プロポーザルを書く技術
プロポーザルは参加者にとってプロダクトである。
スクラムをしているなら、ユーザーに価値のあるプロダクトの作り方は十分に習得しているはず。
プロダクトオーナーやPOを支援するスクラムマスターなら、なおさらである。
参加者は自分の人生の20分、45分を講演者に捧げる。
セッションに来てくれた人にとって、その時間のセッションはキーノートなのだ。
採択ゴール
採択ゴールになってはいないか
「資金調達できました! 上場しました! 東大に合格しました!」
これらは全部スタート。スタートとゴールを混同してはならない。
プロポーザルの壁
1.採択の壁
2.採択されても実際にセッションに聞きに来てくれるかの壁
裏番組が強力であっても、自分の所にきてもらえるタイトルやセッションでなければきいてもらえない
RSGTでは他のカンファレンスのキーノートで話すような人が公募にぽこぽこ参加している。そういう人達が裏番組ってことだ
3.全公開されても見られるかの壁
無料動画は無数にある。ハリウッド映画や有名人がライバル
4.最後まで集中して聞いてもらえるかの壁
最後まで集中して聞いてもらえるか。見始めたちゃったから、つまらないけどしょうがないから別のこと考えてすごしてないか。内職されたら負け。
5.社内で共有されるかの壁
6.現場で知見が使われる行動の壁
7.知見がアウトカムを生めるかの壁
ここまできて、初めて役に立つ。
4まできて、ようやく中身の評価がされはじめる。
「採択されましたー」で自分の実績になると思ったらヤバい。
プロダクトをリリースしたら、それが自分の実績になると思うのと同じ。
開かれない本は虚栄
参加者に何を求めているのかをどれくらい自覚しているのか
どういった要求を持っているのか
自分の話を一方的に聞いて考えてほしい
たくさんの人がききにきてほしい
学ぶ責任は参加者に丸投げしたい
「ヒントになれば」「きっかけになれば」
解決策は無理なので、Tipsでなんとかしたい
一方的な要求を一つずつつぶしていけば、参加者にとって聞く価値が深まるものができやすくなる
自分の発表がA群プロポーザルなのか、B群プロポーザルなのか自覚していたい。
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したたかなのは、ジャンクフードから始まって、いつのまにか沼に引きずり込む流れ。
「ネイチャーオブオーダーかっちゃいました」
構成
あるある問題解決ストーリー
パターン
あるあるストーリー
問題定義
問題の仕組みと働き
理想状態
記憶に残りやすい定義や知見
最後にして欲しい行動
センテンスオープナー
現場で「とりあえず○○する」といった定番を紹介する
エレベーターピッチを書く
コンテキストギャップ
巻き込まれ
プロポーザルのアイデアを見つける方法
話そうとおもったのに不安になるのは、単に本を読んでやってみただけだから? 本が良かったのであって、自分は何をしたんだっけ…になってしまってないか
日頃から、もっとよくできないかと試行錯誤していたらネタはでてくる
本を読んだが、もっと効果が出るように改造してチャレンジして、結果を出した
エビデンスのある知見と社会実装にギャップがあることを取りあげる
「世間で当たり前とされていること」と「業務や学習を通じて得られた分かったこと」とのギャップが大きいと話は面白くなる。
どうやって見つけるか。日常の中でYOWをやって、世間と大きくずれたWを見つけられたら、聴衆が聴いて面白い話ってこと。
それが業界に影響がでるくらいのギャップであればピーター・ティールの隠れた真実になる。ビジネスチャンスってこと。
我流になっている人にスタンダードを伝える
新人だった自分に伝えたい3つのこと
そのままプロポーザルになる
タイトルの書き方
・全ての要素を一文で表現する
・不要なところを削っていく
ネタ
初手クラスマックス
週刊少年ジャンプはアニメ化が多い雑誌であるが、その連載スタイルは初手クラスマックス。常に緊張感のある話で構成されている。日常回は10~20も描くことはできるだろうけれども、全てが読者にとって興味のあるものではない。
最初を面白くしよう。
#インタビュー も同様。面白いインタビューは記録ではなく、コンテンツである 質より量
よく「量は質を凌駕する」といわれる。製品開発をする上でも1つのものにこだわるのではなく、さまざまな選択肢を広げて試行錯誤を増やすことは大切だという。ところが、普段はそのように話していても、いざ自分がプロポーザルを書くときには一つに執着してしまう。
プロポーザルを自らボツにするのは当たり前。質より量を本気で信じているなら10案、考えてボツにしろ。
書くべきこと
「プロポーザルのアブストでは省略しているけれど、プロポーザルの説明を誰かにするときに省略されずに説明されるところ」がプロポーザルを読む人にとって重要なことが多い
講演するネタが無いという話をよく聴く。
「前回よりも質のいい話を絶対にするんだっ」てことを繰り返しつづければ、ネタには困らなくなると思う。シンプル。
「自分の能力を侮っているのは自分自身」というのがある。講演というチャレンジをしたら、その経験によってスキルは上がっているはず。なので、前の講演よりチャレンジしないといけない。
それに対して「前回はがんばったから、今回は軽くいこう」といった「手抜き」をするから、コスパのいいネタを探さなければならなくなる。そんな都合の良いものはそんなに転がっていない。
容易にできないことにチャレンジすれば必ず困る。困り抜けば、何らかのかけがえのない発見があるし、他の人よりがんばれば稀少性が高い情報が得られる。ネタがありすぎて困るくらいになる。シンプル。
態度
受講者にとってのキーノート
他人の人生の20分45分を預かる
行動を変えるか
有償カンファレンス運営者にとって、参加者から聞きたくない恐怖の一言は「しらけた~」
参加者にとっては講演者もカンファレンス運営者側にみえる。自分さえよければいい、自社の宣伝さえできれば言いというのは参加者にといってはカンファレンス委員への評価にも繋がってしまう。
「なんでこんなセッション選んだの? 参加費を払って企業の宣伝を聞くことになるなんて馬鹿らしい。しらけた~」
評価点
・新情報の割合はどれくらいか(稀少性)
・余所の情報を紹介するだけではダメ。コンテキストが地続きになっているかも重要
・五年経っても他に見ない資料になっている。稀少性が高いまま。
・情報の賞味期限はどれくらいか
・なんども繰り返しても有効。
・参加者のモチベーションをどれくらい上げるか
・再現性はどれくらいか
・n1
・個別状況への適応性
・参加者にとって、現場での選択肢が広がるか
簡易チェック
エレベーターピッチが書けるか
新しい提案の場合
費用効果
参加者は20分、45分を提供すると、何が得られるのか
有用性チェック
内的妥当性
同じ条件なら再現できる
外的妥当性
異なる条件でも再現できる
スクラムガイドに掲載する候補
問題解決
小笠原さんの知り合いをふやすセッション
カンファレンス自体が解決できなかった問題を解決する
個別適用性
実践者の好みにあう
モチベーションが高まる
有用性
ユースケースは何か
・いつ使えばいいのか
・典型的な使うべきタイミングは何か
アンチパターン
組織票
採択されても、「採択されても実際にセッションに聞きに来てくれるかの壁」にやられる
「御社はこんなダークなことをやるの? 実力が無いからやるの?」
自社のプレゼンスを下げるだけ
本気で書かない
プロポーザルに落ちたショックから身を守るために、本気で書かずに冗談をちりばめてしまう。おちゃらけてしまう。落ちてもショックではない。しかし、もし受かってしまうと、逃げの行為で報酬を得てしまうことになり、もはや本気向き合えなくなる。
次からのアンチパターンも、基本的には自分に甘いもの。これでウケてしまうと、本気の物を作るのは難しくなってしまう。
本気で書いて落ち込んで、もう一度挑戦する、というのを繰り返した方がいいものができる。
失敗したくないなら?
「失敗をたくさんしよう」と言いながら、自分は失敗したくない
採択されないという失敗するリスクを負うことを体現しよう。
どんなに立派な会社にいても、経験年数が長くても、参加者に「これは自分のためのセッションだ」と思われなければ見向きもされない。参加者、つまりユーザーにどれだけ向き変えているかを体現しよう。
招待講演ばかりするようになったら引退。
「一人にでも響けばいい」
それプロダクトでも言えるの? 自社のプロダクトではたくさんの人に役立ちます!!と謳うことをしているにも関わらず、いざ自分の発表となると「一人にでも響けばいい」と途端に自分に甘くなる。
持ち帰りたいものがありすぎてあふれるようにしよう。
アウトカムを得られるかどうかは参加者次第
「アイデアを紹介する」
「ヒントを紹介する」
たくさんのことを話すが、持って帰るものは参加者に見つけてもらおうとしてないか。
役立てるために、参加者ががんばらなければならないのか?
明日からこれをやりたい、これをやればうまくいくというものを持って帰らせることを目指そう。
自分が参加者の役に立てるようにがんばるんだ!
参加者の役に立つ確度の高いことを話す。
アイデアが紹介されただけで使い物になるか? ヒントを紹介されただけで参考になるか?
参加者にがんばらせるな! 役に立て!
手助けになれば
「きっかけになれば」
「手助けになれば」
自信が無いことを話さない。参加者の時間を奪わない。
自信があることテーマに絞り、参加者の役に立つ!
何かを書き足したとき、参加者が持って帰れるものが増えているだろうか。もし増えていないとしたら、それは自分のための文章になっている可能性がある。自分の不安を隠すための文章を書くな。参加者が持ち帰れるものを増やすことに注力しよう。
もったいぶる
そのセッションから学べる重要なポイントをもったいぶったり、匂わせに留めたりすること。出し惜しみ。
最高なのは視聴者が「プロポーザルを読んだだけで気付いてしまって、講演の前に試したらうまく行きました!!」
プロポーザルを読んだ時点で何か気付くことがあり、持って帰れるようにしろ。
匂わせたら聞きたくなってLikeを押してもらえると思ってるの? これも参加者にアウトカムを届けられるか不安なときにやりがち。自信があることをかけ。すぐに助けろ。またせるな。リードタイムを縮めろ。
招待講演は客寄せパンダを期待されてるため、匂わせが必要なこともある。しかし公募は混同するな。
自分の宣伝
セッションが自己紹介や自社プロダクトの宣伝にしかなってない。
「みんな欲しがれ」という願望がこぼれていないか。
対策は「顧客が本当に欲しかったもの」がはっきり分かるようにする。参加者が絶対に欲しいものを描けているか。みんなが欲していて、極めて稀少性が高いものだとなおさらいい。
太い経験という毒 講演ポリシー
「私はこんなに稀少な体験をしました(が、あなたたちは体験できないでしょうから有りがたく聞きなさい)」
他の人ができないことを書くな。
何かをテーマに主張するということは、そのテーマは情報として稀少であるということ。なぜ稀少なのか、その稀少を生むメカニズムは一体何かを明らかにしなければ、稀少は稀少のままであろう。
太い経験の講演は細い経験の人にとって機会格差を見せつける結果になっていないかを評価して修正すれば、より多くの状況下の人のアウトカムを生むだろう。
昨日や一ヶ月前と同じことをしているし、一ヶ月後も同じことをするように要求されている
「がんばって書きました!」
質ではなく、応援や同情で選ばれたいのか?
「がんばって作りました!」とプロダクトを開発して、同情で買ってもらいたいのか? それで勝ち残れるのか?
登壇実績だけほしい
登壇したという実績だけがほしくて、中身や参加者の反応はどうでもいい? そんな錯覚資産にだけ興味のあるフリーライダーに甘いイベントもあるかもしれないが実力にはならない
太い経験の人に特徴的なテーマ
夢中になる
失敗できる
講演のbefore/after
・情報の稀少性が弱まっているか
どっかで聞いたことのあるタイトル
「○○な私が○○を目指した話」
何番煎じ?
自分にとって初めてでも、参加者にはどっかで聞いたことがあるタイトル。もっと参加者の認知に寄り添え。
ただし参加者の多くは初参加。あえてやるのも重要。ただし初参加者向けに語るのは難しい。初心者向けは初心者には作れない。分からない人に教えるには、分からない人が一つずつ分かるという理解の漸進的構築の理解が必要。それなのにTarget Audienceが雑だったら目も当てられない。
聞いてもらったらよさが分かるというのはダメ。本も映画も、見てもらえるまでにどれだけ努力をしているか考えるんだ。読んでもらえば良さが分かるという考えは、プロダクト開発について分かっていないことが露呈する。人はわざわざ自分の人生の時間を使ってわけのわからないものを試したりしない。
プロポーザルの「○○なので、likeください」
「書いたのでlikeください」「気になったらLikeください」
クリックするハードルを下げているが、RSGTで公演された方がよいという評価の水準とずらしてる。
「プロダクトをリリースしたので買ってください」と同じ。
全然、論理的な帰結がないので面白い
しかし『影響力の武器』でも紹介されているような、人を根拠無しに説得するためのテクニック。無自覚と思うけど
プロポーザル・ダークパターン?
「セールストークだから、実態と乖離した誇張をしてもいい」みたいな儀礼的タブー破りっぽい。お祭りの日だから普段やってはいけないこともやっていいことにする的な
決して雑ではなく、職業倫理が棚上げされていくメカニズムは実に精緻で高度。ノリに見せているとか
「プロポーザルで誇張した表現をしなければないプレッシャーを感じており、倫理性とのトレードオフをしてる」というコンテキストなのであれば、プロポーザル制度はマーケットデザインに失敗している可能性がある
実態と乖離した誇張って、「抜け駆け」っていう行動の場合がある。「抜け駆け」とはやってはならないけど、やると有利になる行動。これが跋扈するとどうなるか。他の人がやると、その人だけ有利になるから、自分もやらざるを得なくなる。やらない人だけ損をする。市場の失敗のできあがり。
たいした悪影響はないのだろうけど、現状のプロポーザル制度か運用はマーケットデザインに何らかの不具合があるが、いままでそれについて問題提起をしたひとは見たことがないな。
組織票
「組織票やってます」の自己紹介リスク。めっちゃ信用毀損。なんならその会社の組織文化の自己紹介。
御社、組織票やっちゃう会社なんですね!
信用と実力でLikeを勝ち取るんだ。
宣伝でーす
「宣伝させてください」PV数をあげてLike数を獲得し、アクセプトを獲得しようとする行為。
スプリントレビューでも宣伝しているのか?
1票の質を考えるってことだ。
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シグナル
独自のキーワードを使うこだわりをもってしまってないか
自我がひょっこり顔を出してしまっていないか
人のプロポーザルを書くスキルを壊すのは簡単で読まずにLikeすること…組織票とか、Likeほいほいムーブをする人がいるかもしれない。実力で選ばれているわけではないので、中期的にはプロポーザルを書くのがうまくもならない
「あの人は長年の登壇経験があるのに、プロポーザルの構造がぐちゃぐちゃだし、まったく魅力じゃない」ではなく、「これは通って当然のプロポーザルだ」と思われるようなものを書こう
1回2回、参加者に評判のいい講演ができたかもしれない。そうしたら次の登壇も期待されているだろう。もし自分が成長しているというならば、その期待をはるかにこえるものを出してビックリさせよう
スクフェス系
スクラムをうまく回せるようになってきている
ならば、その結果として期待できる出来事が起きてなければならない
エンジニアが幸せである
よりよい製品がどんどん生まれてきている
つまり自信を持って自慢できるプロダクトが生まれているはずである
ところが、スクラムは回せるようになってきているけど、プロダクトそのものは残念
技術は「楽しい」そんな話ばかりになってはいないか
「時間が無い」じゃないんだよ。もし時間があったら、何をするか。
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自分の失敗経験を通して参加者に勇気を与えたいタイプのプロポーザルを作りたい人にはこれがわかりやすいかも