物語論
物語は情報を配列し、出来事を理解する論理の一つで物語の文法、物語の構造と呼ぶ。。また、物語の文法は創作に応用可能だ。物語論は映画、文学、アトラクション等で工学的に実用された歴史がある。
村上春樹自身の小説を物語のユニットの組み合わせだと英語の構文に似たイメージで説明する。
僕が小説でやっているのは、専門用語を使わずに普通の言葉を組み合わせた物語のユニットを、記号的に扱うということです。これなら何も覚えなくていいから、わかりやすいですね。 村上春樹 2006 朝日新聞社
論理は 議論・思考・推理などを進めていく道筋。思考の法則・形式。論証の仕方。物語の中にある道理・また。事物間の法則的な繋がり。
物語のユニットは物語を構成する単語に値する最小単位で、モチーフ、モチーフ素、機能、物語要素などと呼ぶ。また、記号的に扱うとは物語りのユニットを記号として扱うという意味。
村上春樹の小説=物語りのユニットa+物語りのユニットb+物語りのユニットc(物語りの文法に従って接続させる。)
北米の民俗学者アラン・ダンデスの物語の文法のようなものが使われる。他方、ソビエトの民俗学者ウラジミール・プロップが示したロシア魔法民話の31の構成要素をアメリカの文化人類学社ピエールアマンダがアルゴリズム形式で示すなどがある。
民話の構造を記述するためのFDLもあるため民話がプログラムで記述可能な論理とわかる。
スターウォーズ初期三部作は物語り論の援用でシナリオが作られ、鯨の胎内という物語りのユニットが用いられた。
ジョセフ・キャンベルの単一神話論で世界中の文化圏の英雄神話は全て共有の原型のバリエーションであるという思想感。キャンベルの理論は1980年代のアメリカでハリウッド映画、ファンタジー小説、日本では文学に応用された。例えば、STAR WARSや羊をめぐる冒険、ドラゴンランス戦記など。1.冒険への召命、2.召命の辞退、3.超自然的なるものの援助、4.最初の境界の越境、5鯨の胎内の構成だ。
旧約聖書のヨナ書やヘラクレス、魔女の宅急便(
藁の中に落ちる)も同様
リテラシーとしての物語論において、背景が複雑で多様な価値の対立する難解な事件ほど物語としてわかりやすく整理ができる。その物語は、は事件を理解する上で必要な情報や考え方を不要にする。だから一見わかりやすい、面白いだけの学ばない怠惰に終わらせずリテラシーを高める必要がある。
わかりやすい=理解できたではない。ta.icon
現実の解釈や社会不安に物語が実装されてることで都市伝説が出来上がる。
都市伝説はSNS上のニュースや投稿に近い特徴を持つ
災害時の都市伝説には特に社会的な偏見や差別が反映しやすく、事実と混同される場合も少なくない。
ロラン・バルトは新聞を、記事の内部に書かれたことだけで理解できる記事の雑報と、その背景などの記事の外側の多様な繋がりの中で理解できる記事を情報と読んだ。都市伝説は雑報に近いと言える。
殺人事件が生ずる。政治的なものなら、情報の一つとなる。そうでなければ雑報の一つとなる。
ロラン・バルト 1972 雑報の構造エッセ・クリティック
柳田國男 世間話の研究 1931
なんだか無暗に内証話ばかりが発達して居るようである。...是を正しい歴史にしていく期間が、備わっていない結果である。
口裂け女 1979年に全国的に流行した都市伝説。
共時的、通時的広がりを確認する。
国際日本文化研究センター「怪奇・妖怪伝承データベース」には59例の口裂け女の要約が収録される。 https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB/
民俗学者の野村純一は口裂け女の都市伝説を毎年学生から受け取り定点観測で研究をしていた。物語の構造に従って変化している。口裂け女の場合は呪的迷走と3の法則に実装により現在の形になった。
都市伝説や噂、流言飛言は社会的な不安、物語の論理で構成され、差別や偏見を実装し成立する。
オルレアンのうわさ エドガール・モラン 1969年フランスでの事例は、ユダヤ人の所有している店で女性がいなくなった噂話。
1.都市化現象と、ユダヤ人差別。そして遠野物語の女性神隠しから近年の都市伝説など女性がいなくなることが男女ともに興味をそそられるトピックで女性誘拐(物語の文法)が使われた。
1231年にヨーロッパにおいてハンセン病流行の折もユダヤ人が井戸に毒を入れたという流言が発生似たように関東大震災の折に流布した朝鮮人ガイドに毒を入れて回るという都市伝説。流言飛語やめようね。
都市伝説が文学になったケースとしては、六部殺しは階段としての流布から、ラフカディオ・ハーン、夏目漱石、徳田秋声らによって文学作品化された。
当時の社会的な変化や女性の失踪など世間が飛びつく話や怪奇現象とも言える原因不明の災害や現象に対して人々の噂話や偏見などから流言が生まれるのではなかろうか。分かり易話、納得した話は物語論に於いて、構造が良いだけで正しい情報とは限らないことを肝に銘じようと私は考える。そして特定の集団行為へ結びつくリスクも考えて行動をすべきである。 ta.icon
近世の人形浄瑠璃・歌舞伎には世界というコモンズから手稿というオリジナルなものを立ち上げる仕組みがある。この世界と趣向モデルは大河ドラマ、二次創作、メディアミックスなどの大衆文化、フォークナー、ラブクラフトらの文学など多くの分野の創作方法の解釈のモデルになる。仮名手本忠臣蔵など、舞台の時代が変更されている。
世界とは人形浄瑠璃・歌舞伎の送り手と受け手が共有する作品のキャラクターおよび背景世界のことで、世界綱目という近世成立の歌舞伎・人形浄瑠璃ようのマニュアルには142の世界が登場する。「今度の世界はなんだい」といった会話があった。
世界定め 新春興行の「世界」を選ぶ儀式
18世紀半ばの歌舞伎では毎年11月に脚本の責任者「立作者(たてさくしゃ)」、劇場経営のトップ「座元」、出演者代表の「座頭」が集まって翌年最初の興行「顔見世」にどの「世界」を上演するか決める「世界定め」が行われる。
その様子を描いた先の図には「立作者恵方にむかって筆をとることなり」とある。
出典:笹竹里作・歌川豊国画(1803)『絵本戯場年中鑑』東京都立図書館
https://archive.library.metro.tokyo.lg.jp/da/detail?tilcod=0000000005-00189669
近世の歌舞伎・人形浄瑠璃では同一の世界からいくつもの趣向(演目)を創出するという創作論に基づく戯曲が作られた。小栗判官の世界でも仮名手本忠臣蔵と同じ赤穂事件を趣向とすると鬼鹿無佐志鑑になる。
入我亭我入
歌舞伎随筆。入我亭我入著
入我亭我入(にゅうがていがにゅう)『作者式法戯財録』(1801)が「世界」と「趣向」の関係を既存の世界線「竪筋」に新しいキャラクターやアイデアを組み込む「横筋」の概念で説明、また物語の展開を「景様(ケイヤウ)」「頂上(ヤマ)」「揺(ユスリ)」「大曲(オオクルワ)」「鎌入(カマイレル)」と言う歌舞伎独特の物語論で説明した。
メディアミックスのロードス島戦記
漫画などの二次創作、コミケなども世界と趣向の関係
ウィリアム・フォークナーからJRRトールキンなどは世界の創造という観点から彼らの芸術を理解し、さまざまな異なるキャラクターを支援できる環境を作った。
アメリカのメディア理論家ジェンキンスは作家の中には一つの架空の世界を想像、その中でさまざまな物語を創出する世界と趣向に近い創作方法を持つ作家がいることを指摘した。
1920年にはクトゥルフ神話があり、アメリカの作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトによるほわー小説群を世界にクラーク・アシュトン・スミスやロバートブロックなどの作家たちが趣向を執筆、現在では日本の作家を含め、小説。コミック、アニメが創作されていて、この神話をテーマにしたテーブルトークのクトゥルフ神話TRGPにおいても多くのゲーム用シナリオやプロがいる。
語りのモデル
モノローグはダイアログに近く単独作者による独白。一方でダイアローグは単なる合いの手ではなく受けての反応がフィードバッグされ物語の生成・展開に影響を与える。
ルイス・キャロルの不思議の国のアリスは、アリス・リデルにA・ミルンはクリストファーに聞かせた話が元で聞き手の子供の反応が物語に大きく作用したと言われる。シンローグは。火回しや、段々語りや物語合など送り手・受け手が交代し入れ替わり物語る。そして、ポリローグは雑踏の声、SNSのタイムラインなど色々な人が勝手なことを言っている状態を指す。
村上春樹の羊をめぐる冒険では昔話の形式を持つ。( 始まりの言葉)
ライトノベルズとRPG
ロードス島戦記がTRPGの実演の記録から生まれ、ライトノベルズの起源の一つになる。
神話製作機械論 安田均 1987
文学は人生ではなく神話であると言われて久しい。では、この神話を造れる機会があれば、それはまさしく文学製造家=作家ということになるのではないか。ここで取り上げるソフトアドベンチャー・コントラクション・セットはそうした機会作家の夢を部分的にではあるが感じさせてくれる異色の作品だ。
神話をRPGするのが当時は画期的だった。神話が神話だった頃の話といえよう。ニーチェの前てきな。 ta.icon
ゲームブック ブレモンの物語理論
分岐する物語として二分法的選択の系列のセリー(物語のメッセージ 1975 クロード・ブレモンなど)や可能世界の多様化(マリー・ロール・ライアンの可能世界の多様化の選択された物語と、選択されなかった物語)
カードゲームによる物語創作ごっこ
ファンタジーの文法 1978 ジャンニ・ロダーリ
プロップの31の機能を絞った。
タロットカードで物語る。組み合わせ的物語機械としてタロットが使われた。 宿命の交わる城 イタロ・カルヴィーノ
偶然性と物語としてストーリーキューブスがある。
フランスのカードゲームRPGの出版社が販売しているローリーズストーリーキューブス
占星術とスーリオの物語理論
源氏物語が占星術に従って章立てやキャラクターの運命が定められているという説がある。スーリオは物語の中で作中人物に働く力を6つの星座に喩えた。二十万の演劇状況
フィリップ・K・ディックは小説『高い城の男』の執筆過程において、物語の展開を決定する際に実際に易経(I Ching)を用いて占いを行っていたことで知られている。作中では登場人物ジュリアナ・フリンクがホーソン・アベンゼンに会うべきかどうかを占いによって決める場面があるが、ディック自身も同じ問いを立てて易を引いたという。得られた卦は「知らせるべきだ」というものであり、それによって彼はジュリアナをアベンゼン邸へ向かわせる展開を採用したのである。
この手法は単なる偶然や演出ではなく、ディックにとっては創作と現実の境界を越える実践的行為であった。彼はしばしば「作者である自分もまた登場人物の一人として、運命に導かれている」と語っており、易経の占い結果を物語の中にそのまま反映させることで、作者と登場人物の意思決定を一致させたのである。このような構造は、彼の作品全体に通底する「現実と虚構の入れ替わり」「自由意志と決定論の交錯」という主題を強く象徴している。
滝沢馬琴によるうつろ舟の蛮女
きしりゅうりらん
貴種流離譚と英雄誕生の神話に共通な「小船や箱に入れられ流される」というモチーフは「古事記」「日本神話」のヒナコ神話に見られる。
マルト・ロベール 起源の小説と小説の起源
ファミリー・ロマンスが小説にする時、血統妄想的と貰い子妄想的がある。
折口信夫のファミリー・ロマンス