発生に重要なmRNAやタンパク質を産生する この最初の分布パターンが形成される過程は、正常な発生に必須