卵形成における母性決定因子の局在
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発生の基本的な枠組みを確立するという、卵において局在する母性遺伝子産物の重要性を考えると、それらがどのようにしてそれほど正確に局在するのかということを考える必要がある これらの母性mRNAやタンパク質は、卵形成(oogenesis)(卵巣中での発生期)において、どのようにして卵の中に配置され、どのようにして正しい場所へ局在化されるのだろうか ショウジョウバエの卵巣内での卵の発生
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シストブラストはさらに4回の体細胞分裂を行い、それぞれの間に細胞質間橋を持つ、16個の細胞を形成する 濾胞細胞は卵の軸の形成に重要な役割を果たしている
卵形成の間、濾胞細胞は、卵母細胞の周囲で場所に応じて機能的に異なる細胞群へと分かれる
それぞれの部分集団は異なる遺伝子を発現し、それらが接している卵母細胞の部位に異なる影響を及ぼす
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ここで議論している発生段階のほとんどの間、卵母細胞は第一減数分裂前期に留まっている 2.13 ショウジョウバエ卵の前後軸は、卵室からのシグナルと、卵母細胞と濾胞細胞との相互作用により指定される
最初に観察が可能となる前後極性の徴候は、保育細胞に囲まれた中心位置から発達中の卵室の後方端への、卵母細胞の移動
この結果、卵母細胞は濾胞細胞に直接接触するようになる
この再配置は、卵室が形成細胞層から分離している間に起こる
再配置が起こるのは、卵母細胞の将来の後方端と、隣接する後方の濾胞細胞の間が優先的に接着するため
卵母細胞の前後極性は、先につくられた卵室の前方から、より新しい卵室の後方へ送られるシグナル伝達の結果 https://gyazo.com/29eaec3b4ca8453b9b591ea9ec9f2b65
これには2つのシグナル経路が関与しており、リレーのようにして働いている
最初に古い卵室の生殖系列シストが、幅広く使用されるシグナル経路であるDelta-Notch経路を通して、その前方の濾胞細胞にシグナルを発する このシグナルが濾胞細胞のいくつかを、前方極性を持った特殊化した濾胞細胞として指定する
これらの特殊化した濾胞細胞は次に、JAK-STAT経路と呼ばれるもうひとつの細胞内シグナル経路を刺激する受容体を介して、隣接する濾胞細胞にシグナルを送り、2つの卵室の間の柄の形成を誘導する 柄細胞からの未知のシグナルが新しい卵室を取りまとめ、卵室内の卵母細胞と後方濾胞細胞に接着分子のEカドヘリンを発現させ、これにより卵母細胞を後方の位置に固定する このようにして、前後極性が、ある卵室から次の卵室へと伝播されていく
しかし、最初に形成される卵室がどのように極性を獲得するのかはわかっていない
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卵母細胞の発生の初期において、gurken mRNAは卵母細胞の核に近い後方端で翻訳され、タンパク質の後方局在を生み出す
これは、卵母細胞の細胞膜を通過して分泌される
Gurkenは、濾胞細胞表面に存在している受容体タンパク質Torpedoを局所的に刺激することにより、末端の濾胞細胞に後方運命を誘導する https://gyazo.com/d839fc9e9983c2285663d332eea014b6
Torpedoを通じたGurkenシグナルへの応答として、後方の濾胞細胞はまだ未同定のシグナルを産生し、卵母細胞は微小管細胞骨格に再配向を誘導する これにより、卵形成のおよそ半ばには、ほとんどの微小管のマイナス端は前方、プラス端は後方を向くようになる 2.14 母性mRNAの卵の端への局在は、卵母細胞の細胞骨格の再配置に依存する
卵母細胞の細胞骨格の微小管の再配向とmRNAの適切な局在は、それ自体が卵母細胞の後方端に局在する、PARタンパク質として知られるタンパク質群に依存している これらのタンパク質は、他の機能もあるが、動物の発生の様々な状況において細胞の前後極性を決定することに関与している
微小管の再配向は、bicoidやoskarといった母性mRNAの卵のどちらかの端への最終的な局在のためには不可欠 bicoid mRNAはもともと、発生中の卵母細胞の前方端に隣り合う保育細胞でつくられ、そこから卵母細胞へと運ばれる
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発生中の卵がGurkenシグナルに応答した後、bicoid mRNAは、再配向した微小管に沿っておそらくはモータータンパク質のダイニンによって輸送され、卵の前方端という最終的な位置に移動する(図2.21左) 同様に、Oskar mRNAは保育細胞によって卵母細胞へ分配され、他の微小管セットを使ったキネシンによって、卵母細胞の後方端に向かって輸送される(図2.21中) これら双方の局在にはRNA結合タンパク質のStaufenが必要とされるが、このタンパク質自体は、卵母細胞の前方端と後方端での局在を観察することができる
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oskar mRNA分子の観察からは、これらはあらゆる方向に移動するが、後方端に向かって十分なバイアスがかかっていることが示されている
oskar mRNAとそのタンパク質の役割のひとつは、卵の後方端に生殖質をを集合させて凝集させること oskar mRNAの局在と生殖質の集合は、続くnanos mRNAの後方端への局在にも必要 2.15 卵の背側軸は、卵母細胞核の移動と、それに続く卵母細胞と濾胞細胞との間のシグナル伝達によって指定されている
卵の背腹軸の確立には、さらなる卵母細胞-濾胞細胞の相互作用が関与するが、これは卵母細胞の後方端が指定された後に起こり、前段階で再配向された微小管配列に依存する
卵母細胞の核は、微小管に沿って後方から前方境界へと移動する
Gurkenタンパク質がこの新しい位置で発現するが、おそらくこれは卵母細胞の他の場所から核の片側へ再配置されたmRNAからのもの(図2.21右)
局所的に産生されたGurkenは、隣接する濾胞細胞にシグナルとして働き、それらを背側濾胞細胞として指定する
したがって、核の反対側は腹側領域となる
腹側の濾胞細胞は、Pipeのような、卵母細胞の卵黄膜の腹側に沈着し、腹側の確立には欠かせないタンパク質を産生する そのためTorso-likeタンパク質は卵形成の間、卵の両端の卵黄膜にのみ沈着する
まとめ
ショウジョウバエの卵母細胞は、形成細胞層から連続的につくられる個々の卵室の中で発生する
形成細胞層は、卵母細胞や保育細胞を形成する生殖系列幹細胞や、卵母細胞を取り囲む体細胞性の濾胞細胞を形成する幹細胞を含んでいる
保育細部は卵母細胞に多量のmRNAやタンパク質を供給し、それらの一部は特定領域に局在化する
隣接する古い卵室からのシグナルにより、後方の濾胞細胞との接着性が変化し、卵母細胞は卵室の後方に位置するようになる
続いて卵母細胞は濾胞細胞にシグナルを発するが、これに対する応答によって卵母細胞の細胞骨格の再配向が起こる
再配向によってbicoid mRNAは卵母細胞の前方端に、他のmRNAは後方端に局在するようになり、これが胚の前後軸確立の始まりとなる
卵母細胞の背腹軸の確立もまた、卵の将来の背側において卵母細胞から濾胞細胞へ局所的なシグナルが送られることによって始まり、それらは背側濾胞細胞として指定されることになる
そして卵母細胞の反対側にある濾胞細胞は、直接的あるいは間接的に、腹側卵黄膜における母性タンパク質の沈着によって、卵母細胞の腹側を指定する
卵母細胞の両端の濾胞細胞は、卵黄膜における母性タンパク質の局在した沈着によって末端部を指定する