論理的思考とは何か
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本書は、論理的思考法が世界共通ではなく、思考の目的に応じて適切な方法を選ぶ必要性を説いています。具体的には、論理学、レトリック、科学、哲学の推論の型とその目的を整理し、経済、政治、法技術、社会の四つの領域に紐付けられた思考法を使い分ける「多元的思考」を提唱しています。
著者の渡邉雅子氏は、コロンビア大学大学院で博士号(社会学)を取得し、現在は名古屋大学大学院教育発達科学研究科の教授を務めています。専門は知識社会学、比較教育、比較文化であり、これらの視点から論理的思考の文化的側面を分析しています。
本書は、発売前から増刷を重ね、約1ヶ月で5刷38,000部を突破するなど、異例のヒット作となっています。その背景には、論理的思考に対する新たな視点を提供し、多くの読者の関心を引いたことが挙げられます。
目次
論理的思考法は世界共通ではない。思考する目的をまず明確にしてその目的に合った思考法を選ぶ技術が要る。論理学・レトリック・科学・哲学の推論の型とその目的を押さえ、価値に紐付けられた四つの思考法(経済・政治・法技術・社会)を使い分ける、多元的思考を説く。不確実なこの世界で主体的に考えるための一冊。
目 次
はじめに──論理的思考はひとつなのか
序 章 西洋の思考のパターン──四つの論理
1 論理学、レトリック、科学、哲学の論理と思考法の比較表
2 論理学の論理
拙著では3つ目の正しさとして「意思決定の正しさ」を挙げて、その二つの正しさのどちらとも違うという話をした。 論理学は「厳密に考えることを習慣づける」と書いているが、あるものがTrueかFalseかを明確にすることを習慣づけるのであって、その副作用として「True/Falseで割り切れない可能性」を無視して見えにくくする
もちろん「どこまでが確実にTrueと言えるのか」という思考方法は有用なことも多い
しかし、TrueともFalseとも言えない問題に対して、無力感を感じたり、対処方法がわからなくてスルーしてしまったりする原因にもなる
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曖昧性の排除: True/Falseで割り切れない曖昧な領域や、複数の真理が共存する可能性を意識しにくくなる。
複雑な現実の単純化: 現実の多層的な要素が見えにくくなり、割り切れる論理だけに頼りすぎる可能性がある。
社会や文化的な問題では、真偽ではなく「多様な視点」や「価値観」が重要。
論理学的アプローチだけで判断すると、柔軟性や包括的な思考が欠けることがある。
アリストテレスが論理学(厳密な推論の学問)を体系化しただけでなく、同時にレトリック(説得の技術)の必要性を強調したという点は非常に興味深いnishio.icon
目的志向GPT.icon
レトリックは「何が正しいか」ではなく、「どのように聴衆を動かすか」に重きを置きます。
真偽という抽象的な基準ではなく、具体的な行動や同意を引き出すことを目的とします。
レトリックにおいては短い方が有益だから大前提を省略する、面白いnishio.icon
長年の蓄積である「論証の型」から適当なものを選んで使う、という話、AIが明示的にそれを使うと面白いかも
これは利益を最大化するテクニックだから、個人の利益のために使っているのではなく、公共の利益のために使っているんだと認識されることが有益なわけね
4 科学的発見の論理
レトリックは常識をベースに好ましい結論を導くのに対して、科学は常識に反した観測事実を元に新しいモデルを作る
ユーザテストでも拡張的思考が行われてる
自分の思い込みに反した振る舞いをするユーザがいるという観測事実から、その振る舞いが出てきた理由を考える
人間の知識や信念は常に誤りうるものであり、完全な確実性を持つことはできない、という哲学的な立場です。]
可謬主義は、カール・ポパーの科学哲学にも影響を与え、「反証可能性」の概念と密接に結びついている。 5 哲学的探究の論理
哲学は前提を問うnishio.icon
その手段の一つがソクラテス的問答であり、ヘーゲルの弁証法
フランスの高校ではヘーゲルの弁証法を練習させられるとのこと
ソフトウェアをユーザに使わせて、意外な使い方を発見して改善するのは科学のパターンで、そのソフトウェアを広いユーザに使わせるのはレトリックのパターンだねnishio.icon
「マスに受け入れられるツールを作る」という目的は分解される
「マスに受け入れられるためにはどのような機能が必要か」は科学
「作ったツールをどのようにしてマスに受け入れさせるか」はレトリック
これを明確に分離して考えたことはなかったかも
第一章 論理的思考の文化的側面
1 何が〈論理的〉だと感じさせるのか
論理的とは「読み手にとって必要な要素が読み手の期待する順に並んでいることから生まれる感覚」面白い、主観的nishio.icon 階層や地域や言語によって多様な文化集団が国を構成しているが、統合する文化が必要なので支配者の文化が教えられる(ブルデュー 2012) 2 論理と文化──価値の選択と優先順位
目的の優先順位に価値観があらわれる、これによって「論理」が選択される、面白い
3 論理と合理性
4 経済・政治・法技術・社会のそれぞれの論理
この四象限マトリクスは微妙だよな〜とAIと話してて、ふと思いついてそのログを参考にしてAIに論じさせてみたnishio.icon
第二章 「作文の型」と「論理の型」を決める暗黙の規範──四つの領域と四つの論理
1 求められる作文の型を知る
「十分考えたか」が問われる
ディセルタシオンのフォーマットではヘーゲル的正反合をした後でまとめてから次の質問を提起して終わるの面白いな
多人数議論プラットフォームはそういう形で議論を続けた方が良いかも
エッセイは結論を最初に明示するのに対して、ディセルタシオンは正反合過程で視野が広がることに価値を見出す
ディセルタシオンでは「私はどう思う」ではなく古典の引用で正当化するようだが、現代においては対立の見出しや、引用を「大衆の発言」からピックできるかもね
エンシャーでは第一原理が外部から与えられて批判の対象ではない、という指摘は面白い、法律と神学の共通点として語られている
結論を出さずにメッセージを伝えることが大事、という価値観は面白い
イランではことわざが指す概念を考えることなく想起できるような訓練がなされている、興味深い
日本の作文は社会の構成メンバーに共感されることを目的としたものである論、面白い 感想文と意見文と小論文の区別が興味深い
綴方が日本のプラグマティズムとして評価されてる話、面白い 日本的な方法ではまず体験が語られそこから要素が出てくる、いきなり結論が出てくるエッセイとは違いがある
第三章 なぜ他者の思考を非論理的だと感じるのか
1 「自己の主張」の直線的な論証(経済)とは相容れない論理
2 弁証法の「手続き」(政治)とは相容れない論理
3 「ひとつに決まる結論」(法技術)とは相容れない論理
4 他者への共感(社会)とは相容れない論理
終 章 多元的思考──価値を選び取り豊かに生きる思考法