強度増加率って何なの?
初等的な土質力学の教科書には載っているが、限界状態モデルなどを説明している文献に当たるとパタリと姿を消す意味不明なやつtakker.icon
なんなの?そんなに重要じゃないの?それとも実務向けの指標なの?
父から強度増加率は限界状態定数に相当するらしいようなヒントを得たので、それを基に文献を漁ってみる
厳密に同じかとも思っていたのだが、どうやら強度増加率は全応力による定義っぽいので違いそう
対象の土
練り返した粘土の正規圧密粘土で問題ないはずtakker.icon
2025-04-11時点でのtakker.iconの理解
$ m:=\frac{\frac12q}{p_0'}
$ p_0':等方圧密時の平均有効応力
$ q:破壊時の軸差応力
調査過程
強度増加率とPc-qu関係図
定義なし、参考にならない
盛土に伴う軟弱地盤の強度増加推定法について
剪断前の平均有効応力を分母に使っている
圧密による粘土の強度増加量について
柴田徹、田河勝一
柴田徹さんが飽和粘土の強度増加率, cw/p,についてを書いてるっぽいtakker.icon
『第3版 土質力学』の参考文献より
https://cir.nii.ac.jp/crid/1571135650488025472
第20回土質工学シンポジウム論文集に入っている
家にあるかな……?
2024-12-24 22:03:29 数週間くらい前に入手した
単純せん断試験による飽和粘土の強度増加率Cu/Pの算定法
土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブスから見つかる
手書き
あまり関係なさそう
土質力学の講義ノートPDFで言及されてたもの
H17年度 後期 「土質力学Ⅰ及び演習」(2回生配当)
【一軸圧縮試験と三軸圧縮試験による飽和粘土地盤のせん断強度調査】
from H16年度 「土質力学Ⅰ及び演習」
強度増加率自体の説明はない
土質力学 講義資料 | 東京理科大学 地盤工学研究室
全文検索では見つからなかった
『わかる土質力学220問―基礎から公務員試験までナビゲート』
$ \frac{c_u}{p'}で定義してる?
あ~~~もう$ p'なのか$ pなのかわからん!!!takker.icon
「強度増加率+限界状態線」で検索
圧密過程における粘土の非排水強度の評価法
関係あるかも
2024-12-24 22:01:55 調べた当時は気づかなかったが、p3に一定になることが書かれていた
土質力学Ⅰ及び演習 せん断(担当 小高)第12回小テスト(2004/07/07)解答例
限界状態定数と強度増加率を求めている
解く
CUC条件を想定
$ (p_0'/\mathrm{kPa},q_f/\mathrm{kPa})=(100,120),(200,240)
初期は等方圧密状態だから、$ p_0=p_0'
側圧一定なので、$ \sigma_{r\bullet}=p_0
$ q_\bullet=|\sigma_{a\bullet}-\sigma_{r\bullet}|
$ =\sigma_{a\bullet}-\sigma_{r\bullet}
$ \because三軸圧縮条件
$ p_\bullet=\frac13(\sigma_{a\bullet}+2\sigma_{r\bullet})
$ =\frac13(q_\bullet+\sigma_{r\bullet}+2\sigma_{r\bullet})
$ =\frac13q_\bullet+\sigma_{r\bullet}
$ =\frac13q_\bullet+p_0
Skemptonの間隙水圧式$ u_f=A_fq_fと$ A_f=0.5(与条件)より、
$ p_f'=p_f-u_f=p_f-\frac12q_f=\frac13q_f+p_0-\frac12q_f=p_0-\frac16q_f
限界応力比を求める
$ \Mu=\frac{q_f}{p_f'}=\frac{q_f}{p_0-\frac16q_f}
これだけだと$ \Mu=\rm const.とは言えないが、実験事実から一定になることが知られている
強度増加率を求める
非排水剪断強度$ c_{cu}:=\frac12q_f
$ m=\frac{c_{cu}}{p_0'}=\frac{q_f}{2p_0}
計算
$ \therefore(p_f'/\mathrm{kPa},q_f/\mathrm{kPa})=(100-20,120),(200-40,240)
$ = (80,120),(160,240)
$ \therefore\Mu=\frac{120}{80}=\frac{240}{160}=\frac32
$ \therefore m=\frac{120}{200}=\frac{240}{400}=\frac35
$ \Mu,mともに一定値になる
強度増加率を限界応力比で表す
$ (p_0-\frac16q_f)\Mu=q_f
$ \iff p_0\Mu=q_f(1+\frac16\Mu)
$ \iff q_f=p_0\frac{\Mu}{1+\frac16\Mu}
$ m=\frac{q_f}{2p_0}=\frac12\frac{\Mu}{1+\frac16\Mu}
つまり、練り返した粘土をCUC条件側圧一定で剪断したとき、強度増加率が一定になることがわかる
もっと一般化して、どの状態の時までこれを示せるのか調べたいtakker.icon
等方圧密状態にした練り返した粘土を用意する
等方圧密状態:$ q_0=0,p_0'=p_0ということ
正規圧密状態かは問わない
任意の応力経路で変形させ、$ (q_f,p_f',v_f)で破壊したとする
$ v_\bullet:比体積
限界状態モデルより
$ \Mu=\frac{q_f}{p_f'}=\rm const.
正規圧密線$ \left.v\right|_{q=0}=N-\lambda\ln p'
限界状態線$ \left.v\right|_{q=\Mu p'}=\Gamma-\lambda\ln p'
$ N>\Gamma
そうだ、限界状態線に乗るのは正規圧密状態のときだけだったtakker.icon
過圧密状態のときはここからずれる
てことは限界状態線を使う以上、正規圧密状態のことしか語れないのか
過圧密粘土のことに言及するには、Cam-clayモデルなどの具体的な弾塑性モデルが必須になる
$ \lambdaは応力比$ \frac{q}{p'}に依存しない
$ N,\Gammaを応力比$ \frac{q}{p'}の函数$ \chiとして一般化しておく
$ N=\chi(\frac{0}{p'})=\chi(0)
$ \Gamma=\chi(\Mu)
状態境界面$ v:(q,p')\mapsto\chi(\frac{q}{p'})-\lambda\ln p'
正規圧密状態ならこの面上を動く
$ \chiに線型補間$ \chi(q,p')=\chi(0)+\frac{\chi(\Mu)-\chi(0)}{\Mu}\frac{q}{p'}を代入するとCam-clayモデルに、非線型補間$ \chi(q,p')=\chi(0)+\frac{\chi(\Mu)-\chi(0)}{\ln2}\ln\frac{\Mu^2+\frac{q^2}{{p'}^2}}{\Mu^2}を代入すると修正Cam-clayモデルになる
$ p_f'を限界状態線で表す
$ v_f=\chi(\Mu)-\lambda\ln p_f'
$ \iff \ln p_f'=\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}
$ \iff p_f'=e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}}
強度増加率$ mは
$ m=\frac{\frac12q_f}{p_0'}
$ =\frac12\Mu\frac{p_f'}{p_0'}
$ =\frac12\frac{\Mu}{p_0'}e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}}
これが任意の練り返した粘土で成立する強度増加率の式となる
$ v_f,p_0'によって変化するのかtakker.icon
一定になる条件を探る
載荷前が正規圧密状態だったならば、正規圧密線から$ p_0'を$ v_0\ (=v(0,p'))で表せる
$ m=\frac12\Mu\frac{e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}}}{e^{\frac{\chi(0)-v_0}{\lambda}}}
$ =\frac12\Mu e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}-\frac{\chi(0)-v_0}{\lambda}}
$ =\frac12\Mu e^{\frac1\lambda(\chi(\Mu)-\chi(0)-v_f+v_0)}
CU条件の場合、$ v=\rm const.だから
$ =\frac12\Mu e^{\frac1\lambda(\chi(\Mu)-\chi(0)-v_f+v_f)}
$ =\frac12\Mu e^{\frac{\chi(\Mu)-\chi(0)}{\lambda}}
強度増加率$ mを土の材料定数$ \Mu,\lambda,\chiのみで表せた
これは、CU条件(CUC条件でもCUE条件でもいい)な正規圧密粘土のとき、強度増加率が一定になることを表している
土の限界状態モデルから強度増加率一定の性質を導出できた!takker.icon
やった~
めっちゃすっきりしたtakker.icon*3
過圧密粘土の強度増加率が一定になることは言えない?takker.icon
より一般化できないか?
$ \mathrm dm=-\frac12\frac{\Mu}{{p_0'}^2}e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}}\mathrm dp_0'-\frac12\frac{\Mu}{p_0'}e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}}\frac{\mathrm dv_f}{\lambda}
$ = -\frac12\frac{\Mu}{p_0'}e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}}\left(\frac{\mathrm dp_0'}{p_0'}+\frac{\mathrm dv_f}{\lambda}\right)
$ = -\frac12\frac{\Mu}{p_0'}e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}}\mathrm d\left(\frac{v_f}{\lambda}+\ln p_0'\right)
$ = -\frac12\frac{\Mu}{\lambda p_0'}e^{\frac{\chi(\Mu)-v_f}{\lambda}}\mathrm d\left(v_f+\lambda\ln p_0'\right)
へー。つまり$ v_f+\lambda\ln p_0'=\rm const.なら強度増加率が一定になるのか
正規圧密状態で開始した場合
$ v_f+\lambda\ln p_0'=v_f+(\chi(0)-v_0)
$ =(v_f-v_0)+\chi(0)
$ v_f-v_0=\rm const.、つまり載荷開始時と限界状態時の比体積の差が常に一定なら、強度増加率も一定になる
CU条件は$ v_f-v_0=0=\rm const.だから強度増加率が一定になる
$ v_f=\chi(\Mu)-\lambda\ln p_f'による変形
$ v_f+\lambda\ln p_0'=\chi(\Mu)+\lambda\ln\frac{p_0'}{p_f'}
$ \frac{p_0'}{p_f'}=\rm const.なら強度増加率が一定になる
というか、$ m=\frac12\Mu\frac{p_f'}{p_0'}だから当然だtakker.icon
あんまり意味のない変形だった
神戸大学工学部市民工学科 土質力学Ⅱ金曜1&2限(8:50-12:10)授業資料_05
これビンゴかも
限界状態定数と強度増加率の定義が図付きで丁寧に載っている
例題もある
過圧密粘土の強度増加率までは示していない
過圧密比$ \mathrm{OCR}:=\frac{p_c'}{p_0'}
$ p_c':圧密降伏応力
過圧密状態のqp'v空間上の面を膨張指数(膨潤指数)$ \kappaで次のように表しておく
$ v=\chi_{oc}(\frac{q}{p'})-\kappa\ln p'
/takker-books/7.4.3 過圧密粘土のせん断強度によると
$ c_{ocu}=c_{cu}\mathrm{OCR}^{1-\frac{\kappa}{\lambda}}
だから、ここから過圧密粘土の強度増加率を示せる
/takker-books/4.2 サンドドレーン工法
c_uを使って$ \frac{c_u}{p}としていた
SoM2-2022S-5のメモでは$ \frac{c_u}{p_0'}としてる
平均有効応力にしちゃってる
理解が半端なときのメモだから、おそらく誤りtakker.icon
定義がちゃんとわかりそうな文献
『第3版 土質力学』
/takker-books/7.4.1 正規圧密粘土の非排水せん断強度
$ c_u=mp_0(7.27)
わかったtakker.icon
$ p_0表記だが、これは等方圧密時の応力だから、平均有効応力$ p_0'と等しい
つまり、正規圧密粘土の非排水剪断強度とその時の平均有効応力との応力比を強度増加率と定義している
『理工系の基礎 土木工学』 7.6.e. 正規圧密粘土の圧密による強度増加率 p.122
飽和粘土の状態には正規圧密と過圧密状態があることは先に述べた。正規圧密と過圧密状態にある飽和粘土は,非排水三軸圧縮試験で異なる挙動を示す。ここでは正規圧密粘土について取り上げる。
図 7-36 は,さまざまな等方圧密圧力$ \sigma_0'にある飽和した正規圧密粘土の非排水三軸圧縮試験のが$ p'-q図(有効応力経路)を示している.この図において,圧密による強度増加率 $ m を,等方圧密圧力$ p'-qに対する非排水せん断強さ$ c_uの比として、次式により定義する。
$ m=\frac{c_u}{\sigma_0'}=\frac{q_\mathrm{max}/2}{\sigma_0'} (7.80)
図7-36 に示すように,正規圧密粘土の有効応力経路はほぼ相似している。これから圧密による強度増加率$ mは,ほぼ一定となる.つまり,圧密圧力が2倍に増えると,非排水せん断強さも2倍に増えることになる。
2024-11-21 14:55:36 ここまでで、正規圧密粘土の非排水剪断強度と平均有効応力との比で定義されることはわかったtakker.icon
非排水剪断強度は、過圧密粘土の非排水剪断強度に替えて過圧密粘土の強度増加率ともできる
わからないこと
✅いつの時点の平均有効応力を使うのか
『理工系の基礎 土木工学』だと、剪断開始時の平均有効応力を使っているみたい?
破壊時の平均有効応力との比ではないのか?
三軸試験は側圧一定で軸応力を増やすので、平均有効応力は変化する
/takker-books/7.4.3 過圧密粘土のせん断強度の記述を見るに、剪断前の平均有効応力を使っているみたい?
剪断前っぽいなーtakker.icon
#2025-06-03 11:57:33
#2025-04-11 18:32:13
#2024-12-24 22:02:24
#2024-11-21 13:17:19