書くことについて
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これまでの文章読本は、書く内容があって、それを正しい表現で書くための指南書でした。実際に重要なのは、まず、書く内容を見いだすことです。本当は、「これを伝えたくてしようがない」ということがあって、文章を書くのですが、実際にはそれが逆になっていることが多いのです。つまり、「文章を書く必要があるが、何について書いたらよいのか分からない」という場合が多いのです。したがって、まず重要なのは、メッセージ、主張、考え、要求、指摘、発見などをどのようにして見いだすか、ということです。そして、アイディアを成長させ、それを組み上げていくことです。書くことについて 野口悠紀雄 (pp.22-23). Kindle 版. ツイッターのように140字では、まとまった考えを伝えることはできません。まとまった考えを伝えるには、最低限でも、一定の構造を持った1500字程度の文章を書く必要があります(これについての詳しい説明は、第5章で行ないます)。これは、訓練をしないとできないことです。手紙を書いたり日記をつけたり、ツイートをするために、特別の訓練は必要ありません。書くことについて 野口悠紀雄 (p.21). Kindle 版. ツイートを書くのは簡単です。ツイートの文章には「構造」がないからです。これは、いわば単細胞生物のようなものです。書くことについて 野口悠紀雄p.114 では、人間が文章を書こうなどと努力する必要は、なくなりつつあるのでしょうか?私は、そうは思いません。なぜなら、AIに文章を書かせる仕組みは、「創造」とは言い難いものだからです。それは、これまで書かれた多数の文章をコンピュータが覚え込み、その一部分ずつを切り抜いて、組み合わせるだけのものです。素になる文章は、人間が書いたものです。それがなければ、AIが文章を作成することはできません。書くことについて 野口悠紀雄 (p.25). Kindle 版. また、単なる惰性もあります。実際、「音声入力を人前でやるのは恥ずかしい」という人が多いのですが、それは、単に慣れていないからというだけのことです。その証拠に、携帯電話なら、多くの人が何の抵抗もなしに人前で話しています。新しいことをやるのは、どんな場合にも抵抗があるのです。書くことについて 野口悠紀雄 (p.41). Kindle 版. 人間は、新しいものに対しては本能的に警戒心を持ちます。そして「敵」だと考えて身構えます(人間だけでなく、動物一般がそうです)。新しい道具の場合もそうです。それに対して警戒心を持ち、「敵」だと考えると、反感を持ち、自分から進んで使うことはありません。したがって、ますます離れていくことになります。逆に、何かのきっかけで、新しい道具が自分にとって利益をもたらしてくれるということが分かると、それをますます使い、仕事の能率が上がり、さらに使っていく、という好循環が起きます。つまり、力強い味方になるわけです。考え方を「敵」から「味方」に転換しただけで、このような大きな変化が起きるのです。書くことについて 野口悠紀雄 (pp.43-44). Kindle 版. 「何について書くか?」、「何を目的にするのか?」という「テーマの選択」、あるいは「目的の選択」こそ、最も重要です。これは、創造活動の第1歩です。適切なテーマが見つかり、問題を設定できれば、仕事は8割はできたといっても過言ではないでしょう。物書きにとって、「テーマ」とは金鉱のようなものです。それをうまく探し当てられれば、そこを採掘することによって、大量の金を掘り出すことができます。書くことについて 野口悠紀雄p.50 需要が大きいものに対応することは必要です。しかし、それだけでなく、自分がどのような供給ができるかを考えることも重要です。この両者の調和が必要なのです。書くことについて 野口悠紀雄p.53 テーマを見いだすための最も確実な方法は、「仕事を続けること」です。仕事を続けていると、その中から新しい疑問が生じ、新しいテーマが見つかるのです。これを「クリエイティング・バイ・ドゥーイング」ということにしましょう。書くことについて 野口悠紀雄p.56 そうではなく、「何かのテーマで仕事を始めていろいろ調べたところ、別のもっと適切なテーマがあると分かり、実はそれが本当の金鉱であることを見いだし、テーマをそれに変更して仕事を進める」という場合のほうが多いのです。つまり、テーマも、試行錯誤でしか見いだせない場合が多いのです。書くことについて 野口悠紀雄p.57 したがって、必要なのは、「とにかく始める」ことです。準備ができてから始めるのでなく、準備がなくとも始めるのです。多くの人は、テーマが見つかってから動きます。その順序を逆転させることが必要なのです。「とにかく何か書いてみる」、「すると成長する」。このことを、私は、毎日実感しています。書くことについて 野口悠紀雄p.57 アイディアを生み出す環境設備として第3に重要なのは、集中できる時間帯を確保することです。逆にいえば、1日中来客を期待しているようでは、アイディアが浮かぶ暇はありません。「スキマ時間の活用」ということがよくいわれます。確かにスキマ時間でできることも多いのですが、本格的なアイディアの製造のためには、スキマ時間だけでは不十分です。一定の時間帯を集中的に用いる必要があります。書くことについて 野口悠紀雄p.88 ここで対象にしているのは、アイディアの断片、あるいは、成人していない子供段階のアイディアです。表現も適切でないかもしれないし、別のメモに書いてあることと重複しているかもしれません。このような問題があるにせよ、とにかく書き留めるのです。これが「アイディア農場」です。アイディアの「たね」を殺さずに、芽を出せるようにする仕組みだと考えてもよいでしょう。あるいは、「家なき子」を迷子にしないようになんとか手をつないでおく仕組みだと考えてもよいでしょう。書くことについて 野口悠紀雄p.90 音声認識で 書き入れていくことにすれば、本を書くのは机に向かって行うのではなく、歩きながら、あるいは寝そべったままで行うのが一番よいことが分かります。それらを編集するときのみ、机に向かってPCを起動すればよいのです。 書くことについて 野口悠紀雄p.95 「作物」とは、これらいくつかの断片を関連付け、まとめ上げて作った1つの論考です。「たね」から「作物」を作るのが、「アイディア農場プロジェクト」で行おうとすることです。なお、このようにまとまった「作物」のことを、第5章では「基本ブロック」と呼んでいます。これは、論述を公表する場合の最小単位です。基本ブロックはどの程度の分量でしょうか?この大きさがどの程度のものかは、第5章で改めて考えますが、独立した主張や指摘になるためには、140事では少なすぎます。最小限500字程度が必要です。書くことについて 野口悠紀雄p.98 「たね」=「考えの断片」とは、短ければ150字程度のものです。「作物」=「基本ブロック」とは、まとまった論考です。最低500字程度。普通は、1500字程度です。いくつもの「たね」を関連付けて「作物」を作るのが、「アイディア農場」の目的です。書くことについて 野口悠紀雄p.105 以上のことから、1冊の本は、およそ100個程度のブロックを組み上げることによって構成されることになります。 仮に1日1つの基本ブロックを作るとすれば、3ヶ月少々で1冊の書籍ができることになります。書くことについて 野口悠紀雄p.111 ・順序づけ
・グループ化
・重複の排除
・矛盾の排除
日本国憲法の内容は、高邁な理想を謳う素晴らしいものですが、文章は最低です。おそらく、英語の原文を急いで翻訳したからでしょう。日本国憲法と同じレベルの悪文は、インターネット上に溢れています。書くことについて 野口悠紀雄p.146 「ふれあい」は、地方公共団体の役人が大好きで、新しくできる公共施設の長「ふれあい」だらけになってしまいました。例えば、その当時、私が住んでいた街にできた人道橋は、「ふれあい橋」でした。この橋自体は好きだったのですが、橋を通るたびに誰かに触られそうな気がして、気味が悪い思いでした。ある町では、「ふれあい団地」の中に「ふれあい広場」がありました。 その広場では、人々が毎日集まって触り合っているのだろうかと、想像するだけで、気色が悪くなりました。(コロナ時代には絶対に許されないことです)。「ふれあいプール」というのもあって、これだと、衛生上の問題も聞くされました。それどころではありません。「ふれあい小学校」があるという話も聞きました。書くことについて 野口悠紀雄p.166