10000ページ書けるし書いても破綻しないScrapbox
本記事はいわゆるポエムになります。
本人は至って真面目ですが、気軽に読んでお楽しみいただければと思います。
https://gyazo.com/486438bbf47110ff651504e111021a9b
これが私のScrapboxである。
朝起きてから夜寝るまで、私はいつもここにいて、ページをこね続けている。
No Scrapbox, No Life.
私のような人間にとってScrapboxは救世主である
私は書くのが好きである。
頭が悪いので、書かないとカバーできない
自分が書いたものをどんどん太らせていくのが楽しい
そんな私を満たせる書き物ツールは今までなかった。
ツールには以下の限界や仕様があるからだ。
1000ページの壁
1000というボリュームになってくると整理が追いつかなくなる
検索も物理的に時間がかかるようになる
一覧も物理的に大きく、読む気が失せる
同じようなことが重複してしまう
アップロード、ダウンロード、保存といった手間もばかにならなくなる
エクスポートできない
必要性
使っているサービスが死ねばデータも消えるため、エクスポートはMUSTである
また、他のサービスに流し込むためにできるだけ plain な形式が良い
文書公開手段のデファクトスタンダード(異論は認める)である Markdown は扱いたい
が、ツールによってはサポートしていなかったり足りなかったりする
Notion
はてなブログ(markdownで書いていたとしても HTML 形式になってしまう)
導入ハードルが高い
特にローカルでIDEや各種ツールを駆使して整備する「ぼくがかんがえたさいきょうのかきものかんきょう」は、構築自体がきつい
慣れてないOSでは同等の環境をつくれなかったり(sta.iconの場合、Windowsに慣れてるがMacには慣れてない)
会社だと承認まわりの事情で採用できなかったり
結果、場所に応じた環境がn個点在することになる
windows → ぼくがかんがえたさいきょうの
mac → ぼくがかんがえたさいきょうの、はちょっと無理なので少しゆるめ
会社 → かなりひどい(会社で使えるツールの延長で整えられるレベルに終始する)
公開しづらい
公開しやすいものは書きづらい
例: はてなブログ
いちいちログインして、フォームにテキストを入れて、カテゴリ選んで保存して……みたいなことが必要
書きやすいものは公開しづらい
例: ローカルでmarkdownを書く
整えた後も毎回pushしないといけない(そもそもgit使わないといけない)
Scrapboxは、明らかに頭一つ飛び抜けているツールだと確信している。
上記を全部かなりのところまで解決できてしまう。
Scrapboxとは何者なのか
主に個人または少人数同誌編集(コラボレーション)に特化した、現時点で頭一つ飛び抜けているWikiである。
どこから解説するか迷うが、まずはデータ単位から行ってみよう。
projectの中にpageをつくるという形になっている。
project
まずprojectという箱をつくり、この中にページを入れていく
projectはシンプルなあり方に設計されている
projectは招待制であり、入った者は全員が等しい権限を持つ
誰でもページを自由にCRUDできる
このページは管理職層だけ見せるようにする、みたいな細かい制限はない
projectはpublic(インターネットフルオープン)かprivate(招待された人しか見えない)の二択
基本的にprivateだが、一部ページだけ公開したい、みたいな細かい制御はない
page
ページは独自の記法で書く
Markdownよりもはるかに書きやすい
そもそも見出しがない
リンクも[]()じゃなくて[]
箇条書きに至っては -とか *とか -とか要らなくて、スペース打つだけですぐ書ける
https://gyazo.com/5f8f3cb412e149692114fde752cbeaea
箇条書きでサクサク書けるから情報を列挙しやすい
[このように囲むだけで]リンクになる
ページとページがリンクでつながることになる
つまりこんなイメージだ。
https://gyazo.com/d692c8d35fdeeb1e9ae90d87fd4298b0
続いて、このようなあり方を支える機能やコンセプトを挙げる。
強力な検索と補完
ScrapboxはiPhoneフリック入力発明者でもある増井さんが発明したものだ
そしてScrapboxを運営するNota社のCTOでもある
だからなのか、検索まわりは非常によくできている
1文字違いのあいまい検索もされるし、入力補完もされる
https://gyazo.com/65ff6ded913ee6a970401b86736c6e83
入力補完している例
もちろん動作も高速でストレスがない
強力な一覧ページとソート
まず一覧を縦横の二次元で表示してくれるので情報量が多くて探しやすい
https://gyazo.com/a79e6352c8d0b225e9bf094938dcc1b7
画像もプレビューされるので視覚的にも探しやすい
ソートが強いのも魅力
date modified(最近更新した順)はよく使う
date last visited(最後に訪れた順)は、他人がどのページを見たかがわかって面白い
https://gyazo.com/6288d32c15f2dd149309e5ce09a559d1
情報を階層で管理しないということ
人間に階層を扱える能力はない
Scrapboxはそれをネットワーク構造で解決した
まず、Scrapboxでは、ページはリンク構造で繋がっている
人間の思考もネットワークなので、この構造は実は相性が良い
そして上述のとおり、強力な検索と俯瞰を持っている
これにより、
1: 俯瞰や検索にて、「リンク構造で繋がった島の "一部"」にアクセスする
2: 島の一部から島内を(リンクを辿ることで)辿り、目的のページにありつく
という二段階方式で目的のページにありつくことができる
そんな上手くいくのか?と思うかもしれないが、いくのである
マジで上手くいく
笑うレベル
ただし大前提として、1の島(ページをつくることとリンクをつけること)は自分の手で行う必要がある
自分の手で行うことによって、自分に馴染んだページやリンクができあがる
この「いちいち自分でやる」ことが超重要
これが必要だからこそ、Scrapboxでは自動投稿の類の一切をサポートしていない
箇条書きベースで情報を書くということ
このページを見てお気づきだと思うが、Scrapboxは箇条書きを積極的に推奨する
なぜなら情報を記述しやすいからだ
詳しくはScrapbox開発者のshokai.iconさんが言語化されている
主な利点は二つある
1: 余計な装飾や長文を省いて、端的に記述できること
2: 行指向で書けること
特に2:が大きくて、複数人コラボレーション時に差し込みやすい
良い天気ですね~sta.icon
そうですか?y1.icon
どこ住んでます?関東じゃないんでしたっけ?sta.icon
沖縄ですy1.icon
初耳sta.iconuser2.icon
↑ こんな風に自分の意見をぶら下げることができる
これによりチャットもできたりする
実際、コミュニケーション用途のコミュニティが成立している
要するに階層を捨ててネットワークにしたことと、箇条書きベースで行指向的にしたことの二つが革命的である。
(細かいアクセス制御など「非本質的で」「しかも凝るとハマりがちな部分」を捨てているのも潔い)
10000ページ書いても破綻しない
Scrapboxは脱階層しているおかげで、10000ページ書いても破綻しない仕上がりになっている。
実際、10000に届きそうな私はまだまだ破綻していない。
もちろん、私とて10000に近いページの全てを覚えているわけではない。
むしろ全然覚えていない。
ただ、ページ一覧から眺めたり、検索してみたり、リンクを辿ったりしていればすぐに思い出せる・辿り着ける。
また、日頃からずっと書いたり微修正したりしているので、どんどんと馴染んできている。
馴染めば馴染むほど、自分の言葉でスラスラ繋がっていく。
たとえば上記のリンクについては、「あ、このprojectのページ数についてまとめたページは以前書いたぞ」「たしかpageという英語を入れていたはず」「あと俺はペースって言葉も使うはず」「たぶん補完でpage ペースとか打てばすぐ出てくる」……で、で、実際にやってみると
https://gyazo.com/3e5c88f27a9636b8c2e58048d103269c
↑ こんな感じですぐに引っ張ってこれた。
(余談だが、これですぐ引っ張ってこれる検索アルゴリズムと素早さも、Scrapboxだからこそだ)
これも私が日頃からここを触り、書き、こね続けているからだ。
自分の言葉で書き、自分の思考でこねまわし、それをまた書いて反映する――
そんな営為を繰り返すことで、ここは私の、そう、「第二の脳」とも言うべき状態に近づいている。
どうせお難しいんでしょう?
意外とそうでもない。
少なくとも Office 製品や Markdown よりはかんたんだし、大学の研究室や高校の授業で使われている事例もある。
(もちろん文字入力のハードルはあるけれども)たぶん中学生でもすぐに使えるレベルだと思う。
嘘だと思うのなら使ってみると良いだろう。
個人の非営利利用なら無料だ。Googleアカウントがあれば、もうprojectをつくれる。
privateなprojectを一つつくって、自由にあれこれ書き込んだり、[これでくくって]リンクを入れたりしてみると良い。
一人で、好き勝手に書いて貯めていく……くらいなら、難しくないはずだ。
※ちなみに、難しいのは複数人が使うツールとしてどう使うかという話だが、それはツールが何であれ難しいことなので別にScrapboxの問題ではない。
sta.iconの活用事例
ここからは私ことsta.iconの活用事例を見ていく。
一言で言えば、私は「何でも詰め込んだ public project」を使っている。
(皆さんが今見ているここです)
日々の振り返りとして
読んだコンテンツの記録として
ちなみにアニメも「読んだ」としているが、これは意図的である
ラノベとマンガが「読んだ」なので、揃えてしまってことでそうした
これがsta.iconにとってはわかりやすいのでこれでいい
自分用なのだから自分なりにカスタマイズすればいいのだ
普段の研究として
私は仕事のやり方に関心があり、日々色んな概念や手法を考えたりしている
そのあたりのノートも日々ここで取っている
2021/12/03 現在では以下がホットだろうか
趣味の日記やコンテンツ公開として
私はダンスラというダンスゲームが好きで、遊んでいる その日記や成果もここで公開していたりする
最近こんなのもつくった
自分用の振り返りにもなるし、いわゆる自慢みたいなこともできて気持ちがいい
誰も見てないだろうけど、それでもいいのだ
言い忘れたが、Scrapboxは「情報とコラボレーションに集中するため」に、あえていいねなどの承認欲求的機能がない
しかし公開はできるので、「そういうのに乱されず緩く満たせる」という器用な満たし方ができる
調べ物として
例
リンク張って、引用書いて、画像張ってといったこともかんたんにできるので、調べ物にも最適である
ただし引用などは権利にも絡む(引用であることが壊れないような引用の仕方をする必要があるとか)ので、private projectで行う方が楽ではある
privateだと自分にしか見えないので、そういうの気にしなくてもいい
緩く物申すために・公開するために
人には物申したい欲求があると思う
しかし直接当人にぶちこむわけにはいかないし、手元で書いて済ますのも物足りない
Scrapboxは良いバランスになる
例
上述のとおり、Scrapboxは公開してもあまり人に見られないので、気軽に物申す系のことも書ける
物申したい記事やツイートを引用して、そこに自分の意見をぶら下げればいい
(もちろん、だからといって何書いてもいいわけじゃないですsta.icon)
ただ、なんていうんだろう、積極的に見せたく・見られたくはないけど、公開はしたいという微妙な機微に応えることができるというか。
それもTwitterのような短文ではなく、とことん長文を書くことができるから気持ちいい。
sta.iconはダシにすると呼んでいるが、よく他の人の記事やツイートを取り上げて自分なりにこねて遊んでいる (もちろん何書いてもいいわけじゃないので、見られても大丈夫なように)
……
長くなるのでこの辺にしておくが、とにかく何でも書いている。
そしてn通りの楽しみ方や使い方ができている。
私は何かを調べるときもここに書くし、研究のときでも書くし、何なら趣味の小説創作のときでも書く。
毎日の振り返りでも見ているし、ニュースを見たりエゴサーチしたりするときも(ここにまとめているリンク集から)辿ったりもする。
Scrapboxは、詰め込めば詰め込むだけ使い道が増える基地のようなものだと私は思っている。
10000ページユーザーが見る世界
https://gyazo.com/91cd8cbf4d21dea40102ab05df969174
2021/12/03 08:26:50 現在で 9690 page
私のprojectはそろそろ10000ページに至ろうとしている。
ヘビーユーザーの一人と言えるだろう。
ここからは、そんなsta.iconが、Scrapboxをガッツリ使い続けることで得たものや見ている景色などを雑多に取り上げてみたい。
とにかくすぐ見つかるようになった
私生活から思考までほぼすべてをぶちこんでいるので、とにかくすぐに目的の情報が見つかってくれる
私のデジタル人生歴は短くないが、ここまで快適なのは人生史上始めてだ
一日中こねる生活が手に入った
一日中ここをこねていても退屈しない日常が手に入ってしまった
油断していると朝から夜までこねている自分がいる
ページが溜まったり、頭使って書いたりしている分「何かした気になる感」が高いからまた厄介だ
もちろん何もしないよりはマシだが、こればかりしてれば良いというものではない
行動せず、こねてばかりいるのはただの頭でっかちでしかない
箇条書き脳になった
普段仕事では
Markdownもよく使う
コードにコメントを書いたりする
が、それらのシチュでも明らかに箇条書きを使う機会が増えてしまった
影で箇条書きマンと呼ばれているのではないか、と被害妄想するくらいに、私は箇条書きを多用している(ことをようやく最近自覚した)
ちなみにsta.icon
箇条書きだから常にわかりやすいわけでもない
よく指摘されているのは「接続詞がわからん」
前後の箇条をどうつなげればいいかを自分で読み取る必要がある
トピック指向とはsta.iconの造語(同じこと考えてる人は既にいくらでもいるとは思うが)で、従来の日記のように「時系列で書く」指向の後発にあたる概念だ
トピック指向は、Scrapboxと相性が良い
私は仕事でも、プライベートでも、(Scrapboxが使えない場所でも)トピック指向を使うようになった
1ネタ1ページで書くようになった
また、最近の指向回路も、このトピック指向ベースで考えるところが大きい
たとえばZulipというSlackより後発のチャットツールについても、私は「あ、トピック指向じゃん」と捉えた 従来のコミュニケーションがレトロニムであることがわかった レトロニムとは「元々唯一存在してたものが古くなり、(新しい方と区別するために便宜上)名前がついたもの」
これもScrapbox開発者のshokai.iconさんが取り上げている言葉
余談だが、彼はScrapboxの哲学を言語化しており、とてもためになる
詳しい解説は省くが、「ああ、従来の口頭ベースのコミュニケーションは微妙なやり方だったんだ」「もっと良いやり方があるんだ」と私は痛感した
で、個人的にあれこれこねてこういう概念に昇華していった
要するに、当たり前だと思っていたコミュニケーションのあり方が、実はそうではないよというパラダイムシフトを手に入れたのである パラダイムシフトなんて人生でそう出会えるものではない
これだけでもScrapboxと出会えたことに感謝できる
イキれるようになった
Scrapboxで10000ページ近いpublic projectを持っている人は、日本を探してもそうはいない
元々私は承認欲求の化け物なところがあり、この「俺は10000ページを持ってるんだぞ」という事実は、私にとって大きな精神的支柱となっている もっと言えば、内心でイキれている
sta.icon(俺はScrapboxで10000ページ近く書いてる怪物やよ?)
sta.icon(俺はすごい。俺は強い……!)
もちろんただの数にさして意味がないことは知っているが、それでもあるのとないのとでは違う
余談
Q: なんでイキるの?
楽しいから
精神的に幼いからかもしれない
Q: 堂々とはイキらないの?
さすがに相手がうざいでしょう
既に上述したが、Scrapboxは「誰に押し付けるでもないがとことん書ける」のが良い
交友関係が広がった
Scrapboxを通じていくつかのコミュニティや人と出会えた
そこで色んな意見や情報を知ることができて、より成長に繋がったと思う
純粋に楽しいし
こういったことは「一度も顔を突き合わせることなく」「Scrapbox上だけで」行えている
感無量というか、すげえ時代だなというか、うん、すごい(語彙力)
Q: それって交友関係なの?
どう捉えるかは人次第だろうが、私はいわゆる弱い紐帯も関係だと考えている (でないと親しい人つくれないsta.iconみたいな人が救われない(私は自分を救うためなら都合の良い解釈もつくっていく(その痕跡はここにもたくさん散らばっているだろう)))
仕事でイライラしやすくなった
Scrapboxを使えばもっとスムーズにいけるのに!とはもう何百回思ったことか
私自身はどっぷり浸かっていて、思考回路もそうなってしまっているので、そうじゃない仕事の文脈がとにかく辛い
で、啓蒙や改善に力を入れたりもしているのだけれど、まあそう上手くいくものではない
しまいには人を変えるというページをつくって、基本的には無理ゲーだなと結論つけるようになった (余談だが、こういう気づきや思考もガンガンページ化できるのがScrapboxの良いところ!)
本当にハマる人はハマると思うsta.icon
おわりに
あまり長々と書いても仕方ないのでこの辺にしておく。
改めて言おう。
Scrapboxは最高のツールだ。
もちろん人は選ぶだろうが、もし。
もし、ビビッと来た方がいらっしゃれば、ぜひ遊んでいただきたい。
別にpublicにする必要はない(むしろpublicにしている狂人は少数派である)。privateでも存分に楽しめるはずだ。
もっと書きたくはないだろうか?
貯めたくはないだろうか?
Scrapboxなら、たぶん満たしてくれる。
-.icon
以下は更新履歴です
2022/02/11 19:53:31
typo修正
もうprojectをつくる → もうprojectをつくれる
2021/12/05 06:17:18
一覧を二次元で見れる件、もう少し補足した(縦一列のリストではなく縦横の二次元であるという点)
2021/12/04 17:13:43
細かいアクセス制御部分の補足がなかったので一言追記(潔く捨ててる件)
トピック指向の解説(へのリンク)を追加
2021/12/03 19:09:29
書き上げた