電流駆動
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電流駆動は、核融合プラズマ内に持続的な電流を流すために必要なプロセスです。電流は、トカマク装置やスフェリカルトカマクのような磁気閉じ込め装置で、プラズマを安定して閉じ込めるために不可欠です。電流はプラズマ内で閉じ込め磁場を作り出し、これにより磁場のトポロジーが制御され、安定した核融合が可能になります。
電流駆動にはいくつかの方法があり、各方法は特定の目的やプラズマの条件に応じて適用されます。主な電流駆動手法としては、以下のものがあります。
1. オーミック電流駆動
これはもっとも基本的な方法で、誘導電流を使ってプラズマ内に電流を流すものです。外部の変圧器を利用して、プラズマ内でオーミック(ジュール)加熱と同時に電流も流されます。しかし、オーミック電流駆動はプラズマが高温になると効率が低下し、特に核融合に必要な数億度に達する前に、オーミック駆動だけでは十分な電流を維持できなくなります。
そのため、オーミック電流駆動を補うために非誘導的な電流駆動方法が用いられます。
2. 非誘導電流駆動
非誘導的な電流駆動は、プラズマをより高温に維持し、持続的な電流を流し続けるために必要です。以下は代表的な非誘導電流駆動の手法です。
a. 高周波電流駆動(RF電流駆動)
低ハイブリッド波電流駆動(LHCD) がその代表です。低ハイブリッド波は、特定の周波数でプラズマ中を伝播し、電子と強く相互作用することができます。この波動を利用して、プラズマ中の高速電子にエネルギーを与え、それによって持続的な電流を駆動します。低ハイブリッド波電流駆動は、特にトカマクの中心部以外の領域に電流を流す際に有効です。
b. 中性粒子入射による電流駆動(NBCD)
中性粒子入射加熱(NBI)でも電流駆動が可能です。高エネルギーの中性粒子ビームをプラズマに打ち込み、ビームがプラズマ中でイオン化されると、高速イオンが生成されます。このイオンが持つ運動エネルギーは、プラズマ内で一方向に電流を流す効果を持つため、追加の電流駆動が行えます。
c. 電子サイクロトロン共鳴電流駆動(ECCD)
電子サイクロトロン共鳴電流駆動(ECCD) は、電子にエネルギーを与えて電流を駆動するための方法です。特定の周波数で電子サイクロトロン波をプラズマに照射すると、電子が共鳴しエネルギーを吸収します。このとき、電子の進行方向に対して適切な位相で波を導入することで、電子を加速し、持続的な電流を駆動できます。
ECCDは、局所的に電流を駆動することができるため、プラズマの電流分布を精密に制御するのに役立ちます。これは特に磁気島や不安定性の制御に有効です。しかし、この方法には 逆電流駆動 と呼ばれる現象が存在します。電子サイクロトロン波を使うと、電子を加速するだけでなく、逆方向に動く電子が生成されることがあり、この逆流成分が電流駆動の効率を低下させる原因になります。
逆電流駆動の問題
ECCDの最大の課題の一つは、電流を駆動しようとする方向と反対向きに流れる 逆電流成分 です。これは、プラズマ中のすべての電子が波動からエネルギーを受け取るわけではなく、一部の電子は逆方向に加速されてしまうことに起因します。この逆電流は、駆動したい方向への電流と干渉し、全体の電流駆動効率を下げる結果を招きます。
逆電流の影響を最小限に抑えるためには、適切な波の周波数選択や、波の進行方向、プラズマの密度や温度などのパラメータを調整する必要があります。研究者たちはこれらの要因を最適化することで、逆電流を抑えつつ効率的に電流を駆動できるような制御手法を探求しています。
結論
電流駆動は核融合プラズマの安定性を維持するために不可欠であり、オーミック電流駆動に加え、非誘導的な電流駆動手法が広く利用されています。中でもECCDは、局所的で精密な電流制御が可能であり、不安定性の抑制に大きく貢献しますが、逆電流駆動の問題が存在します。これに対処するための最適化が進められており、より効率的で安定した核融合プラズマの運転が期待されています。