表現型
生物の外に現れた形質をいう。遺伝子の組合せを示す遺伝子型genotypeに対応する語。デンマークのヨハンセンW. L. Johannsen(1857―1927)によって名づけられた(1909)。 生物のもつ形質には、形態的なもののほか、生理的機能や生化学的な性質、さらには行動や精神活動なども含まれるが、これらは、その生物がもつ遺伝子型によって支配されると同時に、遺伝子の優劣関係や環境の影響によって大きく変化する。 メンデルの行った交配実験で、エンドウの種子の表面が滑らかで丸いものと、シワがよって角ばっているものとを交配すると、雑種第一代ではすべて表面が滑らかで丸いもののみが生じ、シワがよって角ばったものは現れなかった。このような雑種第一代で現れる形質を優性といい、現れない形質を劣性という。 相同染色体を2本ずつもつ二倍体の高等動植物では、同一座位の同じ遺伝子が相同染色体上に1個ずつ合計2個存在し、雑種第一代では、両親から1個ずつ受け継いだ遺伝子が、優性、劣性のヘテロの組合せになったとき、表現型は優性の遺伝子の形質のみが現れる。 ヒトのABO式血液型で、表現型がA型のヒトのなかにも遺伝子型はAAのヒトとAOのヒトがあり、表現型がB型のヒトのなかにも遺伝子型がBBのヒトとBOのヒトがあるのはよく知られている。