第2回 対象(1) 心理学から
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1. はじめに
関連する研究領域
本章: 「対象」
何を対象としているのか
複数の観点から検討する
2. 学習の分類:認知の観点から
from 教授者の教示に従って学習者が一人で学習するという学習の考え方 3. 学習の分類:活動の観点から
「人間活動の歴史的な変化を考えると、人間の学習は、3種類に分けてとらえることが必要になる」(茂呂, 2018) 意図しない学び
後述
意図した学び
制度的意識的学び
「制度」
意図した学び
日常生活にも「制度」は関わっている
日常学習は日常生活における法にしたがって営まれている活動を基盤にしている 「学校制度での学習」「日常学習」は単独ではとりあげていない
理由も含めて10章〜15章までの各章で検討している
4. 学習の分類:行動の観点から
単著という意味でも稀有
筆者の立場は行動主義といえるが、「言語による学習」を取り上げている店でもたいへん参考になる 行動の分類
「経験の有無にかかわらず、生起する一連の行動」
「経験によって獲得、維持、変容可能な行動」
2つの分類をあげている
生得的行動
「現代の行動研究者たちは、100%学習性の行動も、100%生得性の行動も、おそらく現実的には存在しないと考えている。たとえば、生得性行動の基盤を遺伝子に結びつけ、学習性行動を条件づけ(や環境との相互作用)に結びつけるのは、あくまでも研究を進めるための暫定的な約束にすぎない。どんな生物個体の行動も、遺伝的なメカニズムに依存していると同時に、環境との相互作用の履歴にも依存しているのである」 眞邉(2019)は習得的行動を3つに分類
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本人が実体験することによる学習
刺激が繰り返し提示されることにより、反応の強度や頻度が低下・減少すること
刺激が繰り返し提示されることにより、反応の強度や頻度が増加すること
何かと何かが結びつくことによって成立する学習のこと
刺激や行動、さらに、行動の結果としての刺激の変化
「(感覚)運動学習」はオペラント条件づけとして捉えることができる 言語的に指示・教示されることによる学習
言語による学習は人間に特有である
「いつどんなときに、何をしたら、どうなるかという関係」が表現されたルールが提示されると、実体験や観察学習をしなくても、ルールで表現された行動を学習することができる
「言語ルールに従うと、そのルールに従って利益を得たり、不利益を避けられることにより形成・維持される」行動
「従うと他者から褒められるなど社会的に強化されることにより形成・維持される」行動
「直接(中略)ルールは提示しないが、何らかの言語的提示を行うことにより反応の生起頻度や強化子・弱化子の効力を変化させる」行動 5. 行動の分類をめぐって:行動分析学の観点から
「学習」の主体は誰か?
研究者は「人間一般」の「学習」について研究したいのか、あるいは特定の個人の「学習」について研究したいのか
研究対象は「人間一般」
ある特定個人の「学習」について研究
臨床心理学におけるケース研究など
活動理論に基づく研究も、ケース研究という思想とは親和的である 研究対象
その結果観察される参加者の個人差は、論理実証主義でいう「誤差」とはみなされていない
行動分析が十分ではないとみなされる
行動分析学における行動の分類
その行動が後続する環境変化によって変容される場合のこと
その行動の出現が、先行する環境変化に基づく場合のこと
行動を誘発する先行環境を見つけることができない場合のこと
坂上・井上(2018)
食物による唾液分泌について、食物に酔って誘発される誘発性行動であるが、自分で唾液を出すこともできるという非誘発の側面もあるという例をあげて、
「従来の学習理論の考え方では、淘汰性と非誘発性(自発性)、非淘汰性と誘発性という結びつきが、いわば自明のものとして考えられてきた。しかし、絶対的なものとは言えないことになる」
自発は異なった英語翻訳もあるので厄介な問題が生じている
つまり、「自発」は、人間が「自由意志」で当該の行動を取る、という意味を帯びているということ 6. 記憶の分類:認知の観点から
認知心理学の観点からは「学習」はすべて「記憶」の対象となる 生まれてからの経験により学習したことはすべて記憶の対象になる
立って歩く
箸を使って食べる
日本語で話す
未来に関することにも「記憶」が関与する
未来のことを考えるときには、現在から過去への自分の様々な記憶や、自分や社会をどのように考えるか(これも記憶)という記憶が基になっている
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点線矢印はワーキングメモリを経由しない意識下で行われると推測される情報の流れ
エピソード記憶 vs 意味記憶
「自己の経験の記憶」
「場所と時間」が特定できる
「知識の記憶」
辞書や教科書に書いてあるような内容に関する記憶
顕在記憶 vs 潜在記憶
自分で意識でき、言葉やイメージで表せる
意識されうことはないが、行動や判断に表される
手続き記憶 vs 宣言的記憶
「技能の記憶」
言葉で表される内容の記憶
意味記憶になる前の知覚表象を保持できるシステム
回想記憶 vs 展望記憶
過去の記憶
上記の記憶すべて
意図の記憶、未来の記憶
以上の記憶とは次元の異なる記憶
自分自身の記憶を監視し制御する機能を持つ記憶
図2-2であがっている記憶はそのほとんどが実験室実験によって研究されてきた記憶
展望記憶も日常記憶の1つとみなすことができる
未来の記憶のために「記憶補助」を利用する(スケジュール帳など) 自己概念と記憶との関係から、自分に関連して処理されたものは記憶されやすい
自己に関する意味記憶