優越的地位濫用(基本解説セミナー資料)
2026-07
https://stjp.sakura.ne.jp/_presen/keynote/IllegalConduct_withGuidelines.jpeg
以下の話は、条文の適用のように論理的・機械的な因果があるような話ではなく、歴史を語るに似た大まかな流れの話。
優越的地位濫用規制とは
競争停止でもなく、他者排除でもなく、取引相手方から搾取
日本では、搾取行為を「優越的地位濫用行為」と呼ぶ
優越的地位濫用の違反要件(概要)
2条9項5号が基本
条文
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ〜ハ (略)
基本的な3要件
優越的地位
利用して
濫用行為
https://gyazo.com/a1e8e6566474f545b2de70d88bb0c080
国内文脈における一貫した人気(1953-)
中小企業保護
下請法(下請代金支払遅延等防止法)(1956-)
国際文脈における日陰者状態(-2010s中ごろまで)
米国antitrustの教科書には載っていない。
antitrust=反トラスト法
競争との関係をこじつける説明が「通説」
長い間、国内事案に限定
競争法における欧州の台頭(おおむね2000-)
ブリュッセル効果
巨大プラットフォームへの対抗姿勢
Margrethe Vestager(2014-)
EUや英国の競争法には、搾取規制がある。
独占禁止法における厳罰化の動き(2009)
課徴金の導入(独占禁止法20条の6)
非裁量性
第二十条の六 事業者が、第十九条の規定に違反する行為(第二条第九項第五号に該当するものであつて、継続してするものに限る。)をしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、違反行為期間における、当該違反行為の相手方との間における……[売上額・購入額]に百分の一を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。……
平成期課徴金5件
全て争われた。
個々の「相手方」について個々に「優越的地位」などの認定をすることが定着した。
2014年を最後に排除措置命令・課徴金納付命令がされなくなった。
政策的潮流(2010s後半以後特に)
巨大プラットフォーム対策
中小企業保護(特に、いわゆる「価格転嫁」)
個人(個人事業者)の保護
「エンフォースメント」から「アドボカシー」へ(2010s後半以後特に)
立証し命令することが難化
平成期課徴金5件の長期化
確約制度の施行(2018-)
欧州の影響→自信を深める(日陰者からの脱却)
国内企業のコンプライアンス意識
実際の事象(例)
実態調査→実態調査報告書→ガイドライン等
コンビニ、芸能人、など多数
転嫁施策
確約認定/警告/注意/その他
民事裁判に対する触発(例:食べログ事件)
2条9項5号による規制を補完する諸制度の強化(後述)
課徴金のその後の動き(2025)
平成期課徴金5件のうち最後に残った件の東京高裁判決(エディオン) 2条9項5号による規制を補完する諸制度の強化
フリーランス法(2023)
取適法(下請法改正)(2025)
「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」
独占禁止法2条9項6号ホに基づく指定の拡充(2026)
白石個人としては、優越的地位濫用に関する指定を2条9項6号ホに基づいてすると法律の委任の範囲をこえた違法な指定となると考えているが、ここではそれは省略。
詳しくは、NBL2026年7月1日号など(2011年刊行の拙稿以来の指摘)
支払指定の新設
物流指定の改正
https://gyazo.com/11f79527db56a9c9a2000d0585420b5d
物流指定の基本的論点
直接の取引関係がない「着荷主→運送業者」の行為
独占禁止法2条9項6号
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
https://gyazo.com/9391273c2baca6470b5262dd6d355edc
優越的地位
濫用行為
「行為」に当たるか否かは、2条9項5号ハ「その他」以下が広範であり何でも当たる。
「濫用」(「不利益」)については、次の2つの代表的な視角などの総合考慮。
あらかじめ計算できない不利益
合理的範囲を超える不利益
ご質問
次の両者の違いは、結局のところ、何か。
新聞の押し紙に関する民事判決が最近あちこちで多数出ているようであるが、おおむね、新聞社が勝訴しているようである。
前提解説
新聞の押し紙の民事裁判は、民法709条(等)による請求において、独禁法を説明道具としようとする中で、2条9項6号ホに基づく「新聞業特殊指定3項」が出てきているもの。
白石としては、新聞業特殊指定3項は2条9項6号の委任の範囲を超えており違法である(本来は2条9項5号の問題)と考えているが、もともと民法709条(等)の説明道具として出てきているので、新聞業特殊指定3項というか2条9項5号というかで大差は生じないから、黙って新聞業特殊指定3項の土俵に乗って種々発言している。
押し紙の民事判決は、多数あるので、事案や裁判所の判断も様々であり一概に言えないが、おおむね、次のようであると考えられる。
販売店(ジー)も希望等してその部数になっていると認定された
販売店(ジー)が併売店(複数の全国紙(例えば朝日と日経)を売っている)であり優越的地位(「取引上の地位)がないと認定された
ハーレーダビッドソンと押し紙民事判決の違いは、結局、上記ではないか。
なお、
押し紙民事裁判では、次のような傾向がある。
平成11年の新聞業特殊指定の改正で「正当かつ合理的な理由がないのに」が加えられたことが看過された議論がされることがある。
平成11年改正前も、指定に文言がなくても、法律の親条文の解釈で、同等の正当化理由が考慮されたはずであるが、それが看過された議論がされることがある。
昭和30年代の解説書等に表れた事実認定が現在も意味を持つかのように議論されることがある。