空海
概要
仏教哲学界における、空前絶後のスーパースターは誰か、というと
それは空海しかいないのではないか
まず、名前が、空ときて、海である
名前が、もう、すごい
経歴や業績など、すごいところは数えだしたらキリがないが
十住心論のすごさが、空海のすごさをもっとも端的に象徴しているように思われる
どんな内容か
異生羝羊心 - Lv.1 欲望のままに行動し、その結果苦にまみれている、その自分の状況にも無自覚
愚童持斎心 - Lv.2 あるきっかけで「これじゃだめだ、さすがにちょっと、どうにかしよう」と考え始める
嬰童無畏心 - Lv.3 「いっそのこと、遥か彼方の救いの境地まで行くべきだ」と考え始める
唯蘊無我心 - Lv.4 いやまてよ、「救いを求める私」って、実在するのか?と疑問を持つ
抜業因種心 - Lv.5 「苦」から開放されるには、根本原因を扱う必要があると気づく
他縁大乗心 - Lv.6 自分だけが救われるべきなのでなく、衆生みなが救われるべきなのだと気づく
覚心不生心 - Lv.7 救われよう、とか、救おう、とか、そういうものの見方の無意味さを思い知る
一道無為心 - Lv.8 歩んできた向上の道やあらゆる教えが虚構であり、フィクションであったことを理解する
極無自性心 - Lv.9 部分と全体の根本的構造を悟る
秘密荘厳心 - Lv.10 言葉にできない真理を、先輩から直接授かる
何がすごいか
その成立背景から理解する必要がある
当時、色んな人がいろんなことを好き勝手教えたり、信じたりしていた
その状況を俯瞰、整理した論文
こうしたことを、ちゃんと整理しなければ、政府の政策意思決定がきちんとしない、という切実な問題があった
それに対して空海は、各種の教えを俯瞰整理していくなかで、仏教哲学の骨格がよく分かるようにもしたのだった
上記は、ざっくりと、儒教、道教、老荘、声聞・縁学、唯識、法相・中観、天台、華厳、真言、の順番を構成している
色んな教えをこうして並べることで、仏教哲学におけるメタ構造を暗示している
どういう順番で悟りを開けばよいのかを、明らかにしてしまっている
空海の聖俗一如
有り体にいえば、上記は「格付け」であり
ちゃっかり、論的よりも自分の担ぐ教えのほうがエラいんだぞ、と主張しており
あるいは「お悟りを開くための10ステップ」的なマニュアルとも言える
表面的に見ると、非常に俗っぽいことをやっている
十住心論以外でも、俗っぽいことはたくさんやっていた(貴族へのお手紙大作戦、とか)
そもそも遣唐使に乗ったのも、おそらく「どうにかこうにか潜り込んだ」感じがあり
「人たらし」な感じ、戦術的な巧みさが目立つ
では、単なる茶坊主だったのか?というと
実業面では、橋をかける公共事業の指導をやったり、まさに八面六臂の活躍
権力者に十住心を説いていたのも、根本的には「国家秩序をいかにして作るのか」なのであった
そうした全体像を知っていくと、根本の動機が私利私欲ではなく、公共の福祉であったように見える
いわば、スーパープロデューサー、とでもいうべき偉人であり
たとえば鈴木敏夫の研究をやりたいのは、氏がその系譜の人なのだと思う
明恵がクリエイターであったというのは、まさに永井さんの慧眼
聖(ひじり)の系譜の人、と言えるだろう
あるべきやうわ、もまた必読
では、お釈迦さまは、どちらの系譜の人なのか?、というのは非常にエキサイティングな問いである
それはそれとして
空海がここまで綺麗に整理したがゆえに生まれたのが、阿弥陀信仰と禅だったのではないか
法華経が仏教界のルイヴィトンだとすると
華厳はエルメス、という感じ
阿弥陀信仰には、ユニクロのにおいがする
つまり、多くの人に広く開かれている、という