物価とは何か
https://gyazo.com/202e7309f4dc938c7668b4c01f5c041b
2022
あのバブル絶頂時、そしてその崩壊、いずれのときも意外なほどに物価は動かなかった。それはなぜか? お菓子がどんどん小さくなっている……なぜ企業は値上げを避けるのか?
ハイパーインフレやデフレと闘う中央銀行や政府の実務家(ポリシーメーカー)たちは、何を考え何をしているのか。
それらの成果と教訓を研究者たちはどのように学び、理論を発展させてきたか。
私たちの生活そのものと直結する、生きた学問としての経済学が立ち上がっていく様を生き生きと描く!
万人のための学問としてのマクロ経済学を希求する、真摯な社会科学探究。
参考文献のリスト
物価とは何か?をさまざまな例で考えていく
(誤り)物価変動は個別商品の魅力から来る説
産油国からの供給が絶たれたので原油の値段が上昇し、CPIが上昇した
素朴に考えれば「原油という商品が希少になったから、物価が上がった」
実際に政府や日銀の政策文書でもこの見方
しかし実際に検証すると、原油高→狂乱物価という因果関係は否定されている
固定相場制から変動相場制へ移行する時期で、商社や金融機関が円高になると予想してドル売り円買いをした
これを吸収するため日銀はドル買い円売りオペレーションをした
日銀が過剰供給に対応していればインフレは起こらなかったことが研究でわかった
消費者はガソリンが高くなっても必要であれば、他の商品を削って節約をする。すると石油関連以外の商品が広く薄く需要が減るため価格低下し、物価(すべての商品の魅力)は上がらない
もし値下げが起きない場合、起きるまで節約が続く(財布は有限なので)
「価格が変化すれば、消費行動が変わる」「消費行動が変われば、その他の商品の価格が変わる」という点を考慮していない点が誤り
メディアの説明にはよく会計理論が登場する
「一部の商品価格が上がったのでCPIが高い」
例:菅内閣の境内電話料金値下げ政策を発表→新聞「CPIが下がる」
広く影響する原材料価格高騰や消費税引き上げはインフレ率が高くなる傾向はある
美容院のサービスに魅力があるので需要があり、それを反映して価格が決まる
同様に決済サービスに魅力があり、貨幣を需要する
貨幣の供給量を2倍にすると決済サービスの供給も2倍になり、魅力はその分低下する。すなわち物価が上昇する
この考え方は物価変動の説明として16世紀から今日に至るまで信じられている
おかしいと思う。貨幣のサービスは供給が2倍になっても魅力は低下しない。なぜなら貨幣は価値交換ができるものであり、2倍程度保持しても魅力は落ちないから基素.icon
パンが2倍あっても胃袋に入る限界があるが、貨幣は保持すれば未来に使える
ここで言いたいのは「貨幣をたくさんすると貨幣の価値が落ちる」というよくある話だと思うが、比喩に納得ができない
美容院がたくさんあったら客の取り合いになって価格が下がるだろうが、それは切れる髪の毛が有限だからだ。しかし金は数倍程度余裕で吸収できる。給料が3倍になったって貨幣はもういらないとはならない。
貨幣が提供する決済サービスは日々減少している。キャッシュレス決済により貨幣の出番は大幅に減っている。貨幣自体の需要がない。
正確には銀行預金は貨幣と似た機能であり、実際に統計を作成するなら銀行預金は貨幣としてカウントする。しかし預金の口座残高を気にせず、貨幣自体の魅力を実感もしない
ここも言葉の問題があると思う。貨幣自体は魅力がないとしても銀行預金に入る貨幣(給料)は高い方がいいと考える人がほとんどだろう。その意味での貨幣の需要はある基素.icon
キャッシュレスが進んでいる国でも物価が上がる兆しはない
著者は学者なので全パターン潰そうとして冗長な書き方になっている基素.icon
1. キャッシュレスが進んでいる国でも馴染めない人が支払い手段としての貨幣に魅力を感じている
2. 貨幣の決済サービスの魅力で物価が決まる説が間違っている
結論は出ていないが著者は2だと考えている
ただ先を読むと、結局答えはわからないので貨幣価値は2つを考慮すべきという結論になっている
1. 決済サービスの魅力
2. 徴税権
貨幣には決済サービス以外の魅力がある
内外の研究者の見方は分かれている
FTPLと著者らの貢献の切り分けはわからなかった基素.icon
戦前は兌換紙幣だったので日銀に持ち込むと金と交換できた。金本位制 裏付けは日銀が価値を保証してくれる。日銀の背後には政府があるという信用 日本銀行券の信用の根拠は政府の徴税権
日本銀行券は100兆円発行されている
資産は724兆円あるが74%は国債
政府に借金を返せと要求できる権利
ちなみに日銀の金地金は簿価で4000億円
つまり政府が日銀に借金を返せるかが問題となる
政府はいろんなものを持っているが、道路や橋をバラ知って分けることはあり得ない
売るという選択肢は?(誰が買うんだ?)基素.icon
税収が減れば物価は上がり、税収が増えれば物価は下がる、という立場基素.icon
政府の徴税の多くは使い道が決まってる。国債の利払いと償還
https://gyazo.com/80c3da19350693791839377857e74740 https://www.mof.go.jp/zaisei/reference/reference-03.html
日銀と政府をセットで見れば不思議はない
国債購入オペでは、金融機関は日銀に国債を売り、円を受け取る
市中の円が増えるので、決済サービスに貨幣の魅力があると考えるなら、貨幣の魅力が低下して物価が上昇する
徴税権(FTPL)という立場にたてば、貨幣量は増えるが同額の国債の量は減っているので、政府と日銀を連結で見ると何も変わっていない。だから物価は上がらない
日銀券が増えるので、日銀の債務が増える
国債が減っているので、政府の債務が同額減る
FTPLの立場で物価上昇するシナリオ:減税や公共事業で金が減ると、税収が減る。すると貨幣の魅力が薄れ、物価が上がる
例:戦時下では巨額の戦費調達を行うので(使える)税収が減る。貨幣の魅力が薄れ、インフレが発生する
物価は誰が決めているのか?
財務省派
FTPLの立場「税収が増えれば貨幣の価値=物価が変わる。税収を決めるのは財務省」
日銀派
決済サービスが価値の源泉だから、日銀が貨幣量を調整することで変えられる
貨幣の魅力が決済サービスだけだと思い込んで失敗したブラジル
1980年代ブラジルは高インフレ(年率100%)だった。政府は放漫財政のために国債を発行し、中央銀行が引き受けていた
よって貨幣量を抑制するように金利を引き上げた
貨幣の決済サービスの魅力を高めた
教科書的なやり方基素.icon
しかしインフレは1985年には年率220%に悪化した!
なぜ悪化したのか?
国債金利が上がったので政府利払いが増加して財政が悪化した
貨幣の抑制による貨幣の決済サービスの魅力の高まり<(FTPL)財政悪化による貨幣の裏付けの弱まりによる貨幣の魅力低下 となったということ
通常水準であれば、利払い負担の増加は小さく、このやり方で処理できた
ブラジルのデフレ版の日本
日本はデフレを克服するために金融緩和を行なった
これによって財政の国債の利子負担が軽減した。財政再建に取り組む財務省は歓迎。
金融緩和で財政が悪化するという批判を聞く気がするが基素.icon
しかし、FTPLの見方では財政収支を改善すると貨幣の魅力が高まり、貨幣の需要が増えて物価を押し下げる(デフレ圧)
日本はブラジルと同じ過ちを犯している
財政収支を改善してはいけない。政策的経費を増やすか、減税を行い財政収支の改善影響を中和しなければデフレに対抗できない
しかし実際には2014年4月と2019年10月に増税という真反対の選択を行ったので、物価にさらなる下落圧力が加わった
PB赤字にしなければならない
財務省設置法を変えるか「健全な財政」の解釈変更をしないとダメでは?
物価を作る
実際に物価を計測するためには、個別の商品の価格を見るしかない
100の効用を得るためのなるべく節約した買い物をしたときに、買い物総額が増えたら物価がそれだけ上がったとみなす。これが物価の定義である生計費指数 しかしこれを計測するのは困難
実際には財布の中身と相談しながら買い物をする
同じ効用を得るための買い物をしない
このような買い物データから、生計費指数に一致するか十分近い計算はできるだろうか? 他人の効用関数を知らないので、生計費指数を全ての人について計算することは困難 数式欲しかった基素.icon
代替指数
目次
1. それは何の値段なのか
2. 物価はこうして「作られる」
3. 物価は誰のものか 企業の物価・地域の物価・個人の物価
第2章 何が物価を動かすのか
3. 予想との格闘
第3章 物価は制御できるのか 進化する理論、変化する政策
2. 信認と独立
4. 予想は操作できるか
5. 予想は測ることができるか
第4章 なぜデフレから抜け出せないのか 動かぬ物価の謎
1. 価格はなぜ毎日変わらないのか?
2. ミクロとマクロの辻褄が合わない!
4. デフレで何が困るのか
5. 商品の新陳代謝と企業の価格更新
第5章 物価理論はどうなっていくのか インフレもデフレもない社会を目指して 図表出典一覧
@yuru_gengo: いち本好きとして、2022年ベスト本は『物価とは何か』です。その魅力をツリー形式で説明します。 ヤバポイント①おもしろ例えがいっぱい!
→物価を蚊柱に例えてみたり、地震(!)に例えてみたり。はたまた、突然振り子時計の実験が出てきたりと、エキサイティングでまったく飽きさせない。
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