General AtomicsとDIII-Dの関係
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Become a User – DIII-D National Fusion Facility
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はじめに
General Atomics(以下 GA)は、1950年代に米国カリフォルニア州サンディエゴで設立された研究開発企業で、原子力分野を中心に多岐にわたる先端技術を手がけてきました。その中でも核融合研究は早くから注力してきた領域で、トカマク型核融合実験装置を運営し、米国エネルギー省(DOE)との協力のもとで核融合科学の発展に寄与しています。その代表的実験装置がDIII-D(ディー・スリー・ディー)です。以下では、両者の歴史的な関係を順を追って紐解いていきます。
1. General Atomicsの創設と核融合研究への参入
1. 創設の背景(1950年代)
GAは1955年、軍需・航空機大手のゼネラル・ダイナミクスの一部門としてサンディエゴに設立されました。当初は原子炉や原子力推進システムなどの開発を手がけていました。
設立当初より、原子力のみならず将来的なエネルギー源として期待された核融合にも興味を持ち、基礎研究を開始します。
2. 核融合研究の黎明期(1960年代)
1960年代になると、米国をはじめとする各国で核融合プラズマの閉じ込め方式として“トカマク”や“ステラレーター”などの概念が次々と提案・検証されるようになります。
GAはトカマク型装置の一種である“ダブレット(Doublet)”コンセプトの開発に着手し、後のDIII-Dにつながる基礎技術を蓄積していきました。
2. Doubletシリーズの開発からDIII-Dへ
1. Doublet I, IIの開発(1960〜1970年代)
GAは“ダブレット”と呼ばれるトカマクの概念実証機を段階的に建造し、プラズマ閉じ込めの性能向上や新しい磁場構成の研究を行いました。
Doublet IやDoublet IIでは、磁場コイルの配置や真空容器の形状を複数パターンで試行し、ダブレット形状(D字型断面のバリア構造など)がプラズマ閉じ込め特性に良い影響を与えることを確認します。
2. Doublet III (DIII) の建造(1978年稼働)
Doublet IIIは1978年に稼働を開始した、より大型かつ高性能なトカマク装置です。真空容器をD字型にしてプラズマの高ベータ運転を研究するなど、当時としては先進的な実験を行いました。
Doublet IIIの運用によって蓄積された知見は、米国の核融合研究プログラムに大きく貢献し、国際協力プロジェクト(後のITERなど)にも繋がる基礎データを提供することになります。
3. Doublet IIIのアップグレードとDIII-Dへの改名(1986年)
1980年代中頃、米国エネルギー省(DOE)の支援を得て、Doublet IIIを大幅に改良・拡張するプロジェクトが進められました。
主な改良点は、大電流駆動システムや加熱装置(中性粒子ビーム、電磁波加熱)の増強、強磁場化など。容器の形状やコイルの追加によりプラズマパラメータがさらに向上し、1986年に“DIII-D”と改名されました。
3. DIII-D: GAのフラッグシップ核融合実験装置
1. 実験施設としての役割
DIII-D(Doublet III D)は、米国内で代表的なトカマク型装置のひとつとして、GAが運営・維持管理を担っています。予算は米国エネルギー省(DOE)からの契約によって支えられています。
年間を通じて行われる実験キャンペーンでは、国内外の大学・研究機関の研究者が集まり、プラズマ閉じ込めの制御、高ベータ運転、先進的なパルス制御手法など、ITERをはじめとする将来の核融合炉設計に直結する課題を幅広く研究しています。
2. DIII-Dが築いてきた実績と特徴
境界プラズマ制御: プラズマと壁材の相互作用を最適化し、長時間運転の信頼性を高めるための研究が進められ、ダイバータ(排気システム)の設計指針などに大きく貢献しました。
先進的プラズマ形状: D字型に限らず、トライアングル形状など様々な断面形状を適宜形成し、プラズマの不安定性抑制や高性能運転が可能であることを示しました。
高ベータ運転: 磁場に対してプラズマ圧力が大きい(ベータ値の高い)運転領域を開拓し、将来の核融合炉の燃焼効率向上に役立つ運転シナリオ開発を牽引してきました。
3. 国際共同研究への寄与
DIII-Dの実験データは、ITERや将来のDEMO炉など国際的な核融合プロジェクトの設計・シナリオ策定に密接に活かされており、トカマク研究の中核拠点のひとつとみなされています。
GA自体も、DIII-Dで培った技術や経験を元に各国の研究機関と協力し、ITERをはじめとする様々な国際共同研究に参画しています。
4. 現在の位置付けと今後の展望
1. 米国核融合研究の中核
DIII-Dは現在も運転を続けており、プラズマ加熱やMHD(磁気流体力学)安定化手法、先進診断技術の開発など多岐にわたる研究に利用されています。
米国核融合エネルギー開発ロードマップに沿い、ITER及び将来のDEMO炉に必要なシナリオ実証が主眼となっています。
2. 継続的なアップグレード計画
プラズマからの排気制御や先進的な高周波加熱の導入、ダイバータ改修など、各種のアップグレードを段階的に実施しており、DIII-Dの研究能力は常に拡張されています。
こうしたアップグレードは、プラズマ性能をさらに引き上げるだけでなく、得られた知見をITERや次世代装置にフィードバックしていく重要なステップと位置づけられています。
3. GAとDIII-Dの今後
GAは自社の先端技術開発力を活かし、DIII-Dをプラットフォームとした核融合エネルギーの研究に引き続き注力することが見込まれています。
将来的には、DIII-Dでの成果がITERやDEMOを通じて商業炉への実現に繋がると期待されており、GAはその鍵を握る重要企業として位置づけられています。
まとめ
GAの設立(1950年代)から核融合研究に取り組み始め、1960〜70年代に“Doubletシリーズ”を開発。
1978年にDoublet III (DIII)が稼働開始。
1986年の大幅改修を経てDIII-Dに改名し、現在に至るまで米国を代表するトカマク装置として稼働中。
GAはDIII-Dを所有・運営し、DOEの支援のもと世界中の研究者との共同研究を推進。ITERや次世代核融合炉の開発にも大きく寄与している。
このように、General AtomicsとDIII-Dは一体不可分の存在と言えます。GAはDIII-Dを通じて長年にわたり核融合研究の最前線を支え続けており、そこで培われた技術や科学的知見は国際的な核融合炉計画の基盤となっています。今後もアップグレードを続けながら、商業炉実現に向けた研究を担い続けるでしょう。