アイデアを育てる
アイディアを生み出す環境設備として第3に重要なのは、集中できる時間帯を確保することです。逆にいえば、1日中来客を期待しているようでは、アイディアが浮かぶ暇はありません。「スキマ時間の活用」ということがよくいわれます。確かにスキマ時間でできることも多いのですが、本格的なアイディアの製造のためには、スキマ時間だけでは不十分です。一定の時間帯を集中的に用いる必要があります。書くことについて 野口悠紀雄p.88 ここで対象にしているのは、アイディアの断片、あるいは、成人していない子供段階のアイディアです。表現も適切でないかもしれないし、別のメモに書いてあることと重複しているかもしれません。このような問題があるにせよ、とにかく書き留めるのです。これが「アイディア農場」です。アイディアの「たね」を殺さずに、芽を出せるようにする仕組みだと考えてもよいでしょう。あるいは、「家なき子」を迷子にしないようになんとか手をつないでおく仕組みだと考えてもよいでしょう。書くことについて 野口悠紀雄p.90 結局のところ、 私が切実に欲していたのは、 デジタル情報保管庫ではなかった。 そうではなく、デジタルツールを使った「考えの育て方」 だったのだ。 しかし、私が一番最初に出会ったデジタルツールであるEvernoteがデジタル情報保管庫であったために、 その後のツールの使い方も同様の方向を目指してしまった。また、ヴァネヴァー・ブッシュが提案したメメックスも、 思考ツールというよりは情報検索装置であった。 よって、 メメックスを求める気持ちもデジタル情報保管庫へと向かっていった。 さらに、 発想法と思考法の混同もあった。 もちろん、 共に頭を使った作業であり、 知的労働なのだから重なる部分はあるにせよ、細かく見ていけばその二つには差異がある。 当然、 その差異は方法論においても違いを生むのだが、 そのことに私は気がついていなかった。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 45ページ もし「考える」ことではなく、情報を貯えることが目的ならば、 階層構造によるカテゴリー化やハッシュタグによる分類は必須だろう。 そうやってきれいに情報を取り出せれば誰もがハッピーになれる。 しかし、 多すぎる情報や関連性の低い情報が表示されることは「考える」 行為には有効ではない。 ハッシュタグできれいに分類し、その属性を少しでも持つ情報がすべて表示されたところで、 「考える」こと役には立たないのだ。むしろ邪魔になることが多いだろう。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 ・88ページ