ティンバーゲンの四つのなぜ
alias: ティンバーゲンの4つのなぜ, ティンバーゲンの4つの問い
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ニコ・ティンバーゲンは生物学者が「なぜある生き物がある形質を持っているのか、もしくはある特定の行動をするのか」と問うとき、四つの全く異なる種類の「なぜ」という問いに対する答えを求めているのだと論じた
究極要因
1. 機能(適応)
なぜこの形質が進化したのか、自然淘汰における優位性についての問い
ダーウィンの自然選択による進化の理論は、なぜ動物の振る舞いが通常、おのおのの環境の中で生存と繁殖のために「良くデザインされている(少なくともそのようにみえる)」かの唯一の科学的説明である。
例えば鳥は食物と暖を取るために冬には南へ渡る。ほ乳類の母親は子どもを育て、それによって生き残る子の数を増大させる。
2. 系統発生
どんなルートをたどってその形質を持たない祖先からその形質を持つ種が生じたのか、進化史についての問い
系統発生、すなわち「現在の生物がどのような進化の経路をたどってきたか」は機能/適応以外の全ての進化的な説明に関わる。自然選択が最適なデザインを達成できないかも知れないいくつかの要因がある(Dawkins 1982; Mayr 2001:140-143; Buss et al. 1998)。
例えば小集団に起きる遺伝的浮動や創始者効果、環境的な突発的な出来事(気候変動など)のように、進化は偶然の過程も伴う。
また初期の進化的発達の結果、制約が生まれることがある。多くの表現型が系統発生の過程で維持されるために、個体は過去の様々な世代の特徴を引き継ぐ。これは形態にも行動にも当てはまる。
種の系統発生がどのようなものであったかを再現することは、現在の形質の「独特さ」の理解につながる。
例えばヒトも含めた脊椎動物の眼は盲点を持つが、タコの眼は持たない。それぞれの系統で独立して眼が何とかして作られた。いったん脊椎動物の眼が作られたあとは、「十分機能し、かつ盲点なしの眼」という過程を経ることがなかった。
至近要因
3. 原因(至近メカニズム、直接的な原因)
どんな生理学他の至近要因のおかげで生物がこのようにふるまうことができるのか
これらは至近メカニズムの例である
脳: ブローカ野は文法の使用のために重要である。
ホルモン: 生物の個々の細胞間で行われる通信用の化学物質である。例えばテストステロンはいくつかの種で攻撃的な振る舞いを刺激する。
フェロモン: 同じ種のメンバー間での通信に用いられる化学物質である。例えば犬や蛾などでは仲間を引きつけるためにフェロモンを用いることはよく知られている。
現生の生物を調べるときに、生物学者は複雑さの様々なレベル、例えば化学レベル、生理レベル、精神レベル、社会レベルに遭遇する。
研究の主題はレベル間の機能的な因果関係である。
生理学(行動生理学)分野ではとりわけホルモンやニューロンの解明が注目される。
例えば社会的、生態的状況、個々の行動がホルモン濃度やニューロンの状態に与える影響などである。
ほ乳類では出産時のストレスは陣痛を抑える効果を持つ。
下位レベルの研究は上位レベルを理解するための必要条件である。
しかし、神経細胞の化学メッセンジャーの理解だけでは、神経解剖学的な構造や行動の理解には不十分である。
ニコライ・ハルトマンが「複雑さのレベルの規則」で述べたように、「全体はその部品の単なる合計以上である」。
全てのレベルは等しく重要であると認識されなくてはならない。
4. 発達(個体発生)
どのようにその形質を持たない受精卵からこの形質が発達しているのか、生まれと育ちのバランスの問い
20世紀後半に社会科学者は人間の行動が「生まれ(遺伝)」か「育ち(文化を含む、発達期の環境)」の結果であるかを議論した。(氏か育ちか)
生物学者の間の総意は現在、行動が遺伝と環境の相互作用の産物であると言うことである。(相互作用説)
そのために、全体は部分の総和(遺伝と環境の合計)以上であり得る。
全体は部分の総和ではない
対照的に、身長は「高さ遺伝子」と食糧の豊富さの合計であるかも知れない。
相互作用の例(構成要素の合計以上であるという例)は幼児期の習慣に関係する。
いくつかの種において、個体はなじみの深い個体を好むが、同時にあまりなじみの深くない相手とつがうことを好む(Alcock 2001:85-89, Incest taboo, Incest)。つがい行動に影響する遺伝子とは異なって、共に暮らすことに影響する遺伝子が環境との相互作用によってつがい行動にも影響を与えていると推測されている。
相互作用の例は植物にもある。
いくつかの植物は重力に反して成長し(重力屈性) 、他のいくつかの植物では光の方向へ成長する(光屈性)。そのような種は異なる遺伝子のために同じ環境に対して異なる反応を示す。
発達上の学習の多くは臨界期を持つ。
例えば人間の言語の獲得やガチョウの刷り込みなどである。このような例では遺伝子は環境の影響を受けるタイミングを決定する。
同様の概念に「学習バイアス」(Alcock 2001:101-103)や「準備された学習」(Wilson, 1998:86-87)がある。
例えば、食事をした後に続けて不快な気分(吐き気など)にさせたラットは、その食物を臭覚と結びつける。音とは結び付けない(Alcock 2001:101-103)。(食物嫌悪学習)
多くの霊長類ではわずかな経験でヘビを恐れることを学習する(Wilson, 1998:86-87)。
一方で、これらは論理的に異なるため、一つ一つの問いに答える中で、どれか一つの問いへの答えが、別の問いへの答えが取りうる幅を狭めることはない
これは重要なことで、私たちは他の問いについて悩むことなく、順番に問いに挑んでいくことができる
これらの答えはかなり異なってはいるが一貫性があり、相補的であり、混同してはならない。ティンバーゲンの4つのなぜ - Wikipedia