なぜ女は男のように自信をもてないのか
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2020-07-25 読了
序文
「自信」 という必要不可欠といってもよいほど重要なものが驚くほど多くの女性に欠けている
著者が長年アメリカ政治を取材して : アメリカの権力が集まるところは女性の 「自己不信地帯 (セルフ・ダウト地帯)」 でもあった
議員から CEO まで、女性という女性が 「自分はトップに立つ資格がないのではないか」 という不安を持っていた
「自信」 は人生にとってとても大切な要素であるだけでなく、予想以上に複雑
「自信」 について言えば、男女で遺伝的な青写真に大きな違いもなければ、調査で発見したこともどちらの性についても言えることだった
ただ、女性には特定の危機がある : 「自己信頼 (セルフ・ビリーフ)」 の欠如
基本的なこと : 私たちに必要なのは、行動を起こすこと、リスクを冒すこと、失敗すること
挑戦しなければ次のレベルには行けない
問題の一部は、女性が長い間 「問題を起こさず、ひたすら努力すれば、いつか才能を認められて評価される」 と思ってきたこと → 実際はそうではない
本書では 「女性」 を集団として取り上げるのにかなり単純化してしまっているが、それでも自信というテーマはどんな女性にも重要だと思っている
男性的な自信の表れ (例えば会話の主導権を握る、など) は女性にはなじまないものではあるので、自分たちに適した自信を身に着ける必要がある
必要なのは、「自信の青写真」 あるいは 「自信の暗号 (コンフィデンス・コード) の解読」
「楽観主義」 や 「幸福」 といったものの定義はあり、それらについてのアドバイスの蓄積もある
「自信」 についてはもっと不可解で、得たいが知れないもの
自信はある程度遺伝的なもの
だが、コンフィデンス・コードの主要部分は意志による
努力によって自信を大きくしていける
脳の可塑性によって、脳の構造をもっと 「自信癖」 がつくように作り変えることもできる
1 章 : 不安から逃れられない女性たち
プロバスケットボール選手の事例
コーチによると、失敗やミスをくよくよ考えたり、外の世界をなかなか頭から締め出すことができないのが女性選手の最大の心理的障害 → もろにコート上のパフォーマンスや自信に影響する
自信を阻むブラックリスト
考えすぎ
人を喜ばせたい
失敗を忘れられない
自信の格差 (コンフィデンス・ギャップ) が、職業・所得・世代に関わらずいろんな場所に予期せぬ形で存在していた
完璧主義は 「自信キラー」 リスト (自信をダメにしてしまう特徴のリスト) の上位
ダニング=クルーガー効果 : ある種の人々が自分の能力を大幅に過信してしまう傾向にある現象
女性の方が男性よりも自己不信に陥りやすい
「自分の仕事に自信があるか」 というアンケート : 女性の半数が自己不信を抱いていたが、男性で同様の回答をしたのは 1/3
昇給の交渉をする男性は女性の 4 倍も多い。 女性が昇給交渉をしたとしても、交渉額は男性より 3 割も低い
自己認識 (セルフパーセプション) の影響 : 女性の方が男性よりもテスト結果を低く見積もっている。 女性の方が男性よりもコンテスト参加などへの挑戦の割合が少ない
男性は常に自分の成果を過大評価し、女性はいつも過小評価する。 実際の成果の質は全く変わらないにも関わらず
平均的な男性は自分のパフォーマンスを実際よりも 30 % 高く評価する
男性は、自信過剰になる傾向にあることを、自ら打ち明ける : 正直な自信過剰 (オネスト・オーバーコンフィデンス)
社内の昇進の機会に、男性は職務要件を 60 % しか満たしていなくても喜んで応じるが、女性は 100 % 満たさないと応じない
固定観念に対する恐怖 (ステレオタイプ・スレット) : 数学の前に性別を聞かれただけで女性は無意識のうちに出来が悪くなる
実際の能力ではなく、(見せかけではない) 自信を持っているかどうかが社会的ステータスを左右する
自信を持っているほど、非言語的かつ言語的な行動をみせる → まわりに影響を与える
「自信は、自分の環境に対する向き合い方」
一意専心に近い
ためらわずに一つのことに集中する
2 章 : 考えすぎて動けない女性たち
計数的自信 : 原始的な自信。 自分の選択に対してどの程度確信を持っているかの度合い
初めて行く店に向かって車で走っていて、「そろそろ着くはずなのに見えてこない」 というときに、そのまま進めるかどうかは自分が辿った道が正しかったと自信があるかによる
ラットでの実験
脳が原始的な自信をもとにした機械的な判断をするとき、眼窩前頭皮質が使われている (ラットの場合。 人間も同様だと考えられている)
自信の 2 つの側面 : 客観的な自信 (本能的な計算プロセス) と主観的なもの
ライト少将の事例 : 行動、勇気、決断をする
自信と一緒くたにしてしまいがちなもの
3 章 : 女性は生まれつき自信がないのか?
アカゲザルの研究
「不安」 の源に焦点をあてる → 実質的には自信を見ていることと同じ
自信をもつサルは不安をもつ傾向が少ない。 逆も同様
特定の生物学的パーソナリティは人生の初期段階で現れ、環境がいじられなければ大人になってもかなり安定していて変わらない
パーソナリティ形成に不可欠だと考えられている遺伝子 : SLC6A4、もしくはセロトニン輸送体と呼ばれる遺伝子
自信に直接影響を与えると考えられている
アカゲザルは、人間以外でこの遺伝子を持っている数少ない霊長類の一種
セロトニン輸送体遺伝子にはいくつかの種類がある (多型という)
両親から 1 組ずつ受け継がれ、長いものと短いものの組で型が決まる
短いもの 2 つの組 (SS 型) はセロトニン伝達がうまくいかず、うつや不安のリスクが大きい
短いものと長いものの SL 型は、SS 型よりは良いが効率的とはいえない
LL 型が最も効率的で、自信にとって最も重要な精神的回復力 (レジリエンス) が自然に備わっている
もともとうつ病や不安障害との実証が明らかにされていたが、最近では幸福感や楽観性とも関連付けられるようになった
アカゲザルでは、LL 型のサルの方がリスクを取ったりリーダーになりやすく、SS 型の方はあまり他者と関わらない
自信のなさが、過活動や攻撃性となって表れるサル (特にオス) もいる (人間社会っぽい)
人の研究でも、自信は遺伝子によって決まる部分があることがわかっている (自信の 25 % から半分程度は遺伝子による)
プロミンの研究では、自信と遺伝には 50 % 程度の関係がある
特性五因子論では、自信の 25 % 程度が遺伝子で決まる
人の脳を 「行動を起こす思考」 にするのは何か (= 自信に関連する脳内物質)
セロトニンやオキシトシン、ドーパミン
エピジェネティクス界では、人生における経験を遺伝できるかどうかという考えが注目されている
不安症タイプの遺伝子を持つサルが素晴らしい母親に育てられると素晴らしいリーダーになった
いくつかの遺伝子は、環境に対して脆弱にするのではなく、敏感にしていると考えられる
蘭タイプ理論とも呼ばれている
脳は再配線できる → 脳の可塑性
平均 8 週間の瞑想で、扁桃体の活動を抑えられ、前頭前皮質が活性化
認知行動療法で、PTSD の人の脳の主な活動を扁桃体から前頭前皮質に戻す
人は、意思決定する際に無意識的に記憶の影響を受ける
海馬が記憶の集約以上のことをしている
4 章 : 男女間に自信の差が生まれる理由
自信の男女差
5 章 : 自信は身につけられるもの?
自信を身に付けさせるための子育てはタフなもの
過去 20 年の 「自尊感情」 推奨ムーブメント (どんなことでもほめる) は間違っていた
それは薄っぺらな自尊心と自信を生み出しただけ
困難に立ち向かう機会と失敗する機会がなかった
最近の新卒も同様
昔は試行錯誤を繰り返して自信をつけていった
子どもに自信をつけさせるには段階的暴露を行うこと
失敗する機会と、失敗を前向きに扱うことが大事
アジアではこれが標準的な子育て
グリットが重視される
日本語では根性
リスクや失敗、忍耐から自信に至るまでの道のりの開始点は考え方
自分は成長できる、という信念
キャロル・ドゥエックが 「成長する思考習慣」 (訳としては 「しなやかマインドセット」 が一般的かも?) という定義をしている
『マインドセット 「やればできる!」 の研究』 が参考になる
しなやかマインドセットは、特に思春期の女子の自信を高める
成功を努力と向上で測る → 向上させたいかどうかを自分で選ぶ
苦手なことを一生懸命練習するのは大変だが、それにより生まれ持ったものに対する自信は小さくなり、自分が作り上げてきたものに対する自信が大きくなる
「人と違っていたい」 という想いは自信にとってとても重要 (キャロライン・ミラー)
リスクと失敗だけでなく、快適ゾーンを抜け出して、社会に決められた目標ではなく、自分自身が価値あるものと認めた目標に向かって努力することから、自信は生まれる
我々が子どもに早い段階から教えられるのは、達成感ではなく自己意識を持つこと
他人の称賛に依存した自信は、自分自身の成果や達成感からくる自信よりも壊れやすい
6 章 : 自信を自分のものにするための戦略
女性が自信をもつためにどうすればいいか? → Fail Fast (早めに失敗すること)
早めの失敗は失うものが少なくて済むし、失敗から学べることは多い
疑わしいときは、動く
快適ゾーンから抜ける
時期を逃さず決断し、それに対して責任を持つという能力は、自信にとってもリーダーシップの表現としても重要
反芻をやめる
ネガティブな考えのループをやめるように、自分の思考・感情・振る舞いの関係性を観察して自覚する (認知行動療法の基本)
自動ネガティブ思考 (NATs) を倒す
ネガティブな考えを否定するのではなく、同じことを別のポジティブな視点で捉えるようにする
例 : 「私は効率が悪い」 → 「自分はいろいろなことのバランスをとることがうまい」
女性は 「私」 ではなく 「私たち」 という考え方をすることでうまくいくことが多い (ジェニファー・クロッカー)
自分の価値を証明する方法を考えるのをやめて、同僚や会社のために動くようにしたら、驚くほど自信を増加させた
自分の権力拡大のためではないと気づくと、より強く、もっと目的意識をもって行動するように
例 : 人前で話すときに、自分のためではなく、チームや組織を代表したり、他の人の利益のために話していると考える
批判を個人的なものとして受け止めない
批判はスキルや行動に向けられたものであり、自身の価値自体に対するものではない、という認識する
フィードバックを受けたら、それに対してありがたいと感じるようにする
自身の業績・価値を周りの人に正しく伝えることは必要
女性は自虐や謙遜、自己卑下をしがちだが、それらは自分自身をどう見ているかだけでなく、周りの人が自分をどう見るかにも影響
職場での自分の立場を良くするだけでなく、自信をつけるという点でも重要
繰り返しの努力が自信につながる
語尾を上げた質問風の話し方をやめる
女性は心理的なセーフティネットのために質問風の話し方をすることがある
自信を持って話さなければ、他の人はその言葉を信じられない
自信が身につく習慣
7 章 : 部下や子どもに自信を持たせるには
西洋と東洋の学習に対する違い
アメリカでは努力 (苦労して頑張ること) は頭がよくないと思われる
アジアでは、苦労することをいい機会と捉える
苦労してハードルを越えることで、できなかったことができるようになる、という風に認識する
子どもをほめるとき、あいまいに 「あなたは世界一だわ」 などと言うのではなく、具体的にほめる
子どもが、自分が何をしたのか認識できるように手助けする
女の子が自信を持てるよう (のちの人生で自分の主張をできるように) に育てるには?
悪い行為をあまり大げさに批判しない
いい行いをあまりほめすぎない
意味のない完璧主義をやめさせる
日々の業務をいかに正確に行うかに集中しすぎて、視点を上げてより大きな視野で見ることができない
自分のやっていることに確信を持っているために、挑戦を拒否して、自分の中に閉じこもりがち → 成長できない
これは自信ではなく近視眼的で孤立した独りよがり
「自分の成果を上司や目上の人に知ってもらう」 という戦略 → そうしない女性と比べ、より成長し、キャリアに満足し、給与も増えた
「あなたはすごい人だ」 などと伝えるよりも、背中を押す一言 (何かをするように提案するなど) が重要
8 章 : 自信の科学
男性と女性の資質を兼ね備えた女性が最もいい実績を残す (スタンフォード・ビジネススクールの研究)
男性の資質 : 攻撃性、自己主張、自信
女性の資質 : 協力的、プロセス志向、説得的、謙遜