Hom関手について、丁寧に見てみる
$ \mathscr{A}の対象$ Aを固定した前提で、適当に対象$ Xを選ぶ
射$ A\rightarrow Xは、一本とは限らず、複数ありうるので、これを集合$ \mathscr{A}(A,X)と表記する
$ \mathscr{A}(A,X)は「集合」なので、「集合の圏Setの対象」の一つである
https://gyazo.com/2eff3f5b9a8d0d22d5e325c5d27a0c8f
つまり、対象$ X\in\mathscr{A}を選ぶごとに、「Setの中の対象」と対応が取れる
関手っぽい!mrsekut.icon
https://gyazo.com/04089a5ce9402e43ff4960c92b06d725
ここで、関手$ h_A:\mathscr{A}\rightarrow\mathrm{Set}を考える
上の説明ですでに対象の対応は取れている
$ h_A(X)=\mathscr{A}(A,X)
以下では、射の対応について見てみる
https://gyazo.com/487ba5448aff2e8a82438c73180bf447
$ \mathscr{A}の射$ f:X\rightarrow Yがある状況で、$ h_A(f)はどんな射になるのか
ちなみに$ h_A(f)は$ \mathrm{Set}上の射であるので、馴染み深い一般的な写像の一種として見ることができる 圏$ \mathscr{A}上で、射$ a\in\mathscr{A}(A,X)と射$ fの合成$ f\circ aに注目する
$ fとの合成を考えるなら
$ \mathscr{A}(A,X)から一つの射を選ぶと
$ \mathscr{A}(A,Y)の射の一つになる
この関係を$ h_A(f)として定義する
つまり、$ a\in\mathrm{Hom}_\mathscr{A}(A,X)について
$ h_A(a)=f\circ aとなるような$ fを選んだときの、$ h_A(f)
https://gyazo.com/ad1d4464a3c17e3762cf3dfcfc4c0e23
わかりにくいが、これで確かに$ h_A(f):\mathscr{A}(A,X)\rightarrow\mathscr{A}(A,Y)が定義されているのがわかる
ここでは確認しないが、$ h_Aは、関手としての残りの条件も満たす
合成の保存と、恒等射の保存
以上により$ h_Aは関手であり、これのことをHom関手と呼ぶ 添字の$ Aは、$ \mathscr{A}のドメインとして、対象$ Aを固定していることを表している
$ \mathscr{A}(A,-)とか$ \mathrm{Hom}_\mathscr{A}(A,-)と表記することもよくある
先程までは圏$ \mathscr{A}のドメインを$ Aと固定していたが、次はコドメイン$ Bを固定したものを考える
https://gyazo.com/60220a110f634b0dce73914cd5e326eb
向き先が異なるだけなので、さっきと全く同じ議論の展開ができる
https://gyazo.com/eee314ec6d4092fb6f66a381ac6344b9
$ Xを決めるごとに、Setの対象$ \mathscr{A}(X,B)が対応する
この時点で関手の対象については対応が取れている
ここで、さっきと同様に射$ f:X\rightarrow Yを考える
この一点に関しては注意が必要で合成される向きがさっきと異なる
下図の左がさっきの話で、右が今の話
https://gyazo.com/1cc9deb3deb0d30a1e7b1dba63ad0865
左右の図でそれぞれ
$ x\in\mathscr{A}(A,X), y\in\mathscr{A}(A,Y)
$ x\in\mathscr{A}(X,B), y\in\mathscr{A}(Y,B)
とすると、$ fとの合成できる向きが異なっている
左では、$ y=f\circ xだが、
右では、$ x =y\circ fだ
話を戻すと、$ \mathscr{A}\rightarrow Setへの関手$ ^Bhを考えた時、
射の対応は、$ b\in\mathscr{A}(Y,B)について$ ^Bh(b)=b\circ fとしたときの集合間の写像$ ^Bh(f)になる
https://gyazo.com/aa3d06139d63ca2b1322440d6cb684fb
この自然変換を理解するためには、上の2つの理解があると楽
まずは難しく考えずに単に固定する対象を増やして$ A,A'を固定して全く同じことを考えてみよう
$ A,A'は両方ともドメインとして考えるので、最初に書いたHom関手の話と全く同じ ただ、2つあるというだけ
下図は$ \mathscr{A}の射集合の位置に、Setの方で対応するHomを書いているので、菱形と正方形みたいになってるmrsekut.icon
https://gyazo.com/c579aea4356ab1ad73413f75a5c13afa
全く新しいことは出てきてない
次に、この図を視点を変えてみる
今までは、$ (A,X,Y)を1セットとして見てきたが、
ここでは、$ (X,A,A')を1セットとして見てみよう
するとこれは、コドメイン$ Xを固定して、適当に$ A,A'を選んだものと見れる
射$ a:A'\rightarrow Aを考えると、反変Hom関手の話と全く同じ議論の展開ができる https://gyazo.com/af0afdcbef117634feeb5b24c4f7fbb2
反変関手なので、縦方向の矢印が$ \mathscr{A}とSetで逆向きになっていることに注意
今見た$ h_a:h_A\Rightarrow h_{A'}がまさに、Hom関手間の自然変換になっている 自然変換は射の族なので、
$ ^Xh(a)や$ ^Yh(a)の集まり$ h_aが自然変換
https://gyazo.com/605fe4431c908a5467431823ae4e83ca
つまり、$ A,A'に着目したときのHom関手が、
$ X,Yに着目したときの自然変換になっている
逆に、$ X,Yに着目したときのHom関手は、
$ A,A'に着目したときの自然変換になっている
また、今の話を別視点で見ると、
$ \mathscr{A}とSetの間の関手は、圏になっていることがわかる
これは関手圏$ \mathrm{Fun}(\mathscr{A},\mathrm{Set})だ
対象は$ h_A
さっきの関手
射は$ h_a
さっきの自然変換
https://gyazo.com/019dbbddc4d4d6c1780bdfd009a215d2
さらにメタに、圏$ \mathscr{A}と関手圏$ \mathrm{Fun}(\mathscr{A},\mathrm{Set})の対応を見てみる
これも関手と見ることができる
対象$ Aを決めると、関手$ h_Aが決まり、
射$ a:A'\rightarrow Aを決めると、自然変換$ h_a:h_A\Rightarrow h_{A'}が決まる
下図のような対応になっている
https://gyazo.com/1048f9ad8bd55ea7ef0b8b36e58b31ee
これまた、関手によって射の向きが逆転しているので
$ \mathscr{A}から$ \mathrm{Fun}(\mathscr{A},\mathrm{Set})への関手は、反変関手である $ \mathscr{A}の代わりに、矢印が全逆転して双対圏$ \mathscr{A}^\mathrm{op}を考えれば、反変関手ではなく、普通の関手として見ることができる https://gyazo.com/a8f539b0f2a456e8d9ac4d16574cbc60
関手で写した時に矢印の向きが逆転しなくなったmrsekut.icon
『圏論の道案内』.iconに従って、この「$ \mathscr{A}^\mathrm{op}から$ \mathrm{Fun}(\mathscr{A}^\mathrm{op},\mathrm{Set})への関手」を$ ^{()}hと書くと便利
対象では、$ A\xrightarrow{{}^Ah} {}^Ah
射では、$ a\xrightarrow{^ah}{}^ah
だからな
参考