優越的地位濫用(基本解説セミナー資料)
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日本の状況
「優越的地位」であり「支配的地位」は必要ないとされる
(EUなどでは相手方保護が正面から言われるが)
優越的地位濫用行為は
(a)「当該取引の相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに、」
(b)「当該取引の相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で、」
(c)「行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあるものである。」
「外国には説明できないもの」という内向きの思考回路から、現在の状況へ
EUの地位が向上し適用・議論が活発化する前に「通説」が形成・確立
US等の企業への適用に消極的(少なくとも過去は)
非係争条項に関する諸事例
欧州での活発化、世界的課題化、米国さえ導入を検討、という状況のなかでどうするか
課徴金の関係では上記の特殊な位置付け論が一役買っている
日本の優越的地位濫用規制の歴史・特徴
昭和28年改正(1953)
導入
昭和31年(1956)
補完法として下請法を制定
平成21年改正(2009)
課徴金導入(20条の6)
違反要件も2条9項5号として整理し法定
平成23年〜平成26年(2011-2014)
5件の課徴金納付命令
全て、平成25年改正による審判制度廃止(平成27年4月施行)前
平成30年(2018)12月30日
平成31年/令和元年(2019)
2011-2014の命令に係る審決
ドイツ競争当局がFacebookに命令
令和2年(2020)
種々の実態調査報告書
飲食店ポータルサイト
コンビニ本部加盟店取引
など
確約認定
2011-2014の命令に係る東京高裁判決
令和3年(2021)
業界啓蒙型ガイドライン
令和4年(2022)
価格転嫁、社名公表など → 現在まで
令和5年(2023)
令和6年(2024)
まとめると次のような流れ
中小企業保護の色彩(政治からの期待が強い)
厳罰主義で課徴金導入
課徴金制度(非裁量性)が機能せず
確約制度の導入
世界的流行への対応
「広げたい」と「狭めたい」
まとめのまとめ
命令の可能性
優越的地位濫用(2条9項5号)の違反要件
議論の前提
日本の課徴金制度(20条の6)は、甲の特定の乙に対する行為が違反である場合に、甲の当該特定の乙との取引額(売上額/購入額)の1%を課徴金とする。乙が複数いる場合、これらを合算する。
→ 乙が127社いれば、「甲と乙1」「甲と乙2」・・・「甲と乙127」というように各127回の違反要件認定作業をする。
地位
乙が甲と取引する必要がある(不利益な扱いを受け入れざるを得ない立場)
取引の一方の当事者(甲)が他方の当事者(乙)に対し、取引上の地位が優越しているというためには、市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位である必要はなく、取引の相手方との関係で相対的に優越した地位であれば足りると解される。甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ないような場合である。
公取委界隈は、「優越的地位」(相対的優越)で足り「支配的地位」(絶対的優越)は必要ない、と強調するが、程度の問題はともかく質的には同じではないか
つまり、
「他にない」━━━「切れない」
左に行くほど:「絶対的優越」「支配的地位」
右に行くほど:「相対的優越」「優越的地位」
課徴金事例における公取委の立場を言語化すれば
個別の乙における甲のシェアが一定以上であれば(かなり低い数字)甲は原則として優越的地位にある
個別の乙にとっての甲のシェア順位が一定以上であれば(かなり低い順位)甲は原則として優越的地位にある
濫用行為(不利益行為)
2つの視角
あらかじめ計算できない不利益
過大な不利益
考慮要素
その行為によって乙が得る「直接の利益等」を超える
乙が売手で甲が買手の場合、乙にとって原価割れとなるような価格での買いたたき
乙にとっての原価の著しい上昇を公表資料等で把握できる場合に対価(甲の乙への支払額)を据え置くこと
交渉手続を尽くしていない
■■(セミナー資料ここまで)■■