ペアルール遺伝子の活性化と擬体節の確立
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翅、平均棍、脚などの付属器官は特定の体節についている https://gyazo.com/c948965225ebabb1162b8185d937e33d
しかし、成長した幼虫で認識できる体節は、前後軸に沿った分節化の最初のユニットではない
2.21 擬体節はペアルール遺伝子の周期的な発現パターンによって分けられる
分節化の最初の目に見える徴候は、原腸陥入後の胚の表面に現れる一時的な溝
これらの溝が擬体節を規定する
一度擬体節ができると、それらは独立した発生ユニットとなり、特定の遺伝子の制御を受ける
その意味では、胚は断片的なモジュールが集まってできているものと考えることができる
擬体節は初め似ているが、それぞれはすぐにユニークな特徴を持つようになる
擬体節は、最終的な体節とはおよそ体節半分ほど位置関係が異なっている
つまり、各体節はある擬体節の後方領域と、その次の擬体節の前方領域から構成される
頭部領域の前方では、擬体節が融合したときに、体節の配列は失われる
それぞれのペアルール遺伝子は胚を横切る7本のストライプ状に発現し、各ストライプは1つおきの擬体節にあたる
ペアルール遺伝子の発現を、ペアルールタンパク質を染色することで可視化すると、胚に明瞭な縞模様が見える https://gyazo.com/1b83bd37e9d5f629a513f52f95038dff
ペアルール遺伝子のストライプ状発現の位置は、ギャップ遺伝子の発現パターンによって決定されている ここでは、繰り返しパターンではないギャップ遺伝子活性が、ペアルール遺伝子のストライプ状発現に変換されている
2.22 ギャップ遺伝子活性が、ペアルール遺伝子のストライプ状発現の位置を決める
ペアルール遺伝子は、1つおきの擬体節に相当する、周期性を持ったストライプ状に発現する
したがって、これらの遺伝子の突然変異は、1つおきの体節に影響を与える
ペアルール遺伝子のストライプ状発現は、細胞形成前の胚がまだ合胞体の段階で現れており、発現が始まったあとすぐに細胞膜形成が起こる 各ペアルール遺伝子は7つのストライプ状に発現し、それぞれのストライプは数個の細胞の幅を持つ
いくつかの遺伝子(例えばeve)では、ストライプの前方の縁は擬体節の前方境界に相当する
しかし、他のペアルール遺伝子の発現のドメインは、擬体節の境界をまたぐ
ストライプ状の発現パターンは徐々に現れる
eve遺伝子のストライプは最初不明瞭であるが、最終的には明瞭な前方の縁を獲得する
このタイプのパターンを一見すると、例えばモルフォゲンの濃度の波のような機構が根底にあり、その波の頂点でストライプが形成されるといった、周期的なプロセスを必要とすると思われることだろう したがって、各ストライプが独立に指定されるということが発見されたのは驚くべきことだった
2番目のeveのストライプの発現
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giant遺伝子の発現の前方のバンドだけが2番目のeveのストライプの指定に関与する
Bicoidタンパク質とHunchbackタンパク質はeve遺伝子を活性化するのに必要となるが、ストライプの境界を規定してはいない
境界はeveの抑制に基づいたメカニズムによって、Krüppelタンパク質とGiantタンパク質によって決められている
たとえBicoidとHunchbackが存在しても、KrüppelとGiantの濃度が閾値以上になると、eveは抑制される
ストライプの前方の縁は、Giantタンパク質の閾値濃度の場所に限局する
一方、後方の境界は同様にしてKrüppelタンパク質によって指定される
それとは対照的に、3, 4番目のeveのストライプは、前方領域における高濃度のHunchbackによって抑制される転写制御領域に依存している
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3番目のストライプは、Hunchbackの濃度が急激に落ち始めるところの、すなわち胚の中間あたりに沿うように発現している
一方、4番目のeveのストライプは、Hunchbackがさらに低いレベルとなる後方で発現する
3番目のeveストライプの後方の境界は、ギャップタンパク質であるKnirpsによって抑制されることによって区切られる ギャップ遺伝子がコードする転写因子による各々のストライプの独立した局在には、それぞれのストライプのペアルール遺伝子が、ストライプごとに、ギャップ遺伝子の転写因子の異なる組合せおよび濃度に応答することが必要 つまり、ペアルール遺伝子が、各々の因子に対する複数の結合領域を持ったシス調節制御領域の複合体を持つことが必要 eve遺伝子の制御領域に関する考察は、各々が異なるストライプの局在を制御する7つの独立したモジュールの存在を明らかにした
それぞれが単一のストライプの発現を決定する約500塩基対の制御領域が単離されている
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eve遺伝子は、遺伝子の発現を異なる部位で制御するシス調節領域のモジュール性の優れた例 活性化されると、胚の特異的な位置において遺伝子発現を誘導できる制御領域の存在は、発生における遺伝子活性制御の基本的な原理の1つ
この他の例がギャップ遺伝子や背腹軸に関わる遺伝子の局在化した発現でみられる
このような遺伝子の各々の制御領域が、異なる転写因子に対する結合部位を含んでいる
これらは一方では遺伝子を活性化させ、他方では抑制する
このような方法によって、ギャップ遺伝子活性の組合せが、各擬体節におけるペアルール遺伝子の発現を制御している
ペアルール遺伝子の発現開始とともに、胚は分節化する
この時点で胚は発現している転写因子の組合せによってそれぞれ特徴付けられる、いくつかの領域に分けられる
それらの転写因子には、ギャップ遺伝子、ペアルール遺伝子、そして背腹軸に沿って発現する遺伝子によってコードされたタンパク質が含まれる
ペアルール遺伝子によってコードされた転写因子は、転写活性によって、パターン形成が次の段階に進むための空間的な枠組みを作り出す
この枠組は、さらなる擬体節のパターン化、最終的な体節形成、体節アイデンティティの獲得を含む
まとめ
ギャップ遺伝子によるペアルール遺伝子の活性化は、結果として、前後軸に沿った胚のパターンを、領域的なものから周期的なものへと転換させる
ペアルール遺伝子は14の擬体節の境界を画定する
各擬体節は、狭いストライプ状に発現するペアルール遺伝子の活性によって規定されている
それらのストライプは、ペアルール遺伝子の制御領域に働く、ギャップ遺伝子がコードする転写因子の局所的な濃度により、一意的に規定される
各々のペアルール遺伝子は、交互の擬体節(あるものは奇数番目、あるものは偶数番目)において発現する
ほとんどのペアルール遺伝子は転写因子をコードする