肝障害鑑別診断
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(PLB) Percutaneous liver biopsy
各組織パターンの特徴
急性肝炎と慢性肝炎
* 病理と臨床 2017Vol.35No.3 P.214- 病理学的鑑別 線維化があれば慢性 (線維化があれば炎症性細胞浸潤が無くても炎症である byカンザス大学Dr.Galambos)
線維化はVBに染まれば時間経過を意味する (比較的新しい線維化は染まらない!!!)
小葉中心体の変化が主なら急性 !中心静脈周囲にと銀陽性線維が枠構造を形成すれば虚脱collapseとしてよい (AIH)
急性肝炎型:肝細胞の巣状壊死や区域壊死がみられます。門脈域にも炎症細胞浸潤がみられますが、炎症の主座は小葉内であり、急性肝炎パターンです。
ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害、自己免疫性肝炎(AIH)が鑑別にあがります。
慢性肝炎型:門脈域を主体とした炎症細胞浸潤がみられ、種々の程度の門脈域周囲の線維化を伴う。実質炎も伴いますが、炎症の主座は門脈域にあり、慢性肝炎パターンです。
ウイルス性肝炎、AIH、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、サルコイドーシスが鑑別にあがります。
急性胆汁うっ滞型:実質内に多数の胆汁栓がみられます。門脈域の炎症や線維性拡大は目立ちません。急性胆汁うっ滞のパターンです。
薬剤性肝障害、閉塞性胆管障害(急性期)、腫瘍随伴症候群、移植片対宿主病(GVHD)、敗血症が鑑別にあがります。
慢性胆汁うっ滞型:門脈域とその周囲の肝細胞に変化が見られる。門脈域の線維性拡大、細胆管増生、biliary type interface activity、門脈域周囲の肝細胞の風船様腫大、銅結合蛋白の沈着(オルセイン染色)が認められます。慢性胆汁うっ滞型のパターンです。
原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、閉塞性胆管障害(慢性期)、サルコイドーシスが鑑別に上がります。
脂肪性肝障害型:小葉中心部に、肝細胞周囲を取り巻く線維化がみられ、特徴的な線維化と考えます。風船様に腫大した肝細胞を小葉中心部に散見します。以上より脂肪性肝障害パターンです。
単純性脂肪肝、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬剤性肝障害、ウィルソン病が鑑別に上がります。
その他:複数の組織パターンが混在してみられ、特定が困難です。~合致しません。
サルコイドーシス、薬剤性肝障害、結節性再生性過形成(NRH)、バッド/キアリー症候群、PBC/AIHオーバーラップ、アミロイドーシスが鑑別にあがります。
脂肪肝 Fatty liver NAFLD (non-alcoholic fatty liver disease) Stauffer症候群
* 日消誌 2015;112:1689-1695 肝胆道系障害と発熱で入院したStauffer症候群 ○ Stauffer’s syndrome
○ Nephrogenic hepatic dysfunction syndrome
! 腎細胞癌の傍腫瘍症候群により発熱,肝機能障害(胆道系優位とされる)を呈したものをいう
→ 黄疸無し,肝転移無しで腎細胞癌を証明できれば確診と成る。
特徴的な肝生検組織像は無い(組織学的に正常???)。
Kupffer細胞の過形成及び腫大,類洞の拡大,好酸球性壊死,単球浸潤などを認めるという報告や肉芽腫を認める報告あり。
輸血感染HCV
* 肝臓 57(S1)2016 A264 O-213 輸血によるHCV感染と院内HCV感染 → 日赤の2012-2014の3年間で疑い報告が99件, 2004年から5例のみが確定している。
輸血による感染はほぼ否定でき,輸血によらない感染がおきている!?
輸血感染HEV
* 日内会誌 105:2215-2220,2016 輸血によるE型急性肝炎の1例 → 日赤に報告が2002-2014年で16例
→ 北海道ではNATでHEVはスクリーニングされている (献血者が潜伏期でなければ可能性は否定)
→ 薬物性肝障害の1割くらいはHEV陽性の可能性有り
* 肝臓 51巻8号 425-430 (2010) ライム病による急性肝炎の1例 ! マダニ刺咬痕で疑う ボレリア抗体検査、免疫ブロット法が必要
* 肝臓 57巻9号 475-480 (2016) MYH9遺伝子異常に伴う肝障害の1例 ! May-Hegglin異常(先天性巨大血小板症)etc.
! 原因不明の肝障害で疑うこと
* 肝臓 57巻9号 481-486 (2016) 皮疹で診断し得た早期梅毒性肝炎の1例 ! 原因不明の肝障害で疑うこと →皮疹及び肝の生検画像あり。
肝機能代償不全 → bacterial translocation → 蜂窩識炎性胃腸炎 → 死亡
□ 消化管に発生する蜂窩織炎は稀で肝疾患が誘因と成る
肝硬変 → 門脈圧亢進 → 腸管浮腫 → 局所免疫低下 → bacterial translocation
→ 肝網内系機能低下 → bacterial translocation
外傷,熱傷,急性膵炎,炎症性腸疾患 → bacterial translocation
□ bacterial translocationは腸管内の常在菌の腸管外移行現象+反応性高サイトカイン血症
! 500mg/dayを超えるたんぱく尿や尿潜血,腎の画像的異常所見はあってはならない
! 原因は肝性IgA腎症が多い。 * 肝臓 57巻3号 117-124 (2016) アルコール性肝硬変の一例
門脈圧亢進,低アルブミン血症,出血,利尿 → 有効循環血液量減少
→ 腎皮質の血管機能的攣縮 → 腎内血流分布異常 → 腎機能低下
細菌感染,消化管出血,腹水排液,手術 → 肝腎症候群1型 → 多臓器不全
□ 2週間以内にCreが2倍以上となって2.5mg/dlを超える場合を1型 → 予後超不良
Cf,肝腎症候群2型
* 日消誌 2016;113:263-272 化膿性肝膿瘍の1例 ! PPI内服の低酸状態+糖尿病,高齢,消化器癌により口腔内常在菌が上部消化管から侵入する可能性がある。
非感染者:すべて陰性
予防接種失敗
予防接種成功
急性肝炎
慢性肝炎
HBV既往感染(臨床的治癒状態):HBs抗原陰性 hBc抗体ないしHBs抗体陽性
De novo B型肝炎:HBV既往感染で免疫抑制によりHBVの再活性化重症肝炎状態。
DDW-J2004 薬物性肝障害ワークショップの診断基準
→ 診断基準に病理組織所見の項目は存在しない (参考程度)
→ AIHに類似した病理組織像で、薬物性肝障害との鑑別に必要