高周波加熱
#用語解説
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核融合分野における高周波加熱は、プラズマを数千万度以上にまで加熱し、核融合反応を発生・維持させるための重要な技術です。この加熱方法はプラズマ中の粒子(電子やイオン)に特定の周波数の電磁波を照射してエネルギーを注入することで、粒子運動を活性化させ、結果としてプラズマの温度を上昇させます。
核融合実験装置における高周波加熱にはいくつかの主要な方法があり、特定のプラズマ特性や目標とする温度に合わせて使い分けられます。代表的な方法として、イオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRH)、電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)、および低ハイブリッド波加熱(LH加熱)があります。
1. イオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRH)
ICRHは、プラズマ中のイオンのサイクロトロン周波数(磁場の影響でイオンが螺旋運動する周波数)に一致する高周波を用いた加熱方法です。この周波数で電磁波を照射すると、イオンが共鳴しながらエネルギーを吸収し、イオン温度が上昇します。
特徴: 高いエネルギーをイオンに直接注入できるため、イオンの温度を効率よく上げることができます。
応用例: 核融合炉においては、燃料となるイオン(デュートロンやトリトン)を加熱して必要な反応温度に達するように調整する際に用いられます。
2. 電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)
ECRHは、プラズマ中の電子のサイクロトロン周波数に一致する高周波を照射することで、電子を加熱する方法です。電子がエネルギーを吸収し、電子温度が上昇すると、イオンとの衝突によってもエネルギーが伝達され、最終的にプラズマ全体が高温になります。
特徴: 電子温度を効率よく上昇させることが可能で、また局所的な加熱ができるため、特定の領域を集中加熱する場合に適しています。
応用例: 核融合炉の初期加熱に用いられ、電子がイオンにエネルギーを転送することで全体のプラズマ加熱が可能になります。
3.LH(Lower Hybrid)波加熱
LH(Lower Hybrid)波加熱は、低ハイブリッド周波数(イオンと電子の共鳴周波数)で電磁波を照射し、電子の加熱を主目的とした方法です。この周波数帯域の波はプラズマ中で効果的に伝搬しやすく、電子を効率的に加熱できます。さらに、低ハイブリッド波はプラズマの周辺部から中心部まで浸透しやすく、電子を加速させる特性があります。
特徴: LH加熱は特にプラズマの電流駆動(非誘導的電流駆動)にも使われるため、トカマク型装置などでプラズマの閉じ込めを安定化するために有用です。電子を加熱し、プラズマ中に安定した電流を発生させることで、核融合反応の持続時間を延ばすことができます。
応用例: 長時間の核融合プラズマを維持するトカマク装置や、プラズマの安定化と高温維持が求められる実験において、効率的な加熱と電流駆動を両立させるためにLH加熱が使われます。
高周波加熱の役割と意義
核融合においては、数百万〜数千万度に達する超高温が必要であり、従来の方法で加熱するのは非常に難しい課題です。高周波加熱は非接触でエネルギーを注入でき、プラズマの中心部から均一に加熱を行えるため、特に磁場閉じ込め型の核融合装置では不可欠な技術です。また、加熱だけでなく、電流駆動やプラズマの安定化にも寄与するため、核融合プラズマの持続的な運転と効率的なエネルギー制御を可能にしています。
高周波加熱の進展によって、将来的にはより効率的かつ安定的に核融合反応を維持することが期待されています。