協調学習
従来の学習論では、学習とは学習者個人の知識の蓄積であると考えられており、教師の頭の中にある知識を、学習者の頭の中へ伝達することが学習であり教育であると考えられていた。これに対し「CSCL」は、知識を頭の中だけではなく他者や道具との関係で注目しようとする、状況的認知アプローチをとっている。従来の学習論から状況的認知アプローチへの転換は、 学習者を「同じ知識で満たされる人」から「協調できる複数の人たち」へ
教師を「知識の源」から「共同体内の先進知的リソースへのガイド」へ
学習活動を「知識の蓄積」から「道具を活用した知性の発揮・共同体への参加」へ
学習目的を「有能な個人の育成」から「分散しつつ協調したときに知性の発揮できる個人の育成」へ
といった教授・学習観の変化をもたらした。この変化は協調学習を重視する教育実践や教育コンテンツの提案を活性化し、「学習者共同体」の概念を生み出した。 Q.「CSCL」に参加する可能性のある学習者は、その背景知識が多様であると思われるが、そのような多様な学習者に対して「CSCL」のメリットをどのように説明したらよいのだろうか?
A. 確かに誰もが問題視していそうな社会的な問題をテーマにしても、文脈が違えば問題に感じないかもしれない。一つは「この問題を解くとどのようなメリットがあるのか?」を理解させながら進行させるアンカード・インストラクションを用いることが考えられる。また、学習とは一人で頭で考えて行うものだ、という観念を持っている学習者の存在も考えられる。このような学習者に対しては協調学習のメリットを感じやすい小さな課題から設定をして、徐々に大きな課題を与えていくことによって協調学習に慣れさせるなどの工夫が必要である。