レトリック
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「説得術としてのレトリック(修辞学)」は、古代ギリシャに起源を持つ概念であり、哲学や思想史において重要な位置を占めています。その発展と意義を哲学史的に以下のように解説します。 時代背景: 古代ギリシャ(紀元前5世紀)、民主政のアテナイでは、市民が政治的・法的議論を通じて意思決定に参加する必要がありました。このため、「説得の技術」としてのレトリックが発展しました。 市民の政治参加が説得術を発展させたという歴史は多くの市民が政治的議論に参加できるようになりつつある現代にも示唆がありそうnishio.icon ソフィストたち:
2. プラトンとレトリック批判
プラトンの立場:
彼にとって、レトリックは「真理」を求める哲学とは対照的に、聴衆の感情を操作して誤った結論に導く技術であり、「お世辞」や「魂の料理術」に過ぎないとされました。
真の説得術は、対話を通じて理性的に「真実」に到達する哲学的議論にあるべきだと考えました。
『弁論術』の成立:
アリストテレスは、プラトンとは異なり、レトリックを有用かつ倫理的に運用可能な技術として捉えました。
話し手が倫理的であるなら、つまり私的利益のために説得するのではなく、公共の利益のために説得するなら、「聴衆の感情を操作して特定の結論に導く技術」でも有用かつ倫理的だろと言う話、そうとも言い切れないけどなnishio.icon
レトリックを「ある事柄について、与えられた状況の中で可能な限り説得的に話す技術」と定義し、これを論理学(ロゴス)の補完として位置づけました。
三つの説得の手段:
ロゴス (logos) - 論理的な議論による説得。
パトス (pathos) - 聴衆の感情を喚起する力。
エートス (ethos) - 話者の人柄や信頼性。
彼は、レトリックが「弁証術(dialectic)」と並んで実践的知識の一環として、倫理的にも重要であるとしました。
4. ローマ時代: キケロとクインティリアヌス
ローマの雄弁家キケロは、レトリックを政治や法の場での不可欠な技術と捉え、これを「善き人が善き目的のために用いる技術」としました。
『弁論家について』で、弁論家の資質として幅広い知識と倫理的行動を挙げています。
『弁論術教程』では、レトリックを教育の中心に据え、「理想の弁論家」として「道徳的に優れた人間」を目指しました。
5. 中世から近代: レトリックの変遷
中世:
キリスト教的な文脈で、レトリックは説教術や神学的議論の道具として使用されました。
アウグスティヌスは、レトリックを神の真理を説くための手段としました。
ルネサンスと近代:
ルネサンス期には、古典的レトリックが復興し、政治や文学で重要性を取り戻しました。
フランシス・ベーコンやデカルトは科学的方法の確立を重視し、レトリックを感情的で非論理的なものとして批判しましたが、啓蒙時代には再評価の動きもありました。
6. 現代: レトリックの再評価
20世紀以降:
言語哲学や社会学、修辞学研究において、レトリックは単なる説得術ではなく、言語による人間の相互作用や意味の構築に関わる広範な技術として再評価されています。
ケネス・バークやシャイヨンなどが、レトリックを「シンボルの使用」による人間の行動の誘導と定義し、政治や文化における役割を分析しました。