アメリカの格差問題
アメリカの経済格差
2026-05-31 The New Inequality
「なぜ人々はこんなに経済に不満なのか? GDPの伸びじゃなくてその分配を見ろ」とWSJのGreg Ipが書いてるが、まったくその通り。賃金は国民所得に占める割合が下がり、企業利益はどんどん増えている。
経済の不公平感・「システムは普通の人に不利にできている」という怒りが広がっているが、その根本には現実がある:経済的果実がますます株主の利益として資本側に流れ、労働者の稼ぎとしては流れてこなくなっている。
しかも富の集中がさらに進んでいて、不労所得の大半はごく少数のトップ層に集まっている。
「アメリカの格差は数十年前より遥かに拡大した」というのは今や広く認識されているが、格差論議はまだ古い認識に縛られている——つまり「格差拡大=教育格差・スキル格差による賃金格差」という話だ。
だがその「教育プレミアム」ストーリーはもともと完全に正しいわけでもなく、当てはまるとしても主に1980〜2000年の話。それ以降、とくに近年は話が違う。
今の格差の主役は**「オリガルキーの台頭」**だ。経済の果実がますます、資産から収入を得る少数エリートに集中している。
このオリガルキー化の現実は単に「なぜ今みんな不満なのか」を説明するだけでなく、AIの影響など将来を考えるうえでも重要。
ペイウォール以降の議論
1980〜2000年の「昔の格差」(学歴・賃金格差型)とその後の無関係さ
利益拡大・賃金停滞の経済学的メカニズム
富の集中がどこまで進んでいるか
AIは格差の終末的爆発を引き起こすか?
オリガルキーの政治経済学
2026-05-11 Will our Hyper-Gilded Age Usher in Genuine Populism?
現状認識:ただの「金ピカ時代の再来」じゃない、もっとひどい
80年代レーガン以降、格差が拡大し「第二の金ピカ時代」と言われてきたが、それは甘い。今はもっとタチが悪い
ガブリエル・ズックマン(格差研究の世界的権威)によれば、富の集中度は往時の金ピカ時代のピークすら超えた
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所得格差は90年代以降いったん横ばいになったが、富の集中は今なお加速中
昔の強盗男爵より今のテックブロのほうがダメな理由
カーネギーら旧世代の富豪は(問題だらけではあれ)慈善事業にそれなりに金を使った
イーロン・マスクやピーター・ティールは慈善寄付がほぼゼロ。ザッカーバーグやベゾスも大差なし(Forbesより)
より重大なのは政治権力の乱用:シチズンズ・ユナイテッド判決以降、選挙に無制限に金を流し込める
ティールがJ.D.ヴァンスの上院選をPACマネーで買収→今や大統領の一歩手前の地位に
マスクは2025年に米政府の重要部分を実質支配し、対外援助を壊滅させた。その結果、すでに数十万人(大半が子供)が死亡、今後さらに数百万人規模の死者が見込まれる
DOGEは失敗
それでも反撃の政治的チャンスはある、という話
世論調査では、MAGAリパブリカン以外のほぼ全員が「貧富の格差は重大問題」と考えている
トランプ政権の腐敗への怒りは中間選挙の主要争点になりつつある
NYCの高額別荘税計画やカリフォルニアの一時的富裕税案に対し、富裕層は「迫害だ」「ソ連と同じだ」と大騒ぎしているが、これは彼らの常套手段
超富裕層の権力を問題視することは「急進左派」でも「反中道」でもない。圧倒的多数のアメリカ人が共有する常識的な立場
G・エリオット・モリスの分析では、「中道派」を自称する有権者でも、ポンディットが「中道主義」と呼ぶものを実際には支持していない
結論:FDRを見習え、憎まれを恐れるな
真のポピュリズムを掲げる政治家は富裕層から猛烈な資金投入つきの攻撃を受けるだろう
しかし今の富豪たちが何者で何をしてきたかを考えれば、「俺はあいつらに憎まれて結構だ」とFDR流に宣言できるリーダーには大きな政治的勝機がある
Feb 21, 2026 Talking With Ro Khanna - Paul Krugman
シリコンバレー選出のリベラル議員Ro Khannaがクルーグマンと対談して、テック富豪の増長・AI・暗号通貨・格差・カリフォルニア住宅問題など手当たり次第にしゃべった記録。要するに「金持ちが調子乗りすぎ、政府ちゃんとしろ」
【カンナ】シリコンバレーの格差はシャレにならない。 自分の選挙区だけで時価総額18兆ドル。でも東サンノゼでは住宅費が払えない人がゴロゴロいる。テック富豪と庶民が同じ選挙区に住んでいるという地獄みたいな状況で、富豪への増税を訴えたら案の定嫌われた。
【カンナ】PayPalマフィア(マスク、ティール、サックスら)はただの守銭奴じゃなくてイデオロギー野郎だ。 「俺たちのほうが民主主義より賢く資本配分できる」というアイン・ランド的確信犯で、だからこそ始末が悪い。単なるグリードなら交渉の余地もあるが、これは世界観の問題。
【カンナ】公共投資で育ったのに「俺は自力で成功した」と言い張るのがお笑いぐさ。 DARPAやNSFの資金でAIもGoogleも生まれたのに、今の世代はその事実を無視か黙殺。ヒューレットやパッカードの世代は地域コミュニティとちゃんとつながっていたが、今の連中は雲の上の人になってしまった。
【カンナ】暗号通貨はトランプのせいでクソになった。 ミームコインやWorld Libertyなどトランプファミリーへの利益誘導が露骨すぎる。ステーブルコインへの資本要件設定など規制の枠組み作り自体は引き続き支持するが、その議論がトランプの汚職劇に飲み込まれている。
【カンナ】SNSのアルゴリズムは野放しにしすぎ。 セクション230の免責規定を見直して、暴力煽動コンテンツの増幅には責任を取らせるべき。「電話は中立だがSNSは中立じゃない、意図的にコンテンツを選んで押しつけている」という指摘は至極まとも。
【カンナ+クルーグマン共通の懸念】AIは産業革命と同じ轍を踏むかもしれない。 産業革命後60年間、英国は巨大な富を生んだが労働者の賃金は上がらなかった。AIも資本偏重技術になりうる、とクルーグマンが経済学的に補足。スタンフォードの研究では22〜25歳の若者の失業率が16%増という数字も出ており、エントリーレベルの仕事が真っ先にやられる懸念は現実的。
生成AIが雇用を減らす
【カンナ】AIへの対策として「人間をループに残せ」。 自動運転トラックも当面は運転手を乗せておけ。ロボット導入より人を雇うほうが得になる税制に直せ。若者向けの連邦雇用プログラムを作れ——クルーグマン自身も「思ったより過激な提案だ、大したもんだ」と感心している。
【カンナ】「AI競争でアメリカが中国に負ける」論は使い古された言い訳だ。 「環境基準を設けると競争に負ける」「労働基準を設けると競争に負ける」という話と全く同じ構造。競争力の源泉は計算資源・オープンソース戦略・移民人材の確保であって、労働者を食い潰すことじゃない。
【カンナ】カリフォルニアの住宅問題は単純で「とにかく建てろ」。 連邦政府がゾーニング改革を実施する自治体に補助金を出す仕組みを作れ。供給制限で家主が圧倒的に有利な歪んだ市場では賃料安定化も必要。プライベートエクイティによる一戸建て買い占めへの補助もやめろ。
【クルーグマン】Project 2025の住宅政策は矛盾だらけで笑える。 「規制撤廃・自由市場」と言いながら「地域住民が住宅建設を拒否する権利(NIMBY)」は擁護する。都合のいいところだけ自由市場主義。
【カンナ】富の集中問題は「税収確保」と「民主主義の歪み」の二つに分けて考えるべき。 富裕税やキャピタルゲイン課税強化は社会保障の財源として使える。一方で、億万長者がスーパーPACに何百万ドルも注ぎ込んで政治を買い占めるのは別次元の問題で、より構造的な対処が必要。
【カンナ】カリフォルニアの一時的富裕税は「Medicaidカットへの対抗措置」として支持。 トランプの福祉削減で20万人の医療従事者が職を失い、200万人が保険を失う見込み。この3年で158%増えた億万長者資産に一時税をかけるのは合理的。
【カンナ】エプスタイン問題の核心は「俺たちは別格」病。 「エプスタインの名簿に載ってないやつはダサい」という感覚が生まれていたこと自体が、極端な富が人間を腐らせる典型例。
【カンナ+クルーグマン共通の結論】民主党が単に「トランプじゃない」だけでは不十分。 FDRが数年で中産階級社会を作り直したように、格差の根っこを断ち切る経済的変革をやらないと、トランプを生んだ条件はそのまま残り続ける。
アメリカのスーパーリッチが払う税率は庶民の平均より低い
Jun 08, 2025 Understanding Inequality, Part II - Paul Krugman
第二次大戦後しばらくのあいだ、アメリカの所得格差はそれほどひどくなかった。
でも1980年ごろから、それが一変。いまじゃトップ1%が他の99%を引き離し、さらにその中の0.1%、0.01%、0.001%がそのまた上を行くという、何だこりゃ状態。
経済格差#6015117b774b1700003faf4b
https://gyazo.com/ed90838c63e2be31a2b00006a971c235
China’s Trade Surplus, Part III - Paul Krugman
アメリカでは上位0.00001%が全員が1年間に生み出す所得の10%に相当する資産を持っている
金が上に偏ると政治も腐る。イーロン・マスクが「トランプが2024年に勝ったのはオレのおかげ」って言ってたけど、案外マジかも。大統領就任式に大金ぶちこんだり、トランプ銘柄の暗号通貨買ったりしてご機嫌とってる連中が、いろいろ得してる
トランプ大統領就任式に世界のビリオネア集結-資産総額200兆円超 - Bloomberg
多くの企業にとって重要なのは、米国の規制緩和の可能性や、トランプ氏が公約している投資促進が企業利益を押し上げるとの期待だ。また、トランプ氏が経済政策の手段として掲げる関税に伴う最悪の事態を回避したいと考える企業もある。
Krugman「暗号通貨は非合法な利用がメインなのに政治献金で影響力を拡大している」
人の支配
1980年以降の格差拡大の最大の要因は、労働者の交渉力が奪われたこと。グローバル化とか技術革新とか、もちろん関係ないとは言わない。でも、数字をちゃんと見れば、それが主因って言うには無理がある。結局は「権力」なんだよ。
1980年〜2000年までの話。2000年までに進行した格差の加速が、今のオリガルヒ支配の土台になったってのは見逃せない。
有料部分
1. 格差を語るには「権力」がカギ
2. 労働組合がなぜ重要か
3. 帝王CEOの登場劇
2022年05月17日 「大企業CEOの報酬は高すぎる」が73%、経済格差への不満拡大、米調査会社(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ
2024年6月18日 アメリカのCEO報酬、従業員の200倍に 格差は「騒乱警戒」水準 - 日本経済新聞
Understanding Inequality, Part III: Tariffs
上の資産格差は研究してないからそんなに詳しくない。勉強中。
CUNYの毎年恒例のワークショップで関税が書くかにどう聞くかをしゃべったので、まとめた
ざっくり
関税は、理屈の上では格差を縮めることも拡げることもできる。
でも、今の状況だと、賃金や利益みたいな「市場から得る所得」の分布にはあまり影響ないと思う。
そのかわり、関税ってのは本質的に「逆進的な税金」(つまり貧乏人により重くのしかかる)なんで、結果的には格差を拡げる方向に働く
有料パート
1. 関税と格差──経済モデル的にはどう説明されてるのか?
2. 関税でグローバル化による格差拡大は巻き戻せるの?
3. 関税で「チャイナ・ショック」は逆転できるの?
4. 関税って、結局は「貧乏人ほど負担が重い税」なんだよね…
格差社会の問題を移民のせいにして問題を隠蔽している