スキーマ
スキーム scheme (ドイツ語でシェマ)
膨大な知覚情報の中から、有意な情報を選別する知識構造。認知的な情報処理に指向性を促す。
条件による思考
外界の刺激に同じような活動が繰り返される場合、個体の中にその活動を作り出す一定の組織・構造がある。そのような活動の下地となる機能的な構造
青
スキーマの働き
・一致情報への選択的注意
・一致情報の記憶促進
・不一致情報の歪曲
・一致するような記憶の創作
スキーマ形成のプロセス
・第一印象で形成
・スキーマを用いた認知活動
・スキーマの働きによる形成された印象の補強、修正
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たとえば「太郎が金魚を買った」という文があったとする。すると、太郎が「買う」行為の主体であり、「買われた」対象は金魚だろうと考える。これは、買うというイベントの中で、金魚とか、太郎とかがどんな形で結びついているか、つまりその場面での役割を特定し、各々を関係づけることで整理したことになる。だから私たちは、「誰が金魚を買ったのか」、「太郎は何を買ったのか」という質問に答えることができる。さらに、私たちはその文から、「太郎がその金魚を所有している」、「太郎は支払いをした」、「太郎の所有するお金は減少した」、「店の金魚は減少した」など、文の中では明示されていないことがらを推論する。また、どこで買ったのかは示されていないが、おそらくそれは金魚屋だろうという推測も行う。
「買う」スキーマは動詞タイプのスキーマだが、むろん名詞タイプのものもある。先の文の中の「金魚」も「金魚」スキーマによりさまざまな組織化された情報が付け加えられ、豊かな推論を生み出すことが可能になる。特に名詞タイプのスキーマにとっては階層的な関係が重要な意味がある。
「金魚」スキーマはより抽象的なスキーマと階層的な関係を持つ。「魚」スキーマとの関係から水中で生活するとか、ヒレやエラがあるという魚類一般が持つ特徴を受け継ぐし、生物なのだから呼吸をするとか、代謝をするとかいった特徴も受け継ぐ。
類語
(思考の枠組みとしての)ステレオタイプ
参考
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社会的スキーマ
ある集団、特定のコンテキストで使われるスキーマ
Taylor, S. E. (1981). Schematic bases of social information processing. Social cognition, 89-134.
認知の歪みを引き起こすスキーマ
・勝ち負けスキーマ
・上下スキーマ
身分スキーマ
階級関係スキーマ
スキーマ療法より
・見捨てられ/不安定スキーマ
・不信/虐待スキーマ
・情緒的剥奪スキーマ
・欠陥スキーマ
・社会的孤立スキーマ
・依存/無能スキーマ
・危害や疾病に対する脆弱性スキーマ
・巻き込まれ/未発達の自己スキーマ
・失敗スキーマ
・権利要求スキーマ
・自制と自律の欠如スキーマ
・服従スキーマ
・自己犠牲スキーマ
・否定/悲観スキーマ
・感情抑制スキーマ
・厳密な基準スキーマ
・罰スキーマ
・評価と承認スキーマ
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「上から目線」を口にする人たちを見ていると、自分が敗北者であり下位に位置づけられているといった意識が強いように思われる。「上—下」や「勝ち—負け」といったスキーマを持たない人は、「上から目線」というものがあまり気にならず、過剰に反応することはない。
どんなスキーマを持っているかは、その人が他者や自分自身をどのように評するかを観察すればわかる。
「彼は非常に優秀な人物で……」
「あの人は頭の切れる人間で……」
「自分にももうちょっと有能さがあれば……」
このようにコメントすることが多い人物は、「有能さ・優秀さ—無能さ」のスキーマを持っていると見なしてよい。
「あの人は人間的に大きな人で……」
「彼は若い割に人格的にできた人間で……」
「私はいくつになっても人間的に未熟で……」
このようにコメントすることが多い人物は、「人間籍成熟—未成熟」のスキーマを持っているとみることができる。
「彼は同期の中で出世頭で……」
「あの人は一生懸命やっているのに、なぜか出世運がなくて……」
「私は出世にはまったく縁がなくて……」
このようにコメントすることが多い人物は、「出世する—出世しない」のスキーマを持っている人といえる。