プラズマ閉じ込め
#用語解説
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プラズマ閉じ込めとは、高温で電気を帯びたガス状の状態であるプラズマを、特定の空間内に保持する技術を指します。核融合反応を実現するためには、プラズマの温度を数千万度以上に保ち、反応を維持する必要がありますが、その高温プラズマを長時間にわたって一定の空間内に閉じ込めることが核融合炉の実現において不可欠です。プラズマは非常に高温で、固体容器に直接触れると冷えてしまうため、物理的な容器ではなく、磁場や慣性を利用してプラズマを閉じ込める方法が開発されています。
核融合反応とプラズマ閉じ込めの必要性
核融合は、軽い原子核(例: 水素の同位体である重水素や三重水素)が高温・高圧の条件下で衝突し、より重い原子核(例: ヘリウム)を形成する際に莫大なエネルギーを放出する現象です。この反応を持続させるためには、プラズマを非常に高温(1億度近く)に加熱し続ける必要がありますが、プラズマが壁に触れてしまうと冷却され、反応が止まってしまいます。このため、プラズマを長時間安定して閉じ込める技術が不可欠です。
プラズマ閉じ込めの方法
1. 磁場閉じ込め (Magnetic Confinement):
磁場を利用して、プラズマ中の荷電粒子(イオンと電子)を特定の領域に閉じ込める方法です。荷電粒子は磁場に沿って回転運動をする性質を持つため、適切な磁場を形成することでプラズマを逃げにくくすることができます。
代表的な磁場閉じ込め方式には次のようなものがあります:
トカマク: ドーナツ型のプラズマを磁場で閉じ込める装置。強力なトロイダル(円環状)の磁場とポロイダル(垂直)の磁場を組み合わせ、プラズマを安定させます。国際熱核融合実験炉 (ITER) もこの方式を採用しています。
ヘリカル装置(ステラレーター): トカマクに似た装置ですが、磁場をねじれた形状にして、外部からの電流なしでプラズマを閉じ込める方式です。代表例は、日本のLHD(大型ヘリカル装置)です。
2. 慣性閉じ込め (Inertial Confinement):
強力なレーザーや重イオンビームを用いて、ペレット状の燃料(重水素・三重水素)を急激に圧縮・加熱し、短時間のうちに高密度・高温を作り出して核融合を引き起こす方式です。これは、瞬間的に高エネルギーを集中させて燃料を閉じ込める方法であり、磁場閉じ込めと異なり、瞬間的に高温を実現します。
主な研究例としては、アメリカの国立点火施設(NIF)がこの方式での核融合実験を行っています。
磁場閉じ込めの具体的な技術
1. トカマク:
プラズマをドーナツ型(トーラス形)にし、その中でトロイダル(円環状)の磁場とプラズマ内部の電流から生じるポロイダル(縦方向)の磁場を利用して、プラズマを閉じ込めます。
トカマクは、磁場閉じ込め方式の中で最も広く研究されており、現在、核融合研究の主要なアプローチです。国際熱核融合実験炉(ITER)はこの方式を採用しており、将来的な核融合発電所の実現を目指しています。
2. ステラレーター(ヘリカル装置):
トカマクと異なり、外部の磁場コイルだけでプラズマを閉じ込める装置です。ヘリカル(ねじれた)磁場を形成してプラズマを安定的に保持します。トカマクに比べて構造が複雑ですが、外部から電流を供給する必要がないため、連続運転が可能な利点があります。
日本のLHD(大型ヘリカル装置)がこの方式であり、トカマクに対する代替アプローチとして研究されています。
3. ミラー装置:
プラズマを直線状に閉じ込め、その両端に「磁気ミラー」と呼ばれる強力な磁場を配置し、プラズマが逃げないようにします。この方式は過去に多くの研究が行われましたが、現在ではトカマクやステラレーターの方が主流となっています。
プラズマ閉じ込めの課題
安定性の維持: プラズマは非常に不安定で、ちょっとした変動や外部からの影響によって崩壊(ディスラプション)が起こることがあります。崩壊が発生すると、プラズマ内のエネルギーが急激に失われ、装置に大きな負担がかかります。これを回避するためのリアルタイム制御技術が必要です。
長時間運転: 核融合反応を実際に発電に利用するためには、プラズマを長時間安定して閉じ込める必要がありますが、現状では十分な長時間運転が難しいです。磁場やプラズマ制御の技術がさらに進展する必要があります。
高エネルギー損失: プラズマからのエネルギーや粒子の損失を最小限に抑える必要があり、特にエッジ領域での輸送障壁の最適化が課題です。
まとめ
プラズマ閉じ込めは、核融合エネルギーを実現するための中心的な技術であり、主に磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式が研究されています。トカマクやステラレーターなど、磁場を利用した方式が主流であり、特に国際熱核融合実験炉 (ITER) の建設を通じて、実用的な核融合炉の実現に向けた大きな進展が期待されています。